川崎 景介 川崎 景介 36ヶ月前

マダガスカルにいってみた


 
どうして人は花が好きなのか、なぜ人は花に意味を持たせるのか。
考花学のすすめ
 

vol.01 マダガスカル 花多き楽園の花無き文化

 
 「マダガスカルには花がある。けれど花がない」。
インド洋南西に浮かぶ赤い大地の島で私はそうつぶやいていました。
 
地質学的に見て独自の進化を遂げてきたマダガスカルの生物にはキツネザルやカメ、
カメレオンあるいはカエルと固有のものが多く、
植物もアカネ科でゾウの足のようなバオバブ、
岩のようなボディから美しい花を咲かせるキョウチクトウ科のパキポディウム、
それこそ固有のディディエレア科でサボテンのような容姿のディディエレアなどなど、
この島ならではのスター選手が目白押し。
 
また私たちも見慣れた愛らしい花を咲かせるキョウチクトウ科のニチニチソウもマダガスカルが故郷です。
 しかし肝心の花を愛でる文化という点では固有のものが無いのです。
 
首都アンタナナリヴには一応、花市場がありブーケやアレンジメントが並びますが、
それはフランスの文化に触発されたスタイルとのこと。
 
「おーい、どこかに花(文化)はないか」
 
などと考えながらバスの車窓から目に飛び込んできたのは紅色の花を咲かせるウメの木。
さすがにあれは近所の人も愛でているだろうと思い、
案内の人に「いいですね、ちょっとしたお花見ですよね」と語りかけてみると、
 
「マダガスカルの人間はお花見をしません。
花の後に生る実が目当てなのです」という答え。
 
 私はイギリスの人類学者ジャック・グッディの唱えた
「アフリカ文化圏においては、花を愛でる、あるいは儀礼に用いるということは希少である」
という説を思い出していました。
 
マダガスカルはアフリカ文化圏というよりも、
アジアの影響を受けている島ですが、
文化の形成に大きく影響する社会構造がアフリカのものと似ていたのは事実。
 
花を儀礼に用い、それを愛でる文化は花を育てる農耕民と、
その花を消費する支配層が存在してこそ初めて成立したというのがグッディの仮説。
アフリカの諸部族と同じようにマダガスカルの人々は極端に階層化した社会を持たず、
平等で調和のとれた部族性社会を大事にしてきたゆえに
花を積極的に暮らしにとり入れてこなかったのでしょう。
 
 とはいうものの峠の祠に祭られていたマリア像には
花瓶に挿された花が手向けられていました。
もしかするとマダガスカルの人々にとって花は敢えて愛でなくてもいい、
ごく当たり前で、それでも愛おしい世界の一部だったのかもしれません。
 
text 月刊フローリスト イラストレーション/高橋ユミ 写真/川崎景介
 
 
語る人 植物生活プロ
名前:川崎景介 Keisuke Kawasaki
プロフィール:花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。
スクール:マミフラワーデザインスクール
http://www.mamifds.co.jp

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川崎 景介
川崎 景介

花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。

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