川崎 景介 川崎 景介 48ヶ月前

松竹梅の由来をご存知ですか?


どうして人は花が好きなのか、なぜ人は花に意味を持たせるのか。
考花学のすすめ
 

vol.02 松竹梅文化考

 
お正月のデコレーションの中に見られるマツ、タケ、ウメ。
おめでたいものの象徴としてこの組み合わせが親しまれています。
その由来をひもといてみましょう。
 
中国では三という数字はめでたい数とされ、
縁起を担いで三つの植物の組み合わせが好まれました。
特に寒さの厳しい冬でも美しい葉や花で豊かな生命力を思わせてくれる
三つの植物のセットが歳寒三友と呼ばれて尊ばれたのです。
中国では宋代あたりから歳寒三友図なる画題が表れ、
冬を代表する植物であるマツ、タケ、ウメ、スイセンのうち
いずれかの三つがセットで描かれたのです。
中でもウメは必ずといっていいほど描かれ、
中国における歳寒三友の要となっています。

この習慣が日本にそのままやってきてすぐに定着したのでは
と思われがちですが、
どうやら話はそれほどシンプルではなさそうです。
 
マツやタケはもともと日本に自生していて
古来その生命力のたくましさが崇敬の念を集めてきました。
マツとタケは縁起物としてセットで扱われることが多く、
平安末期にはマツとタケを組み合わせた門松が
新年の門前を飾っていたと考えられています。
マツはその常緑性が長寿を象徴し、
タケはその生長力の旺盛さが繁栄を意味したのです。
 
その後、マツは能の舞台に欠かせない高尚な木となり、
タケはかぐや姫をその茎に宿したロマンチックな存在にもなりました。

問題は中国では欠かすことの出来なかったウメです。
ウメは中国原産の樹木で
8世紀初頭の『古事記』には載っていないのですが、
8世紀後半の『万葉集』には登場することから、
奈良時代後期に日本にやってきた樹木だったことがわかります。
 
当初貴重だった渡来植物のウメは
貴族にとって憧れの大陸文化の象徴でしたが、
自生の種であるマツやタケとは
すぐには結び付かなかったのでしょう。
 
それでも春一番に美しく香しい花を咲かせることから
冬の風物詩として定着していったのです。

日本においてマツとタケとウメの
三つの植物が共に親しまれ始めたのは意外と遅く、
江戸時代初期に僧侶の如月が記した
『中華若木詩抄』という本に
「竹は松竹梅の三友にて、梅松と盟を結ぶ者也」
とあります。
 
本題に中華とあるくらいですから、
中国の歳寒三友を日本風に
解釈しなおしたものだったのでしょう。
 
以後、長寿のマツと繁栄のタケという
渋い存在の植物に美しさを添える
大陸文化の風雅を象徴するウメが加わり、
ここに日本の松竹梅が完成します。
 
長寿、繁栄、風雅と三拍子そろった松竹梅はやはり最強の縁起物です。
 
text 月刊フローリスト イラストレーション/高橋ユミ
 
語る人 植物生活プロ
名前:川崎景介 Keisuke Kawasaki
プロフィール:花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。
スクール:マミフラワーデザインスクール
http://www.mamifds.co.jp

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川崎 景介
川崎 景介

花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。

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