川崎 景介 川崎 景介 63ヶ月前

アメリカ 自由の国の幾何学の花

自由な花のありかた

 20世紀はアメリカ文化が世界に広まった時代であったと言っても過言ではありません。
コーラ、ハンバーガー、ハリウッド映画など、
その例を挙げればきりがないほどです。
そして花の分野も決して例外ではありません。
 
 17世紀以来、ヨーロッパからの移民が
アメリカの文化を本格的に牽引することになります。
海を越えて新たなる地にやって来た当初の人々の植物の利用法は
主に食用や薬用などに限られていました。
畑を切り開き、都市を築いていくうち、
花は次第に暮らしを彩るものとして重要視されていきます。
特にイギリス直轄植民地ヴァージニアには
本国からたくさんの生活用品がもたらされ、
その中には花器やそれを置く家具などもありました。
 
 かつてヨーロッパでは宗教的象徴として、
また王侯貴族の贅沢品としての花の利用が多かったなか、
アメリカならではの独自の花のありかたが定着していきます。
それは開拓に明け暮れる厳しい日々の暮らしに潤いをもたらす花、
いわば娯楽の花です。
アメリカの先人らはドライフラワーを器に生けて
常に植物を身近に感じたり、
菜園で育てた季節の花を記念日などには室内に飾ったりしました。
また特別なときには花を身に着けて装い、
贈りものとしても重宝したのです。
 
 こうした自由な花のありかたが
19~20世紀になると花店に受け継がれます。
1940年代にはアメリカの花業界は一大市場として成長を遂げ、
業界関係者らはよりよい商品を生み出すべく
フラワーアレンジメントの理論の構築を試みます。
1940年にJ・グレゴリー・コンウェイは
『Flowers : Their Arrangement』を記し、
アレンジメントをフォーマルな形のものと
カジュアルな形のものに分類することを提唱。
 テキサスのフローリスト、バディ・ベンツは
コンウェイの理論を発展させ、
1950年代にジオメトリックフォーム理論を提案します。
これは幾何学的に定められた形に花を生けることを
フラワーアレンジメントの基礎に位置づけたものでした。
しかしベンツはただ型に沿ってデザインするだけではなく、
こうした基礎を応用して
自由に作品を作りあげることの大切さをも説いています。
 
この考え方がこんにちにおける
日本のフラワーデザインにも大きな影響を与えているのです。
 
text / 月刊フローリスト  イラスト/高橋ユミ
 
語る人
名前:川崎景介 Keisuke Kawasaki 
プロフィール:花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。
http://www.mamifds.co.jp

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川崎 景介
川崎 景介

花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。

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