江澤 佑己子 江澤 佑己子 2017/10/13

"一隅を照らす"

2013年、私たちはカナダ西部に位置するウィスラーという町に唯一のお花屋さん、SENKA FLORISTで仕事をさせていただきました。
店売りから配達、ホテルへの生け込み、ウェディングまで、言葉も文化も違う異国の地で経験する花の仕事は、驚きと戸惑いの連続でしたが、すべてが新鮮で、とても楽しいものでした。

豊かな自然に囲まれて暮らすカナダ人は、"ナチュラルでカジュアルな人たち"という印象で、町は笑顔とあいさつに溢れ、人は皆親切で、大らかで、ゆったりと流れる時間の中を他に流されることなく自然体で生きるという姿が何よりも美しく私の目に映りました。

お花屋さんで働き始めて間もなく、若い女性がフラッとお店にやって来て、明日に迫ったウェデイング用のブーケを注文するという場面に遭遇しました。
これは稀なケースとはいえ、ウェディング装花にたくさんの時間とお金と神経を費やす環境で働いてきた私にとっては、まさにカルチャーショックな出来事でした。

カナダのお花屋さんで働いてまず感じたことは、花が生活に密着していることです。
花は特別なものではなく、日常生活に欠かせないものという感じで、マーケットで夕飯の買い物をするような感覚でお花を買って行くのがとても新鮮で、素敵でした。

もうひとつ、驚かされたことは、男性から女性への花贈りがとにかく盛んなことです。
カナダのお花屋さんの一番の繁忙期はバレンタインデーで、男性から女性へ"dozen rose"といって、1ダース(12本)の赤バラを贈る習慣があります。
それ以外にも、記念日やケンカのお詫びなどなど、ことあるごとに花を贈るのです。
また、その演出が粋で、例えば、彼女の誕生日に彼女の職場に花を配達するという依頼を受けることが度々ありました。
私も何度かその重大な任務を引き受け、ある時は銀行に、ある時はジュエリーショップに花束を届けることになったのですが、
更に素晴らしいのは、それを受け取る彼女のリアクション、そして、彼女を見守る同僚たちのリアクションでした。
"Oh my god!" ,
"Happy Birthday!" ,
"Lucky girl!"があちこちから飛び交い、
それは、まるで自分が幸福の使者にでもなったかのような感覚におちいるほど感動的なものでした。

カナダでの経験は、私たちに花の仕事に携わる喜びと感動を与えてくれました。
言葉が違っても花を見て美しいと思う気持ちは皆同じで、何かひとつ共感できるものがあれば、それは言葉や文化を超えた"繋がり"を持たせてくれるのだということを実感する素晴らしい経験でした。

いつの日か私の父に花を贈ったとき、父からのメールに"一隅を照らす"という言葉がありました。
意味がわからず、調べてみると、
"自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代え難い貴い宝である"
とありました。

NIKO FLOWERS+を和久井と共に立ち上げて、3年。
今もカナダでの生活を振り返り、あの時の喜びや感動を忘れていないか自分たちに問いながら、
"一隅を照らす"
いつの日かそういう花屋になれるように、
一歩一歩、前進したいと思うのです。
 
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この記事のライター

江澤 佑己子
江澤 佑己子

ハンドバックのメーカーを営んでいた祖父母の影響で、幼い頃よりものづくりに関心があり、医療事務の道に進んだ後にフローリストへ転職。都内花店で勤務後、ホテルでのブライダルの仕事に携わり、その後海外カナダの生花店にて店頭販売やウエディングを経験。2014年東京都・大田区山王にNIKO FLOWERS+(ニコ・フラワーズ)を立ち上げ独立した。リラックス方法は、音楽を聴きながらあてもなくドライブすること、料理。

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