江澤 佑己子 江澤 佑己子 38ヶ月前

"オンリーワン”

時々訪れるお気に入りのとんかつ屋がある。
目黒のとんき。
ご存知の方も多いだろうと思う。
老舗のとんかつ屋である。
その味もさることながら、素晴らしいのは、職人たちの仕事ぶりである。
お店に入るとだだっ広い店内にコの字型のカウンターがあり、その中で職人たちが完全に分業された各々の業務を黙々とこなしている。
注文をとる人、衣をつけ、鍋に投入する人、揚げる人、皿にキャベツとトマトとパセリを盛り付ける人、揚がったとんかつを切る人、ご飯とお味噌汁と漬物を用意する人、おかわりのキャベツをよそう人...とひとつの過不足も無駄もない完璧な仕事ぶりで、客の前にとんかつを運んでいる。
目の前に運ばれたとんかつは、彼らのチームプレーの賜物なのである。
私はすっかりその仕事ぶりに魅了され、とんかつを食べ終えた頃には、
まるでひとつの舞台を見終えたかのような清々しさと満足感を覚える。
そして、仕事のあり方を深く考えさせられる。
私達の仕事はいつもチームプレーで成り立っている。
種や苗を販売する人、それを育て出荷する人、市場に運ぶ人、市場で売る人、たくさんの人の手を渡って花屋に並び、
お客様のもとへと運ばれる。


先日、あるお客様がたいそう立派な壺を持って来て、これに花を生けて欲しいという。
数日後、お届けすると、目を細めてそれを眺め、大変喜んでいただいた様子で、ホッと胸をなでおろしていると、
“これは、オンリーワンだよな?”と問いかけられる。
“はい”と答えると。
“それがいいんだ。ナンバーワンになれたら、そりゃいいけれど、オンリーワンを目指すんだ。”と。
流行りの歌のセリフで何度も耳にした言葉が妙に胸に突き刺さる。

世の中にとんかつは溢れている。
けれど、とんきにしかない味があり、サービスがある。
花も同じ。
目に見えないものに想いを馳せながら、仕事と、花と向き合えるそんな花屋になれたらいい。
そういう仕事で人に感動を与えられる、オンリーワンの花屋になりたいと思うのです。

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この記事のライター

江澤 佑己子
江澤 佑己子

ハンドバックのメーカーを営んでいた祖父母の影響で、幼い頃よりものづくりに関心があり、医療事務の道に進んだ後にフローリストへ転職。都内花店で勤務後、ホテルでのブライダルの仕事に携わり、その後海外カナダの生花店にて店頭販売やウエディングを経験。2014年東京都・大田区山王にNIKO FLOWERS+(ニコ・フラワーズ)を立ち上げ独立した。リラックス方法は、音楽を聴きながらあてもなくドライブすること、料理。

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