川崎 景介 川崎 景介 42ヶ月前

清めの時とアドベントリース

クリスマスへのカウントダウンを楽しむ


早いもので、もうクリスマスも間近です。
特に年末にかけての時間の流れは速くなるいっぽう。
それも楽しいイベントが目白押しだからでしょうか。

楽しいクリスマスに向けての準備の時がアドベント。
日本ではあまり意識はされませんが、
キリスト教徒の多いヨーロッパでは大切な期間とされています。
今回はそんなアドベントならではのアドベントリースの話をいたしましょう。

日本では待降節と呼ばれるアドベント。
文字通り救世主の降臨を待つ節目というわけです。
5世紀あたりからキリストの誕生日であるクリスマスを迎えるに際して罪を悔い、
身を清めるための期間が定められました。
アドベントはクリスマス直前の4回の日曜日を含む4週間とされていて、
この期間中人々は暴飲暴食を控え、
女性は編み物などの手作業に専念し、
家族で讃美歌を歌ったり、
キリストにまつわる聖なる物語を読みあったりしました。

このアドベントを印象付けたのがアドベントリース。
4本のキャンドルを挿した花輪を平たく卓上に置いたものです。
4つのキャンドルはアドベント期間中の4回の日曜日を表しています。
第1日曜日には1本目のキャンドルに火を灯し、
第2日曜日には2本目のキャンドルに火を灯しと、
リースはクリスマスに向けて徐々に光を増していきます。
日曜日の朝食時にキャンドルを灯し、
一家でクリスマスへのカウントダウンを楽しむのです。
特に4本目のキャンドルに火が灯るとクリスマスはもう目と鼻の先。
いやが上にも盛り上がったことでしょう。

このアドベントリースの登場は意外と最近のこと。
リース自体には古くから大切な意味合いが付され、
クリスマスをはじめさまざまな祭に欠かせないものでした。
古くからヨーロッパの人々は枝や茎を絡めて輪状にし、
そこに季節の花を入れたリース作りに勤しんできました。
リースはその形状から命の循環を意味したり、
永遠を意味したりするものでした。

リースがアドベントと結びついたのは
19世紀半ばのドイツの港町ハンブルグでした。
ヴィヒェルン牧師という聖職者が自ら設立した少年院にて
アドベント時期にクリスマスへのカウントダウンの意味で
少年らと共に教会内のキャンドルに段階的に火を灯し始めたことが広まり、
クリスマスのシンボル的存在であるリースとキャンドルとが結びついたのです。

人々の幸せへの願いが込められたリースに、
過ちを犯してしまった少年らに対する
ヴィヒェルン牧師の愛情がブレンドされ生まれた素敵な花文化、
それがアドベントリースなのです。
 
イラスト/高橋ユミ
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この記事のライター

川崎 景介
川崎 景介

花文化研究者。マミフラワーデザインスクール校長。米国アイオワ州グレイスランド大学にて史学を専攻し卒業。フラワーデザイナーの養成機関等で教鞭をとり、スクールでは考花学のクラスを持つ。執筆活動や全国での講演活動に従事するかたわら、日本のみならず世界各国の花文化を独自の視点で研究し、フローラルアートの啓蒙に努めている。日本民族藝術学会員。

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