シクラメンの原種、ペルシカムってどんな花?
原種だから、地味?
先月、「もっと知りたい! ガーデンシクラメン」という記事のなかでガーデンシクラメン誕生のいきさつについて書きました。
そこに、今、私たちがお花屋さんの店先で見かけるシクラメンは、
ガーデンシクラメンに限らず、
ほぼ全てが原種のシクラメン・ペルシカム(以降、ペルシカム)から
改良された園芸品種だと書いたところ、
「へー。原種ってどんな花なんだろう。
お花屋さんにあるシクラメンと全然違うの?
原種っていうからには、地味?」などなど
コメントをいただきました。
そこで今回は、原種、ペルシカムについて、
少しだけ紹介したいと思います。
シクラメン・ペルシカム
Cyclamen persicum
原産地 ギリシャ、トルコ、イスラエルなどの地中海沿岸地域
開花期 3月下旬〜5月上旬
香り 中香
△ シクラメン・ペルシカム。八重咲き品種「ヨコヤマ・ダブル」。 写真提供/横山園芸
原種のなかで、園芸化がブレイクしたペルシカム
そもそもシクラメンという植物は、このペルシカムを含んだ23の種があります。
そのなかでなぜペルシカムの園芸化が進んだかというと、
この種はもともと、変異が出やすい特徴があったから。
そこに目をつけた人が、
いち早く選抜を試みたからではないでしょうか。
さらにペルシカムは、原種のなかでは最も生育が早く、
タネまきから1年半で開花に至ります。
つまり、結果が早く見られるのも、
園芸化には都合がよかったのです。
さて、原種とはいえ、ペルシカムの大きさは、
市販されているガーデンシクラメンと同程度。
原種シクラメンのなかでは大きめのため、
自生地で目立っていたのも、園芸化が進んだ理由のひとつかもしれません。
それでも鉢花のシクラメンと比較してみれば
花だけではなく、園芸化によって
ずいぶんと株自体も立派になったものだなぁと驚くばかりです。
そして、花色は、薄いピンク色の口元に
濃ピンクが入るパターンが典型的。
そのほかにも、白や濃ピンクなどのバリエーションがあります。
△ シクラメン・ペルシカム。濃ピンクの個体。 写真提供/横山園芸
園芸種のたどった道、原種が目指す道
ところで、現在、鉢花で見られるシクラメンの花は、大きくたっぷりした丸弁が多く見られます。
元となったペルシカムは、
尖って少しひねりが入った花弁ですが、
園芸化の際に花弁の形は、
まず、大きく丸くを目指して改良されていきました。
それにともなって、ゆるやかなひねりも取り除かれ、
原種とは大きく違った花形へと発展した経緯があります。
対するガーデンシクラメンには、
この細い花弁とひねりが残されているものがあり、
私たちはガーデンシクラメンのそんな部分に、
野趣と可憐さを感じて、惹かれていたのかもしれません。
また、近年のガーデンシクラメンには、
あえて細弁とひねり、そしてまばらに立ち上がる花茎が魅力の
「オールドファッション」と名打った品種も見かけるようになりました。
△ これはガーデンシクラメン。原種を彷彿させる花姿の個体。 写真/ウチダトモコ
一方、原種、ペルシカムでも育種は進んでおり、
多花性、八重咲きなどの品種も登場しています。
△ 横山園芸が作出した、ペルシカムの八重咲き品種「ヨコヤマ・ダブル」白花。
写真提供/横山園芸
鉢花シクラメンとガーデンシクラメンのシーズンは今が真っ盛りですが、
ペルシカムの開花期は、まだまだ先の3月下旬から。
「花をぜひ見てみたい」
「香りを確かめたい」という人は
ぜひ、来春の目標にしてみてくださいね。
ただし、23種ある原種のなかでペルシカムは、
流通量がそれほど多くないそうです。
ペルシカムの好みの花色や花形の株に出会うには、
専門店や展示会などをこまめに訪ねてみるとよいでしょう。
*本稿のペルシカムの写真は、原種シクラメンの生産育種で知られる
横山園芸の横山直樹氏よりお借りしました。
「直樹さん、いつか原種シクラメンの取材もさせてくださいね!」
text ウチダトモコ 写真 横山直樹(横山園芸)
- すてき 0
- クリップ
この記事のライター
ウチダ トモコ
園芸ライター、グリーンアドバイザー、江戸東京野菜コンシェルジュ。
園芸雑誌、ライフスタイル誌などの編集、ライターを経て、現在は主にウェブで提案および取材執筆活動中。