梅木 あゆみ 梅木 あゆみ 63ヶ月前

北国のコテージガーデンから[6]

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1月|1月はタネまきの月


こんにちは。梅木あゆみです。

さて、2018年の年頭は
タネまきについてのお話です。
そう、タネまきは私の原点。
発芽を見るとドキドキして初心を思い出します。
初心はやっぱり、大事ですね。
 


■タネマニア■

そもそも私がこの仕事を始めたきっかけのひとつに、
海外のタネのカタログを見て
衝撃を受けた、ということがあるんです。

かれこれ25年くらい前のこと。
当時、専門店以外で手に入るタネは、
一年草花壇苗や一般的な野菜ぐらいしか
なかったように記憶しています。
ましてや宿根草のタネなど
ほとんど流通がなかったのではないでしょか。
そんななか、手にした外国のタネのカタログ。

△ イギリスやアメリカなどの種苗会社のカタログは、私にとって夢の世界でした。


私は繰り返し、繰り返し、
眠りにつく前の読書的にカタログを熟読し、
タネへの憧れを膨らませていったのです。

そして思い切って注文。
最初は30品種ぐらいだったでしょうか。
翌年からは堰を切たように、
かなりの数のタネを購入。
よくわからないけど、
タネが手に入ると、なんだかうれしい私なのです。


やがてその数が200品種を越え、
ついには数えきれないほどになり、
タネの保管庫でもある冷蔵庫は、満杯になったのでした。


△ タネの保管には、書類ケースなどを利用して整理しています。

 

■タネまき■

タネの発芽は、簡単なものと難しいものがあります。
ザックリ分けると
花壇苗や野菜苗などを含む一年草は100%に近い発芽率。
対する宿根草や野草は
発芽率が悪い、あるいはばらつき
があります。

発芽に必要なものは、水、温度、酸素、
そして場合によって光。
休眠状態にあるタネを起こし、目を覚まさせるのが、
水であり温度であり酸素であり、ときに光なのです。
コテージガーデンでは、
まずタネを一年草、野菜、宿根草と大きく三つに分け、
さらに細分化してタネをまいています。

細分化の例としては、
たとえば一年草の場合はこんな感じ。

① 暖地では秋まき一年草。
 寒さには強いけど夏の暑さには弱く、
 北海道では4〜6月までの花。
 これらは幼苗のうちに寒さにあてることが
 花芽形成のうえで大切になります。

② 暖地でいう春まき一年草。
 寒さには弱いけど、北海道では5月中旬から
 10月一杯咲き続けるものが多い。
 一般的な花壇苗が代表です。

③ 背の高い一年草
 そしてこの3つ目のカテゴリーが
 最もコテージガーデンらしい花苗。
 幼苗のうちに定植を済ませておくのが一番なのですが、
 花のついていない状態で売れることは難しく、
 かといって花が咲いてから植えたのでは
 株の命は短くなる。
 いい状態で売るのが至難の業のタイプです。



△ カテゴリ③の代表がこのジニア。ちょうどよい時期に売り出すのがまさに至難の技!



苗屋は売って初めて成り立つもの。
いかに売れる時期に
タイミングよく苗を提供できるか。
自分の好みを、どれだけ多くの人に買ってもらえるか。
それが一番難しくもあり、
面白くもあるのです。





△ それぞれのタネの特性に合わせて、連結トレイや箱にタネまきします。発芽率が低い宿根草や野草のタネは、やや多めにまいて。


△ タネが発芽したら、成長に合わせてポット上げ。外は寒いけれど、ハウスのなかですくすく育ちます。

 

■保険としての自家採種■

新しいタネのカタログがきて、一番ショックなのが
大好きだった品種がカタログ落ちして、
販売中止になってしまうことなんです。

なぜか私のお気に入りが毎年カタログから消えていく。
ということは、私のセレクトは売れないっていうこと?

そんなはずはないっ!
こんなにいい植物なのに、とカタログ落ちのたびにガッカリ。
それならば絶対無くしたくないタネは
保険として自家採種しなければ。
このように最初は保険で採っていたタネでしたが、
自家採種が面白く、
今では宿根草や野草もハイブリット以外は
採種を心がけるようになったのです。

一例をあげれば、
春のラインナップに欠かせないタマクルマバソウ、
オンファロデス・リニフォリア、ノラナ(下の写真)
リュウキュウスズメウリ。

野菜ではコテージガーデンオリジナルといってもいい
若莢でもお豆でも美味しいスナップインゲン(下の写真)。


△ ノラナ‘シューティングスター’ もほかではあまり苗を作らなくなったもののひとつ。


△ 若莢でも、完熟させて豆としても美味しい、スナップインゲンを収穫中の私。

■冬のおしごと■

自家採種のタネには
「掃除」という仕事があります。
タネまきは1月から順次始まりますが、
その前にタネを莢からはずし、
きれいに分別。
チマチマした仕事ではありますが、
とても大切な過程なのです。
もちろん購入したタネや
在庫のタネも整理整頓。


△ 売っていないタネは、ひたすら自家採種。莢や軸からひと粒ずつ外していきます。


△ 採種したタネは種類ごとにまとめて、日付も記入。


北海道で園芸を生業にしているというと
「冬は何しているのですか?」
よく質問されます。

雪の始末をしたり、
タネを掃除したり、
タネまきの準備をしたり、
そのタネをまいたり。
もちろん今年の販売計画、
そして生産計画を練ったりするのも冬の間。

お正月を過ぎると確実に日が長くなり、
立春のころは日ざしも春。
半年雪に閉ざされるからこそ、
春への気持ちが人一倍強い。

タネまきして苗を育てながら春を待つ。
それもまた、いいものですよ。


△  戸外は雪。ぽかぽかハウスのなかで、ひたすらタネまき作業をしながら春を待つ私たち、そして植物も。

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この記事のライター

梅木 あゆみ
梅木 あゆみ

1995年月形町で生産直販店「コテージガーデン」を主婦から起業。現在は年間を通し2000品種以上の植物苗を生産し、札幌市百合が原公園ガーデンショップの売店も経営する。ノーザンホースパークK’s Garden、滝野公園、層雲峡温泉、個人庭園などの、企画、設計、工事、管理などを行う。「オープンガーデンof北海道」を発行するブレインズ種まく私たちのメンバー。2009年度北海道「輝く女性のチャレンジ賞」2010年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。日本ハンギングバスケット協会公認講師。三男一女の母。

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