江澤 佑己子 江澤 佑己子 35ヶ月前

"音と花"

NIKOに流れるBGM。
これには、まだ浅くて、でもとても深い歴史がある。
四年前、お店をオープンして間もなく、
ひとりのファンキーなおじさんが、ポケットに手を突っ込んで、肩で風を切るようにやって来て、
“花、5本ちょうだい。なんでもいいよ。”
と言う。
少し緊張して、クネクネ曲がったクセの強いアリウムを5本選んで差し出すと、
“面白いね。ありがと。”
と言って、去り際にキャップを取って、モヒカン頭を露わにしながら、”ボク、こういうもん。”と可愛いイラストが描かれたイタリア料理店のショップカードを差し出し、”また来るよ。”と電動自転車にまたがって颯爽と店を去っていった。
それからしばらくして、
また同じように5本の花を求めてやって来て、
今度は去り際に”これ良かったら聴いてみて。”と一枚のCDとオリジナルのジャケットを置いて行った。
早速CDを流してみると、たちまちその世界観に引き込まれる。
初めて聴く音楽ばかりで、世代も意味も英語なのかイタリア語なのかさえも分からないようなものばかりなのだけれど、不思議と自然に、心地良く、耳に心にお店に馴染んでいる。

あれから四年、
彼がアレンジしてくれたCDは100枚以上にもなった。
色々なジャンルの色々なアーティストの音楽が一枚のCDに集められているのだけれど、
その一枚にはいつもテーマがあって、ひとつのストーリーのように構成されている。
毎回CDに添えられるオリジナルのジャケットには、贈られた日の日付が記してあって、時々、さかのぼってCDを聴くとその時の情景や空気感みたいなものが蘇って来て、音楽に気づかされること、教えられることが本当に多くある。
季節を大切にし、お店の雰囲気を大切にし、NIKOを、NIKOに来るお客様を想って、彼がアレンジしてくれたCDには、NIKOの歴史が刻まれている。

かつて、花屋に勤めていたとき、上司に
花束の良し悪しは花選びの時点で8割型決まると教えられた。
あとの2割は技術と気持ちだと。

一曲の音楽も一輪の花も
完成されたもの。
それだけで美しいもの。
それを組み合わせることで生まれる美と世界観。
いつか、こんな風に人に癒しを、感動を与える花束を作れたら、どんなに素晴らしいだろうと、
今日も店に流れる音に心を寄せている。

 
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この記事のライター

江澤 佑己子
江澤 佑己子

ハンドバックのメーカーを営んでいた祖父母の影響で、幼い頃よりものづくりに関心があり、医療事務の道に進んだ後にフローリストへ転職。都内花店で勤務後、ホテルでのブライダルの仕事に携わり、その後海外カナダの生花店にて店頭販売やウエディングを経験。2014年東京都・大田区山王にNIKO FLOWERS+(ニコ・フラワーズ)を立ち上げ独立した。リラックス方法は、音楽を聴きながらあてもなくドライブすること、料理。

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