内田 祐介 内田 祐介 24ヶ月前

ユリに会いに行こう

今日も草刈り 明日も草刈り
こんにちは、内田です。

私の住む地域は梅雨明け以降、殆ど雨が降っていません。
異常な暑さも重なり、大地はカラカラ・・
なのに・・雑草扱いの植物たちは元気です!
ボーボーボーと伸びてまいります。
いったい何を吸収して生長しているのだか・・



ハステンボスのゆり祭


ハウステンボス(長崎県佐世保市)のゆり祭
花と音楽に溢れる、アムステルダム広場は
国内最多300品種ものユリで彩られます。


アートガーデンでは、LAハイブリッドの展示も。
LAハイブリッドは ロンギフローラム系と、アジアティック系の交配種になります。
ロンギフローラム系といえば、トランペット状の花形で、香りのよい大輪花。
アジアティック系は、カラフルな花色。
その両者の良いところを合わせ持ったのが、LAハイブリッド。

華やかな園芸種の誕生には、日本に自生する多くの野生種が関わっていますが
自生の15種は、改良されていなくても そのどれもが美しく個性的です。
この夏に出会ったいくつかを紹介します。


野生のユリといえば、コオニユリ

分布域が広く、もっとも普通にみられるユリ。



「花は面白くない」と言われることもしばしばで
どちらかといえば、観賞用ではなく 食用(百合根)として利用されてきました。
しかし、私は好きだな~。
真夏の青々とした草原「グリーン」と
鮮やかな花色「オレンジ」との対比は、はっとする美しさ。
秋吉台(山口県美祢市)の草原では、草丈1.5mに達します。


草丈の高いススキやセイタカアワダチソウよりも
頭ひとつ抜きんでて咲くために、
ときには、クズに巻きつかれて倒され
競争相手ともみくちゃになりながら咲いています。
生存競争は熾烈ですね。

そうかと思えば、ほとんど土がないような海岸の岩場では
わずか20~30㎝ほどの草丈で花を咲かせ
海風に耐えながら、子孫を残しています。 


とってもたくましいコオニユリ。

よく似た種類にオニユリがあります。
一番分かりやすい見分けポイントは「ムカゴ」の有無。
ムカゴありがオニユリです。

オニユリは、他の野生種にはみられない3倍体でタネができませんが
タネのできる2倍体オニユリが、朝鮮半島に自生しています。
日本の3倍体オニユリの起源についてはわかっていませんが
食用のため、古い時代に渡来したとする説もあります。



宗像固有のカノコユリ

シーボルトが持ち帰り ヨーロッパの人々を魅了したカノコユリ。


名の由来は諸説ありますが
花弁の赤い斑点が小鹿の模様を思わせることから
この名がつけられたとされています。
花弁には艶やかな光沢があり
まさに、小鹿の背中を思わせます。

福岡県宗像市はカノコユリの「確実なる自生地域」とされ
市の花として指定されています。
「ウチダカノコ」などの園芸種が流通し広く栽培されていますが
カノコユリは極限られた地域にのみ自生する希少種(絶滅危惧種)です。

宗像自生種は、甑島(こしきしま/鹿児島県)自生種と同タイプとされてきましたが
平成22、23年の実態調査でDNA鑑定された結果、
宗像自生種の中に、固有のDNAをもつものが含まれていることが確認されたのでした。

これをきっかけに、宗像固有系統の保存と増殖が始まりました。
そこで今回、宗像固有系統の保存培養と普及活動をしておられる
「宗像カノコユリ研究会」代表、吉田さんの栽培場をみせていただきました


栽培場ですくすくと育つ宗像カノコユリ。

 
実生苗。
ユリの殖やし方については
球根の株分けや、木子、ムカゴなどをつかった栄養繁殖、
タネまきによる実生繁殖がありますが
タネまきは一度に大量の苗を得ることができるほかに、
無病苗を得るという大きなメリットがあります。


珍しい白花。
チョコレートに似た甘い香りをふんわりと漂わせていました。

宗像固有のカノコユリは、その全てが個人の敷地内に自生しているため
自生地での姿をみることは、残念ながら難しいです・・。
昔は山林や崖などで、普通にみられたそうですが・・。



平尾台のノヒメユリ

可憐な花を咲かせるノヒメユリ。



ノヒメユリ(スゲユリ)は環境省のレッドデータブックで
「絶滅危惧Ⅰ類B」指定の希少種ですが、
平尾台(福岡県北九州市)では、割と普通にみられます。
これも平尾台の保全活動をして下さるみなさんと
利用者のマナーのよさがあってのことですね。

まわりの植物たちに負けまいと ときには草丈が1mになることも。
細身ですが、茎は割と頑丈で簡単には折れません。
「ヒメユリ」に似ますが、ヒメユリは上向き
ノヒメユリは下向きに咲きます。

花の大きさは3~4㎝ほどで 日本に自生するユリの中での最小花です。


 花弁は反転し、ころんとした可愛らしい花姿に。

さらに希少な「黄花」を探しました。
黄花はノヒメユリの変種で「キバナスゲユリ」といい
ノヒメユリより、もう一段階絶滅が心配される
「Ⅰ類A」指定の超希少種になります。
一日探しましたが、結局みつかりませんでした。



キバナスゲユリ 


この花は平尾台自然観察センターで保存管理されている株。
もちろん、平尾台に自生していたもので
ゆくゆくは実生繁殖させたものを帰していきたいそうですが、
黄花の増殖は難しいとのこと。

ちなみに、平尾台でみられなくなって3年目だそうです。
またひょっこり咲いてくれるといいですね。
沖縄県や長崎県ではまだキバナスゲユリがみられます。

ユリの多くの野生種は絶滅の危機に瀕しています。
種類によって、その原因はさまざまですが
園芸目的での乱獲も、大きな原因のひとつです。
みなさんの財産として、大切にして行きたいですね。
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この記事のライター

内田 祐介
内田 祐介

下関市園芸センター(市営植物公園)主任。
幼い頃より何故か植物を育てていた。そして気がついたら植物公園に勤めていた。職場では、園内植物の展示栽培、種の保存、園芸相談などを務めるほか、テレビ出演や講演会も多数。NHK趣味の園芸など、園芸雑誌への執筆活動も行う。森林インストラクター。趣味は野草の自生地探訪。好きな言葉は、まじめに遊ぶ。

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