石井 奈緒 石井 奈緒 29ヶ月前

夏蔦コラム 『花の記憶』 第六回 - -野菊とアルミホイール- -


コンビニもない、ゲームセンターもない、町中知った顔ばかり。私の遊び場は川、海、山、誰かのお家のお庭、ただの道だったりするのだけれども、実りの秋が訪れると、どこも魅惑的な宝庫に一変します。

日曜日の朝、私は夏に掘り保存されてあるいびつな形のお芋たちを数本選り、台所のアルミホイルとマッチ、新聞紙と一緒に自転車のカゴにつっこみ出かけます。
山の畑の脇でお友達と焼き芋をするのです。

出会うご近所さんに適当にご挨拶しながら、自転車をこいで向かいます。
みんなと合流し、手分けして倒木や枯れ枝、落ち葉や松ぼっくりを拾い集めます。
小さな焚き火なので、私たちの焼き芋はおやつの頃にやっと焼き上がるのです。

木の枝で適当に灰をとり、 アルミホイルに包まれたお芋がのぞくと、ブンっと一つ勢いよく転がし、ブスリと木の枝を差し込みます。感触が柔らかければ、取り出してみんなで焚き火を囲みます。

焦げすぎて、先や皮のまわりがほとんど炭になっていたり、炭のかけらがところどころついてジャリっとする焼き芋。

食べ終わると、みんな手や顔が炭でところどころ黒いまま、自転車に乗り解散するのでした。

平日の学校の帰り道といえば、椎の実をスカートの両ポッケいっぱいに拾います。フライパンで炒らないと美味しくいただけませんから、食べるのは帰ってからのお楽しみ。

そしてさっそく道草。途中の道にはたくさん柿がなっていますが、長年の経験から渋柿は避け、甘い柿はわかっています。鳥に先を越されないように、毎日色づき具合をチェックして、食べ頃を待ちわびています。

ついにきた今日を喜びながら、ランドセルをおろして木によじのぼり、柿をくるくると回しとって落とし、下にいる友達に受け止めてもらいます。
いくつかとると、ランドセルをまた背負い、歩きながら前歯で皮を噛んではペッと草むらに飛ばし、美味しくいただきながら帰ります。

今度はあちらこちらに咲く、薄紫をした野菊たちの出番です。茎が太陽に向かって自由に曲がった、可愛らしい花たちをぷつん、ぷつんと摘むと、その香りが脳を刺激して、またこの子たちに会えたなぁと嬉しくなります。
花占い、「きらいからやったほうがえいかもしれん」などと盛り上がりながら、花摘み。
家路につく頃には、大人のこぶし一つ分もの花束が出来上がります。

気に入ったススキを見つけると、葉を下に剥がし出てきた茎をポキンと折り、穂を太陽に透かしたり、友達をくすぐったり。最後はランドセルにリコーダーのようにさして道を歩きます。

紺色のスカートと白い靴下は、トゲトゲしたくっつき虫だらけ。

家に着くと、秋の花たちをコップにさし、フライパンに火をつけ椎の実を炒り食べながら、虫取り網を手にまた外へ。

落ちていく夕陽の茜色の空、家の前で群れて飛ぶ赤とんぼをつかまえては離し走ります。
すー、すーと飛び、虫取り網に捕えると聞こえる羽音。

すると次第に外は真っ暗、日毎に暗い夜へ変わるのが早くなっていくのです。

1歳半の娘と一緒に野菊を摘む香りに、秋の道草と焼き芋のアルミホイールを剥がす感触を思い出していたら、もう立冬のニュース。また季節は過ぎ、景色は枯野へと変わり始めるのですね。



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この記事のライター

石井 奈緒
石井 奈緒

1985年生まれ。高知県香南市出身。
関東在住。
実家は農家で自然豊かな環境で育つ。
東京を拠点に活動、草花を通じて琴線にふれるような、いとおしくなる、そんな花束を喜んでもらえたらと全国へお届け中。
実店舗を持たない花店「夏蔦」の店主。

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