北国のコテージガーデンから[17]
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12月|除雪のお話
こんにちは。梅木あゆみでございます。
■ やってきた! 雪の季節 ■
今年も雪の季節がやってまいりました。
ここ月形町は札幌から45キロほど、車で約1時間の位置にありますが、札幌の約2倍、総雪量は高さにして9メートルの雪が降るという、北海道でも有数の豪雪地帯です。
どれぐらいの積雪があるかというと、
昭和60年豪雪は降雪1299センチ、最大積雪深248センチ、平成10年豪雪は降雪1222センチ、最大積雪深238センチ、平成23年豪雪は降雪1403センチ最大積雪深265センチでした。
以上のようにどの年も記憶に残る大雪でしたが、特に平成23年豪雪は、つい最近のことのように思い出されます。
△ うず高く積もった雪。このときの積雪深は265センチ。
平成23年の豪雪の年の、ハウスの管理は大変でした。
12月末のある日、朝から降り積もった雪が昼には車のドアが開かないほどの深さとなり、夜7時ころ帰ってきたときにはすでに腰以上の高さになっていて、ことの重大さを認識。
一番小さなハウスから助けようと思って駆けつけた矢先に、目の前でハウスがグシャっと潰れてしまったのでした。
ちなみにこの265センチの積雪によって、潰れた町内のハウスは700棟あまり。
△ 雪で潰れた小さなハウス。グシャっと潰れているのがわかりますか?
さて、ここ月形町は、今季は特別雪が遅く、11月初めに初雪があり、そのあとは解けたり積もったりを繰り返しながら、12月になって本格的な雪の季節に突入。
植物はその準備期間を経て雪の下での冬眠に入り、生産者もガーデナーも11月いっぱいをめどに冬支度を終えました。
なので、一般ガーデナーと庭園管理に携わるものは、ここまでをやっておけばゆっくりと冬を過ごせることになります。
しかし、ハウスを持つ生産者にとっては、実はここからが勝負なのです。
■ ハウス生産者ならではの雪しごと ■
ハウス生産者は、雪と上手に付き合わなければなりません。
雪が降ってホッとすることの一つに、ハウスに風が入らなくなるということがあります。
屋根から落ちた雪が重しになって、裾から雪の高さまでが天然の断熱材になるのです。
△ 人力で除雪。この雪の壁が寒さと風から守ってくれる。
この重しのおかげで、ありがたいことにどんな吹雪の日でもハウスのなかに風は入ってきません。
しかも、雪のなかの温度は0度から1度ぐらいを保てます。
つまり寒風だけではなく、分厚い雪の壁は、厳しい寒さからもハウスを守ってくれます。
ときどき、ハウスの屋根雪をどうするのかと聞かれますが、ハウス内の温度を2度に設定すると、屋根に積もった雪は自然に落ちます。
このとき大切なのが、ハウス脇の除雪なんです。
ハウス脇に雪が溜まっていると、ハウスの屋根から雪が落ちてきても詰まってしまい、横壁から屋根までの雪が繋がってしまいます。
するとハウスの骨組みに圧がかかり、潰れてしまうのです。
しかし、ハウス脇の除雪が間に合わず、繋がってしまった場合はどうするか。 あわてて詰まった雪を除雪するのは厳禁なんです。
まず、ハウス内の温度を上げて屋根に雪の割れ目を作り、ハウスとハウスの合間に落ちる手助けをしてあげます。
ハウス脇だけを除雪し、屋根に大量の雪が残ると、横壁による雪の支えがなくなって、すべての雪の重さがハウスの骨組みにのしかかると、天井はグシャっとへこみます。
△ ハウスと繋がる雪をスコップで切っている。除雪が間に合わないときは人力で行う。
△ ハウスの屋根雪を切り除き、落ちた雪がハウス間に溜まらないようにする。取り除きすぎても寒くなるので、さじ加減ならぬ、スコップ加減が必要。
△ ハウス脇の除雪の様子。雪を飛ばしておかないとH鋼を使った丈夫で大きなハウスでも潰れてしまう。▽
■ 広々したハウスの間隔は雪のために ■
コテージガーデンのハウスとハウスの間が、たっぷり距離を取られているのはこのためです。
ロータリーでハウス脇を除雪し、屋根の雪が落ちる場所を確保してあげてるというわけ。
実はこの雪切り、ハウスに関わらず一般住宅でも同じなんですよ。
雪の量にもよりますが、屋根雪が繋がってそのままにしておくと、屋根の軒がへし折れてしまいます。
関東など普段は雪の降らないところで大雪になったとき、知り合いの生産者さんのハウスを思い浮かべ、心配するのがこのことです。
ハウスとハウスの間隔が狭すぎて、除雪ができなかたり、連結ハウスや広い屋根だと構造的に、雪にはとても弱いからです。
△ 屋根の雪下ろし
△ 繋がってしまったコテージガーデンの屋根。
コテージガーデン朝の仕事。
広いところは除雪業者が大きなタイヤショベルで除雪し、ハウス脇は大きなトラクターのロータリーで飛ばしてくれます。 玄関、各ハウスまでの除雪。
灯油タンクの空気穴の確保とメーター部分除雪。
引き戸がスムーズに開け閉めできるよう、不凍液を浸透させる(下の写真)。
各暖房の稼働チェックと最高最低温度計測。
車庫物置建物などの雪庇落としと屋根の雪下ろし。
窓とFFストーブの排気口確認と確保。
そして忘れてならない、この後の天気の確認。
△ ハウスの入り口の引き戸レールに、不凍液を浸透させる。
立春を過ぎると日差しが春になり、雪の下でも植物が目覚めます。
雪は大変だけど、その雪が植物を守り、じっくりゆっくり地面に浸み込んだ雪解け水がやがて動きだす植物の糧となるのでしょう。
雪はありがたくもあり、厄介でもあり。 その雪と付き合っていかなくてはならないのが、私たち雪国の宿命なのです。
△ 3月になると排雪作業が始まる。いずれは解ける雪だが、4月のオープンには間に合わないので、バックホー、タイヤショベル、大型ダンプのリレー。
△ 深雪の朝は本当に美しい。
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この記事のライター
1995年月形町で生産直販店「コテージガーデン」を主婦から起業。現在は年間を通し2000品種以上の植物苗を生産し、札幌市百合が原公園ガーデンショップの売店も経営する。ノーザンホースパークK’s Garden、滝野公園、層雲峡温泉、個人庭園などの、企画、設計、工事、管理などを行う。「オープンガーデンof北海道」を発行するブレインズ種まく私たちのメンバー。2009年度北海道「輝く女性のチャレンジ賞」2010年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。日本ハンギングバスケット協会公認講師。三男一女の母。