北国のコテージガーデンから[18]
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1月|愛読書はカタログ
こんにちは。梅木あゆみでございます。
△ 私の宝物。
私の植物愛のスタートは、海外の種苗会社のカタログからでした。
かれこれ25年ほど前、私の町に来たALT(外国語指導助手)と仲良くなり、お土産にもらったマーサ・スチュアートの分厚い本の裏表紙に、種苗会社やら何やらの連絡先がびっしり。
そこで片っ端から、カタログ請求をしたのが始まりでした。
何せ時は1995年。
ウィンドウズ95スタートの年でもあり、インターネットがこれほどになるとは、まだ誰にも想像がつかなかった年です。
カタログにはさまざまな情報が詰まっていました。
美しい写真はもちろん、育て方やサイズ、まきどきなど。
会社により、特色ある品ぞろえ。
そのラインナップにより、説明文も違ってきます。
私は夢中で読み進み、辞書片手にカタログを読書のごとく熟読し、その特徴を学んでいきました。
このとき手元に届いた数冊のうち、2つの会社のカタログが私の運命変えたといっても過言ではありません。
私の愛読書から3つをご紹介します。
■ まずはアメリカから ■
△ 表紙を飾るカレンデュラ スノープリンセスは主力植物。
最初に手元に来たのが、アメリカの「Thompson&Morgan (トンプソン&モーガン社)」でした。1冊目の表紙を今でもよく覚えています。
赤いコスモス。
そして多くの宿根草のタネ。
日本の園芸店やタネ屋にはない宿根草がずらり。
しかも学名つき。
学名があったおかげでRHS監修『A―Z園芸植物百科事典』(誠文堂新光社)を駆使し、植物の特徴や生育を調べることができたのでした。
△この4つは特に好きな花。でも、このキンギョソウは後にカタログ落ち。がっかりでした。
■ カタログは私の教科書 ■
△ 以前はポピーも魅力的な品種があった。ルドベキアやマリーゴールドの新品種もまずはここから手に入れた。
また、最初、カタログはアメリカから来たのですが、この会社の本社はイギリスにあるということを、後年、知ることになりました。
そしてカタログを開くと謎の記号がいっぱい。
その中の一つが「Z(ゾーン)」でした。
読み進めるうちに、この記号がハーディネスゾーンといって、寒さを表すもののだとわかり、とても喜んだものです。
ちなみにイギリスのカタログには、その表記がありません。
広いアメリカでは気温差も大きく、「Z」の表記なしではタネの販売が難しいのでしょう。
私はこのカタログによって植物の耐寒性とハーディネスゾーンの関係を学んだのでした。
△ 表紙が野菜になり主流が変わってきた。数年前から野菜が先に来て花が後になった。
カタログの順を追って見ていくと、その品種の取り扱いによりガーデニング業界の流れを垣間見ることができます。
2000年以前は花がカタログの先頭を飾っていました。
そして数年間だけ日本の業者が代理店となり、直接購入ができない事態に。
その後、再び直接購入ができるようになりましたが、残念なことに品種数は減り、逆に野菜が多く載るようになりました。
2015年には、野菜がカタログの巻頭を占めるようになったのです。
この流れは日本のガーデニング業界の流れに似ています。
■ 野菜もさらに魅力的 ■
△ ジョニーズは野菜の楽しさを私に教えてくれた。
こちらは主に野菜のグロワー(生産者)向けのタネを販売している「Johnny’s Selected Seeds(ジョニーズセレクテッドシーズ社)」のカタログです。
ここの野菜の品ぞろえには目を見張りました。
こんなに品種があるのか~っと。
特にトマトとレタス! そして豆、カボチャ、バジル。
花だけではなく、野菜にも興味があった私。
当時、ミニトマトはミニトマトで、品種名で呼ばれることはなく、カラフルなトマトも出回っていない時代。
積極的にカラーのミニトマトのタネを買い、トマトシスターズと名づけて販売したのです。
それがコテージガーデンのヒット商品のひとつである四姉妹につながりました。
△ わかりやすいカタログのレイアウト。比較ができるので購入意欲を掻き立てる。
△ ビーツもニンジンも全種類植えたくなる f^_^;
△ コテージガーデンのレタス。
さらにレタスも、今では春の主力商品。
結球しないタイプのレタスをカラフルに組み合わせ、コンテナで栽培しようと提案したのでした。
おかげさまで現在も3月から5月にかけて、コテージガーデンの主力商品。
それもすべて種苗会社あってのこと。
感謝の気持ちいっぱいです。
△ イエリトのカタログ。
こちらはここ15年ほど購入しているドイツの「Jelitto(イエリト社)」。
主流は宿根草のタネです。
写真こそ少ないのですが、びっしりリストアップされたその多様なさまは、私を虜にしました。
カタログが来るとどこにでも持ち歩き、読み込んだものです。
まさに愛読書。
最近では巻頭に薬草=ハーブのページ、そしてオーガニックかどうかを明記したカタログとなっていて、時流を感じます。
△ アリウムのバリエーションも豊かにそろう。
△ オーガニックハーブのページ。ここを見ただけでもオーガニックへの関心の高さを感じる。
「イエリト社」の素晴らしいところは、難しい宿根草の発芽を助けるガイドページが、日本語でも書かれているというところなのです。
近年はオランダなどからの輸入苗が主流になっている日本ですが、「タネでふやせるものはタネまきで」という私のスタイルは、今も変わりません。
△ コテージガーデンの苗がタネまきから始まるのも、海外カタログのおかげ。
このように私は国内のカタログではなく、海外のカタログに育てられました。
残念ながら日本にはタネをまいて育てるという園芸文化は、ごく一部に限られています。
だから一般向けの、魅力あるカタログがないのだと思います。
逆を言えば、日本にビジュアル、品種数、説明のしっかりしているカタログがあったなら、ガーデン文化も違ってきたかもしれませんね。
さて、先日届いたお楽しみの「Johnny’s Selected Seeds」のカタログは、驚くことに厚みがこれまでの四分の一になってしまっていました。
コストのかかるカタログではなく、インターネットで選ぶというのは、世の流れかもしれません。
でもカタログに育てられた私は、とっても寂しく残念に思うのです。
△ 1月のハウス作業。
まもなく2月になるとか寒さも緩み、日ざしだけは春。
もう一回、昔のワクワクを取り戻すかごとく、カタログを読み込んでタネをまいてみようかなぁ。
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この記事のライター
1995年月形町で生産直販店「コテージガーデン」を主婦から起業。現在は年間を通し2000品種以上の植物苗を生産し、札幌市百合が原公園ガーデンショップの売店も経営する。ノーザンホースパークK’s Garden、滝野公園、層雲峡温泉、個人庭園などの、企画、設計、工事、管理などを行う。「オープンガーデンof北海道」を発行するブレインズ種まく私たちのメンバー。2009年度北海道「輝く女性のチャレンジ賞」2010年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。日本ハンギングバスケット協会公認講師。三男一女の母。