北国のコテージガーデンから[19]
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2月|私の好きなスイセンたち
こんにちは。梅木あゆみでございます。
■「約束の球根」■
秋に植え、春に咲くいわゆる秋植え球根を「約束の球根」、そう呼んでいます。
雪の前に植えた球根は深い雪の下でじっくり根を伸ばし、雪解けを待ってニョキニョキと芽を出すのです。
まるで約束していたかのように。
そんななかでも、春を表する代表的な球根がスイセンです。
スイセンはネイティブな植物ではありませんが、その強さゆえ、一回植えたら、たとえ家主がいなくなっても咲き続けます。
それが「約束の花」であり、「離農花(りのうばな)」でもあるのです。
思い起こせば、幼かった私が山ほど摘んで家に持ち帰ったのは、まさしく離農花のスイセン。
離農した廃墟の家だったり、そのようなところから摘んできたのです。
△ いずれも K's Gardenの景色。
私が作った最初の大型ガーデンが北海道の今のテーマパーク、ノーザンホースパーク の K’s Garden です。
オープンの前年、とりあえず春一番に見せるものが必要と、スイセンを川沿いにびっしり植えました。
あまりに多い品種の数々に、どれをどのように選んだらいいのか、全く脈略もなく、ただただ多品種を見た感じだけを頼りに植栽したのでした。
それが咲いた翌春、指導してくれていたR先生から、いわれた一言が忘れられません。
「品種を多く植えればいいというものではない。自分がどんな風景を作りたいのか。それを考えてのことなのか」。
言われている意味も分からず、その答えも見つけることができないでいた私でした。
■ イギリスのスイセンは懐かしい景色 ■
そしてその一年後に訪れたイギリス。
早春のイギリスに咲くスイセンは、周囲の自然に馴染んでさり気なく、それでいて目をひく。
懐かしささえ覚える、素朴なスイセン。
△ アンハサウェイの庭
△ みんな大好きウィッチフォード・ポタリーのスイセンのポット。真似したい!
私が前年に植えた華やかな大輪の、それとはまるで違う顔。
むしろ幼いときに両手いっぱい摘んだあのスイセンによく似ている、シンプルでナチュラルなものだったのです。
幼い思い出の次に、私の心へと衝撃的に飛び込んできたのは、イギリスで見たスイセンが咲く風景。
そこで見た風景は新しいものではなく、実はいつも見ている北海道のどこにでもある、春の景色そのものだったことに気づいたのでした
△ シシングハーストキャッスルガーデン
その景色を私なりに再現しようと、その秋、ガーデンから「馬見の丘」というエリアにつながる林の中に、5万球のスイセンをバラまき、植えました。
植えた球根はイギリスで見た、あの素朴なスイセン。
K’s Garden のスイセンが咲くこのエリアは実は条件が悪く、固いところにドリルを使って植えたため、この後はふえることもなく減る一方でした。
このエリアをどうしようかと打ち合わせで話題に上がったとき、このストーリーをお話ししました。
うれしいことに
「では、このエリアを梅木さんが思い描いた庭に、何年かかけて復活させましょう」と、
スタッフがいってくれたのです。
△ バラまきして植えた5万球のスイセンが咲く K's Gardenの林。
■ 風景をこしらえる品種■
風景になじむ品種は大事だと思います。
スイセンひとつとっても、北海道では越冬できないニホンスイセンは、やはり南のものだと思います。
一方で、華やかな大きな顔のスイセンは、自然な植栽が求められるシーンには違和感があります。
あの幼いころ摘んだ素朴なスイセン。
イギリスで出あったシクラミネウス系のスイセン。
北海道の自然の景観にしっくり収まる、そんな品種選びは極上の楽しみです。
△ ’ジャック スナイプ’ (シクラミネウス系)
△ ’ジェニー’ (シクラミネウス系)
△ ’ピーピングトム’ (シクラミネウス系)
庭の仕事って、ほんとうに幸せ。
植える心を分かってもらえるって、ありがたい。
そして、この仕事に生きがいを感じるのでした。
△ 月形町の道に地域のみんなで植えました。
△ 国営滝野公園にもスイセンのシーンを作りました。
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この記事のライター
1995年月形町で生産直販店「コテージガーデン」を主婦から起業。現在は年間を通し2000品種以上の植物苗を生産し、札幌市百合が原公園ガーデンショップの売店も経営する。ノーザンホースパークK’s Garden、滝野公園、層雲峡温泉、個人庭園などの、企画、設計、工事、管理などを行う。「オープンガーデンof北海道」を発行するブレインズ種まく私たちのメンバー。2009年度北海道「輝く女性のチャレンジ賞」2010年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。日本ハンギングバスケット協会公認講師。三男一女の母。