植物生活編集部 植物生活編集部 1週間前

植物生活なあの人 vol.11 薄木健友/フローリスト




北海道札幌市で生花店「フルーロン花佳」を営む薄木健友さんは、花卉業界では有名な、“花の水揚げのプロ”。

これまでの実績にはさまざまなものがあり、最近では「ドクトル薄木」という愛称のもと、インターネット動画で水揚げにまつわるノウハウを披露しているほか、自身の著書「水揚げ&花のケア 切り花の鮮度保持マニュアル」(誠文堂新光社)も刊行し、全国各地で講演会に招聘されるなど活躍中です。



植物生活でも「学ぼう、花のスペシャリストに。水揚げ&花のケア」を連載中!
花を長持ちさせるためのテクニックや知識を公開しています。




講演会や動画で、理路整然と水揚げに関する知識を語る薄木さんに対し、理性的な印象を抱く人は多いでしょう。
しかし実は、お花に対して深い愛情をもつ“人情派”でもあるようです。


自身の経験に基づいた、生きた講義を提供


「『6BA処理剤』には細胞を活性化させる働きがあり、カラーやダリアに吹きかけると老化を抑えることができます」

「『エテフォン処理剤』はチューリップと相性がよく、花首が伸び過ぎるのを防いでくれます」

プロのフローリストたちを前に、こう、品質保持剤の特徴について語る薄木さん。
この日の薄木さんは、「一般社団法人日本切花協会」が主催する「フラワープロデューサー講習」の講師。
トレードマークの白衣を身につけ、事前に用意した薬剤と資料をもとに講義を進めます。




ちなみに「フラワープロデューサー」とは、切花に関する正しい知識や技術にくわえ、フラワーショップや教室の運営にまつわるノウハウなどを身につけた人に与えられる資格。
水揚げや品質保持の方法を身につける「品質管理部門」、フラワーデザインに特化した「商品開発部門」、運営・経営方法を学ぶ「企画戦略部門」の3つの部門から成ります。
薄木さんは「品質管理部門」の担当講師で、講義では、花の品質の見極め方からカビの発生を抑える方法まで、幅広い内容をレクチャーします。
自身の経験に基づいた、貴重な講義が聴けるとあり、受講生のなかにはベテランのフローリストの姿も見受けられました。
 


花の水揚げは謎だらけ。最良の方法を知ろうと、テストを繰り返した



今や、“国内有数の水揚げのスペシャリスト”となった薄木さん。
現在にいたるまでの道のりを、かいつまんでお話いただきました。

「学校を卒業後、最初に就職したのは家電販売店です。当時与えられた仕事は、各住宅を営業してまわるというものでした。“おたくで買った家電がすぐに壊れた”と文句を言われたり、チャイムを鳴らしたとたん、住人に“うるさい”と怒鳴られたり、辛いことがたくさんある仕事でね(笑)。やがて心身ともに調子が悪くなり、ふさぎ込むようになりました」

そんなある時、テレビで音楽バラエティ番組を見ていた薄木さんは、スタジオを飾る花の装飾に心奪われます。

「暗い日々を過ごしていたので、華やかな花の装飾に惹かれたのでしょうね。直後から“装飾を手がける仕事がしたい”と思うようになり、花屋の門を叩きました」

当時、花においては全くの素人だった薄木さんは、先輩たちに指示されるがまま仕事をしていたそう。
必死に慣れない作業をこなすなかで、もっとも興味をもち、そして疑問を抱いたのが、花の水揚げの方法だったようです。



「菊は根本を煮る、紫陽花はミョウバンをすり込む、といった具合に、花によって水揚げの仕方が異なるのですが、なぜそのような方法がいいのかたずねても、誰も答えてくれない。“昔からこうしてるから”の一点張りでした。独立後、何軒かの花店に水揚げについて聞いてみたところ、店によって水揚げの仕方が違うことに気がつきました」



むくむくと頭をもたげてきた疑問と探究心に突き動かされ、薄木さんは仕事の空き時間を使い水揚げと管理のテストをするようになります。

それは、1種類の花に既存のすべての方法をほどこし、どれがもっとも効果的だったかを記録するという地道な作業。


(上記写真/『水揚げ&花のケア』誠文堂新光社刊より)



しかし、続けるうちに、それぞれの花にとって最善の方法が分かってきたのだとか。

その後、当時の研究成果が業界で注目されるように。
花卉業界のさまざまな団体から依頼され、全国の指導スタッフが集まる講習会などで研究成果を発表したところ、大好評だったそう。

これをきっかけに雑誌「フローリスト」での連載も決まり、薄木さんは、“水揚げのスペシャリスト”としてのキャリアを歩み始めました。

 

できる限り花を長持ちさせることを、自身の使命に


ご自身のフラワーショップを切り盛りしながら、全国各地で講演を行い、さらにはインターネット動画への出演などもこなす薄木さん。
正しい水揚げや品質管理の方法を周知させるため、熱心に活動されている印象を受けます。

薄木さんいわく、こうした活動は「花業界への恩返し」なのだそう。



「水揚げや品質管理に関するテストを行う際、薬剤メーカーや農業試験場が協力してくれることが多く、また、農研機構の研究者のなかにも、僕のテスト内容などに注目し、協力してくださる方がいます。僕が水揚げや品質管理に関する体系的な知識を身につけられたのは、こうした方々の協力があってこそ。花業界から受けた恩恵を、水揚げや品質管理方法のレクチャーを通し、お返ししていきたいと思っています」


お花をきれいに見せたい、できる限り長持ちさせたいという、フローリストならではの思いも、活動の原動力となっているよう。

それをうかがわせる、こんなエピソードを明かしてくれました。


「ある花の産地へ見学に行った時、生産者の方が好意で“好きなだけお花を切って、持って帰っていいですよ”と言ってくださったことがありました。ご好意に甘え、ハサミで花を切ろうとしましたが、なぜかどうしても切ることができない。地面に根を張り、生き生きと咲く花たちの命を奪ってしまうような気がしたんですね。以降、"花を水揚げしたり、生けたりするのは、人間のエゴなんじゃないか”という思いが強くなってしまった。そんなある時、知り合いの作家さんが手がけた小説を読んでいたら、

“花は人の手を借り、子孫を増やしてきた。人間が一方的に花を利用しているようだが、実は花も人間を利用している”

(『花工房ノンノの秘密 死をささやく青い花』 深津 十一 著、宝島社文庫)

という一文をたまたま見つけて。そうか、人間と花は持ちつ持たれつの関係なんだな、と。切ったお花をできる限り長持ちさせるのが、自分の使命なんだな、とも思いましたね」


お花に関わる人々やお花に対し、強い思い入れをもつ薄木さん。
今後も、花の正しい水揚げ・管理方法を広める活動に、精力的に取り組まれるそうです。


水切りの基本って?
湯揚げの方法を教えて!
茎を割る、裂く方法って?
ミョウバン・水揚げ材・ハッカ油などを使うのはいつが良い?

キク、スイートピー、アジサイ……、それぞれ違う品目の水揚げ&花のケアを知ってマスターしたい!

ぜひ、これからも植物生活の連載をご覧ください。


​​​​​​​書籍について



話をうかがった人
薄木健友 Taketomo Usuki
札幌の生花店株式会社花佳代表取締役。NPO 法人日本切花装飾普及協会認定カットフラワーアドバイザー。 第1回花のMVP大賞受賞。1988 年札幌市内の生花店に勤務したのち、1993年にフルーロン花佳を開いて独立。JFTD学園講師、切り花の水揚げと鮮度管理に関する講演や雑誌連載など、活動は多岐に渡る。

フルーロン花佳
北海道札幌市西区西野6条3丁目 1 - 1
http://www.hanaka.tv
E-mail:hana@hanaka.tv
 
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