植物生活編集部 植物生活編集部 56ヶ月前

ドイツフロリストマイスターに学ぶ「花の造形」レッスン 08 植物の動き


フロリストマイスターが教える 花の造形理論 第8回

花のプロフェッショナル=フロリストの仕事は、商品や作品の「造形材料」である植物をいかに魅力的に見せ、植物が持つ生命力やその表情を感じてもらえるようにするかにあります。

造形する側であるフロリストは、自分が扱う造形材料について熟知しているべきです。
それでも私たちと同じ、いえ、それ以前から存在する植物を知ることは、短期間でできるものではありません。

毎日の生活の中で、また仕事の最中にふと目をやった自然の風景から……。
私たちが生きている時間のすべてを使い、少しずつ知識を増やしていくものです。

フロリストは植物をどのように見て、何を感じ取るべきなのか。
お客さまの要望や自分のテーマにあった造形をするために、どのような知識が必要なのか。

まだ歴史の浅い花の造形の理論を、ドイツフロリストマイスターとして紹介する連載です。

 

レッスン 08
自然を観察し、植物の動きについて考える


今回は「植物が持つ動き」に注目してみましょう。
フロリストの造形材料である植物も、さまざまな動きの特徴を持っています。
その動きから受けるイメージも異なります。

デルフィニウムやグラジオラスは「上に向かって伸びる」動きを持ち、そこから受けるイメージはアクティブで生き生きとしたものです。

求めるイメージに合った材料を選択することが作品作りでは必要です。

 

自然の中の植物が持つさまざまな動き



上に向かって伸びる[ アカンサス ]


上に伸びてから止まる[ サンジャクバーベナ ]


上に伸びてから展開する[ シペラス ]


曲線を描く[ シマススキ ]


あらゆる方向に広がる[ カレックス ]


たわむれるような[ ホップ ]


動きのない・止まった[ アジサイ ]


ジグザグで角のある[ ウメ ]


下に落ちる[ シダレウメ ]

動きの特徴を作品作りに生かす

植物の動きは、作品に生命力をもたらし、テーマにも大きな影響を及ぼします。
多種類の花を取り合わせて構成した場合、その材料の中の支配的な動き・最も目立つ動きが、作品全体の雰囲気を左右します。

上に伸びる動きやラインを生かした作品は、それぞれの動きの流れが必要とする空間があってこそ成立します。
また、ジグザグで角のある動きのように重い印象のものもあれば、曲線を描く動きのように軽いイメージのものあります。

使用した材料の動きが活動的であればあるほど、植物の成長の様子が強く表現されます。
植物が本来持っている表現性に注目し、その特性にふさわしい扱いをすることで、造形表現の幅は広がります。 


作例1

植物の動きを作品に生かす 1  優美な軽やかさを表現 


曲線を描く動きを持つシマススキに、クレマチスなどたわむれる動きの材料を加え、優美で軽やか、涼しげな印象に仕上げた花束。メインの動きは曲線で、そこに異なる種類の動きを加えることで表情をつける。材料を入れすぎると面に見えてしまうので、線が重ならないように大きく作り、動きを効果的に表現することが大切。

{ Flower&Green }

クレマチス、シダレウメ、スイートピー、シマススキ、ホップ、カロライナジャスミン

制作のポイント
最初にシマススキを持って長さを決めてから、他のたわむれる動きの材料を加えて束ねる。蔓性のクレマチスはそのままでは自立せずに折れてしまうが、シマススキが芯となることで固定される。
 

作例2

植物の動きを作品に生かす 2 夏の成長の勢いを表現


アクティブなイメージを持つ上に伸びる動きの材料を集め、植物が勢いよく成長する夏のガーデンを表現。ここに動きのない・止まった材料のツワブキを加え、対照的な動きとの組み合わせで印象的に仕上げた。紫がかった色味で揃えた副材料が、主役のグラジオラスの色を引き立てる。

{ Flower&Green }
グラジオラス、リシマキア‘ボジョレー’、ツワブキ、ガウラ、稲ワラ

制作のポイント
上に伸びる動きを持つ植物の中から、夏らしい色と雰囲気のグラジオラスをメイン花材として選択。デコレーション用のカラーピックを合わせることで夏の明るさや楽しさが加わる。
 

今回のまとめ

・植物が成長する方向や、姿と形、ありさまこのと。動きには「上に向かって伸びる」「曲線を描く」などさまざまな特徴があり、そこから受けるイメージは、「アクティブ」「エレガント」など千差万別。
・作品に植物の動きを取り入れる場合、静と動など対照的な動きを組み合わせるとコントラストと調和が生まれる。その際は、どちらが主役かを明確にすること。
・似通った動きを組み合わせると、わかりやすく明確な表現となり、動きの特徴をより強調することができる。


写真/中島清一 月刊フローリスト

講師
橋口 学 
Manabu Hashiguchi
ドイツ国家認定フロリストマイスター。1997年渡独。国立花き芸術専門学校ヴァイエンシュテファン卒業後にミュンヘンの花店に勤務し、およそ9年間のドイツ滞在を経て帰国。現在は神奈川県秦野市にて「花屋ハシグチアレンジメンツ」を主宰。 植物造形理論・実技レッスンを行っている。
http://www.h-arrangements.com

写真/中島清一 月刊フローリスト

 
橋口さんのドイツフロリストマイスター理論がわかるリースの制作法
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