植物生活編集部 植物生活編集部 2019/08/20

ドイツフロリストマイスターに学ぶ「花の造形」レッスン11 調和と対比


フロリストマイスターが教える 花の造形理論 第11回

花のプロフェッショナル=フロリストの仕事は、商品や作品の「造形材料」である植物をいかに魅力的に見せ、植物が持つ生命力やその表情を感じてもらえるようにするかにあります。

造形する側であるフロリストは、自分が扱う造形材料について熟知しているべきです。
それでも私たちと同じ、いえ、それ以前から存在する植物を知ることは、短期間でできるものではありません。

毎日の生活の中で、また仕事の最中にふと目をやった自然の風景から……。
私たちが生きている時間のすべてを使い、少しずつ知識を増やしていくものです。

フロリストは植物をどのように見て、何を感じ取るべきなのか。
お客さまの要望や自分のテーマにあった造形をするために、どのような知識が必要なのか。

まだ歴史の浅い花の造形の理論を、ドイツフロリストマイスターとして紹介する連載です。


これまでの連載はこちらから



フロリストマイスターが教える 花の造形理論 
第11回 調和をとるための2つの方法


植物を使った造形や制作物は、基本的には見る人に対して心地よさや、和やかな気持ちをもたらすべきものです。
それゆえに、私たちは制作する花束やアレンジメントの構成と表現に調和をとろうと努力します。
個性、動き、質感、色、形など、異なる特性を持つ植物材料を使った調和のとり方には、2つの方法があります。

 1  調和のとれた同じような性質を持つものを合わせる。
 2  互いを高め合うような調和のとれた対比要素を合わせる。


1は似たような性質を持つもの、親類関係にあるような材料を合わせる方法です。
同系色、同じ形、同じ動きなどが例になります。「ピンク系の花束」など、お客様の注文で比較的多く、フロリストにとって容易に材料を合わせることができる調和のとり方です。

2は一つの要素に全くタイプの違う別の要素を合わせ、対比(コントラスト)によって調和をとる方法です。
「AがあるからBがある、Bは対照的なAの存在により特徴がより表せる」という考え方です。
明と暗、日なたと影のような関係です。黄色系の花の取り合わせに少しの青や紫を入れることは、よくある花合わせの方法です。

フロリストが調和の感覚を得るためには、自然の様子を観察することがもっとも適しています。
同じような形の花や葉が美しく並んで風にそよぐ様子、緑いっぱいの林の中に赤い実がびっしりと下がる様子など、自然の中で見られる調和は私たちに多くのアイデアや表現を教えてくれます。
また、フラワーデザインの中では、異なった要素を対比させてテーマ性を強調した作品が多く見られます。

どんな要素を対比させるのか?動きの違い、表面構造の違い、主張、色、大きさ、形、方向、空間、量の違い、有機物と無機物(植物材料と非植物材料)、生と死(生花とドライ)など。これらのアイデアのヒントも、自然の中には溢れています。

自然の中で見つけることのできる対比のアイデア



艶のある葉と滑らかな葉


球体と平面


艶のある面と艶のない面


彩度の異なった葉


人工的なものと自然的なもの


面と線


暗い色と明るい色

など
 

異なる要素の対比で調和をはかる

 フロリストの実際の仕事では、上で紹介した2つの方法に、バリエーションをつけながらより複雑な構成をしています。

1の場合では、単純に同じ要素を合わせるだけでなく、色はすべてピンク系でも材料の質感に変化を加えるなど、単調で退屈にならない工夫をします。
2についても、全く異なった要素を合わせて対比させるだけでは全体としてのまとまりを失ってしまうので、何らかの関連性や繋がりを持たせる工夫は必要です。
反対色を合わせた組み合わせの場合には、同じ質感または同じような形の材料を選択する、などです。


作例1

異なる要素の対比で調和をはかる
― フレッシュなものと枯れたもの ―


生き生きとしたダリアに、秋から冬のガーデンで見られる乾いた材料を合わせ、溢れるようにアレンジ。無造作な雰囲気の中、新旧の対比で調和をとった。生花は迎える冬にぴったりのこっくりとした色みのダリアだけを使用。合わせる花材にはダリアと似た形のヒマワリのほか枯れゆく材料を選び、季節感を表現した。

{ Flower&Green } ダリア、ヒマワリ、ジニア、ホップ、アワ

制作のポイント
バスケットから材料が溢れるようにアレンジし、収穫をイメージ。
全体の輪郭はシンメトリーに近い形だが、フォーカルポイントは中央からはずして不安定な要素を作り、秋から冬への雰囲気にふさわしいように構成している。

 

作例2

同じ動きを持つ要素で調和をとる
― 巻く ―


同じ動きを持つ蔓性の材料を合わせ、「巻く」という要素で統一したリース。フレキシグラスで作ったベースの、同じ方向への動きが回転を強調。これに合わせて同じ調子でクレマチスとブドウの蔓を入れ、すべてが巻かれて回っているように見せ、調和をとった。ほかの要素はわざと入れず、調和の効果を見せている。

{ Flower&Green }
クレマチス、ブドウ(蔓)、フレキシグラス

制作のポイント
フレキシグラスでベースを作り、クレマチスとブドウの蔓はキャップで保水して配置。収穫が終わり、枯れ始めたブドウの蔓とフレキシグラスの色で晩秋を表現した。

 

今回のまとめ

・調和は、見る人に心地よさを感じてもらうために作品や商品に必要な要素。
・調和をとる方法には、似たような性質を持つものを合わせる場合と、一つの要素に全く異なる別の要素を合わせ、対比させる場合の2つの方法がある。
・前者の印象は、安定する、統一感をひと目で感じられる、わかりやすい、単調、退屈など。後者は、緊張感があり、組み合わせによって個性的な印象を出せ、面白みがある。
・2つの方法のバリエーションで造形に変化をつける。



写真/中島清一 月刊フローリスト

講師
橋口 学 Manabu Hashiguchi
ドイツ国家認定フロリストマイスター。1997年渡独。国立花き芸術専門学校ヴァイエンシュテファン卒業後にミュンヘンの花店に勤務し、およそ9年間のドイツ滞在を経て帰国。現在は神奈川県秦野市にて「花屋ハシグチアレンジメンツ」を主宰。 植物造形理論・実技レッスンを行っている。

http://www.h-arrangements.com



橋口さんのドイツフロリストマイスター理論がわかるリースの制作法




 

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