植物と暮らす おうち時間 第16回 Samosa wala Timoke / 北村朋子さん
『植物と暮らすおうち時間』。
今回ご登場いただくのは、インドのスナック “サモサ” や、スパイス料理のケータリングを行う北村朋子さんです。
北村さんのお料理は、季節に沿った素材やスパイスなどを使い、身体に染み込んでいくような美味しさがあります。
どのような思いで素材と関わり、日々を過ごしているのかについてお伺いしました。
北村さんにとって、植物はどんな存在ですか。
「幼い頃、植物が身近にある日々を過ごしてきました。それが今の私を築いている一つの要素になっていると思いますね。
実家では祖父母と同居をしていて、祖母が庭の草木を大切にしているのを見て育ちました。
藤棚もあったので、今でも藤の花の香りを嗅ぐと実家にあった庭の景色と祖母の顔が浮かんできます。
小学生の頃には教室に飾ってもらうよう季節に咲く花を包んで持たせてくれたり、庭になる木苺やざくろを食べたりしていましたね。
今でも季節の移り変わりを感じ、植物の造形の美しさを愛でることが好きで、小さな花一つであっても暮らしにそっと彩りを与えてくれていると感じています」
「昔写真を勉強していたこともあり、花を撮るのが趣味でもあるんです。
花びら、茎、葉、それぞれの造形的な美しさをいろんな角度から眺めては撮っていて、気づくと1時間位経っていることもあるほど。
美しさに没頭してしまいますね。
それは花に限らず野菜でも同じことです。仕込みをしているときに、調理をしているはずが、気づくとカメラを構えていることもあります」
「料理をする時も野菜の美しさを出来るだけいかして、それぞれが一番輝くように。
味はもちろんですし、 “花をいけるような感覚” で盛り付けようと心がけています」
最近こちらのお部屋に引っ越されたのですか。
「2018年に引っ越してきました。それから暮らしに植物を取り入れるようになりましたね。
この家に決めた一番の決め手は天窓があったこと。光が綺麗にまわっていると自然と植物を飾りたくなります。
以前買ったものの、うまく飾れていなかったモビールも、やっと居場所を見つけた気がしました。
イベントでほとんど外に出ている日々なので、休みの日は家でのんびり過ごします。
とにかく今の家がお気に入りで、友人を呼んでご飯を食べたり、映画を見たり、旅先でコツコツ集めた宝物を愛でたりしています」
花を飾る際に具体的なイメージを思い描くことはありますか。
「インドでの花のあり方を思い出して参考にすることもありますね。
毎年旅を続けているインドでは花が暮らしになくてはならない存在。日常的に祈りの花が溢れています。
あとは、お気に入りの本を眺めることもありますよ。
好きなのは、Terri Weifenbachの花の写真集〈the may sun〉やインドの瞑想の本など。
瞑想はしませんが、花をモチーフとした装丁が素敵なんです。
骨董屋に古い花器や水差しを探しに行くのも楽しみの一つで、気づいたら花瓶ばかり集めています」
特に好きな花はありますか。
「やっぱり、インドの花が好きです。
南インドはジャスミンの産地で、女性は髪に生花を飾ります。彼女たちとすれ違う時にジャスミンがふわっと香ること、祈りで使う薔薇の香り、溢れるマリーゴールドの彩りなど、旅の記憶にはいつも花の景色が浮かびますね。
他にはラナンキュラスも。花びらの幾重にも重なる様が美しくて大好きな花の一つです」
植物を育てる際に気をつけていることはありますか。
「働いていた飲食店のママが、毎日花を活けていて『連休明けは花が枯れるのが早い、見てあげないと花も元気がなくなる』といつも言っていたのが印象に残っています。
なので、なるべく“見る”ように、気持ちを持っていくようにしています。要は愛情ですね」
北村さんは多彩な料理を作ることができる中で、サモサに魅了され続けているのは何故ですか。
「サモサが売られているインドのチャイ小屋が好きなんです。
サモサはインドの道端にあるチャイ小屋で売られている一品。
チャイ小屋は、朝ごはんに、おやつに、バスを待ってる間に、集う人々同士が談笑してさっと過ぎていく、気軽だけど街の大切な場所です。
そんな雰囲気が好きで、私もいつかチャイ小屋をやりたいと思っているので、サモサがチャイ小屋の一品であることはポイントでしたね」
「以前勤めていた菜食料理のカフェのメニューにサモサがあったのも、作り始めるきっかけに。
しばらく前のことですが、半年のインド旅を経て、菜食料理のカフェに2軒合わせて7年ほど働いていました。
最初に勤めた店のメニューにサモサがあったのですが、もともと提供していたのは、私が現地で食べてきたものと違う簡易的なもの。
ちょうどその頃、インド人の友人が日本に滞在することになり、彼にメニューを教えてもらい、本場仕込みのサモサをお店で作るようになりました」
「当時はサモサを知っている人も少なかったので、持ち寄りのごはん会などに持って行ったら評判になり、『マーケットで販売してみたら』と声をかけてもらったのが活動のはじまりです。
未だにサモサを知らない人も多くて大変な時もありますが、リピートしてくれる人がいたり、サモサがインドに行くきっかけになったりと、マニアックな食べ物がじわじわ広がっているのが嬉しくて続けているのだと思います」
北村さんが手がける料理は、その場所や食べる人に馴染む不思議な魅力があると思っていました。
相手のことや四季の巡りを思っているからこそ、あたたかい居場所を感じるお料理を作ることができるのでしょう。
うかがった人
Samosa wala Timoke
季節の巡りに沿った旬の野菜や豆を使ったインドのスナック・サモサの出店販売やスパイス料理のケータリングをしています。
野菜の素材の味を大切に、スパイスはほんのり優しく、彩り豊かな料理をお届けします。
https://www.instagram.com/samosawalatimoke/
今回ご登場いただくのは、インドのスナック “サモサ” や、スパイス料理のケータリングを行う北村朋子さんです。
北村さんのお料理は、季節に沿った素材やスパイスなどを使い、身体に染み込んでいくような美味しさがあります。
どのような思いで素材と関わり、日々を過ごしているのかについてお伺いしました。
盛り付けは花をいけるような感覚で 北村朋子さんの植物との暮らし
北村さんにとって、植物はどんな存在ですか。
「幼い頃、植物が身近にある日々を過ごしてきました。それが今の私を築いている一つの要素になっていると思いますね。
実家では祖父母と同居をしていて、祖母が庭の草木を大切にしているのを見て育ちました。
藤棚もあったので、今でも藤の花の香りを嗅ぐと実家にあった庭の景色と祖母の顔が浮かんできます。
小学生の頃には教室に飾ってもらうよう季節に咲く花を包んで持たせてくれたり、庭になる木苺やざくろを食べたりしていましたね。
今でも季節の移り変わりを感じ、植物の造形の美しさを愛でることが好きで、小さな花一つであっても暮らしにそっと彩りを与えてくれていると感じています」
「昔写真を勉強していたこともあり、花を撮るのが趣味でもあるんです。
花びら、茎、葉、それぞれの造形的な美しさをいろんな角度から眺めては撮っていて、気づくと1時間位経っていることもあるほど。
美しさに没頭してしまいますね。
それは花に限らず野菜でも同じことです。仕込みをしているときに、調理をしているはずが、気づくとカメラを構えていることもあります」
「料理をする時も野菜の美しさを出来るだけいかして、それぞれが一番輝くように。
味はもちろんですし、 “花をいけるような感覚” で盛り付けようと心がけています」
最近こちらのお部屋に引っ越されたのですか。
「2018年に引っ越してきました。それから暮らしに植物を取り入れるようになりましたね。
この家に決めた一番の決め手は天窓があったこと。光が綺麗にまわっていると自然と植物を飾りたくなります。
以前買ったものの、うまく飾れていなかったモビールも、やっと居場所を見つけた気がしました。
イベントでほとんど外に出ている日々なので、休みの日は家でのんびり過ごします。
とにかく今の家がお気に入りで、友人を呼んでご飯を食べたり、映画を見たり、旅先でコツコツ集めた宝物を愛でたりしています」
花を飾る際に具体的なイメージを思い描くことはありますか。
「インドでの花のあり方を思い出して参考にすることもありますね。
毎年旅を続けているインドでは花が暮らしになくてはならない存在。日常的に祈りの花が溢れています。
あとは、お気に入りの本を眺めることもありますよ。
好きなのは、Terri Weifenbachの花の写真集〈the may sun〉やインドの瞑想の本など。
瞑想はしませんが、花をモチーフとした装丁が素敵なんです。
骨董屋に古い花器や水差しを探しに行くのも楽しみの一つで、気づいたら花瓶ばかり集めています」
特に好きな花はありますか。
「やっぱり、インドの花が好きです。
南インドはジャスミンの産地で、女性は髪に生花を飾ります。彼女たちとすれ違う時にジャスミンがふわっと香ること、祈りで使う薔薇の香り、溢れるマリーゴールドの彩りなど、旅の記憶にはいつも花の景色が浮かびますね。
他にはラナンキュラスも。花びらの幾重にも重なる様が美しくて大好きな花の一つです」
植物を育てる際に気をつけていることはありますか。
「働いていた飲食店のママが、毎日花を活けていて『連休明けは花が枯れるのが早い、見てあげないと花も元気がなくなる』といつも言っていたのが印象に残っています。
なので、なるべく“見る”ように、気持ちを持っていくようにしています。要は愛情ですね」
北村さんは多彩な料理を作ることができる中で、サモサに魅了され続けているのは何故ですか。
「サモサが売られているインドのチャイ小屋が好きなんです。
サモサはインドの道端にあるチャイ小屋で売られている一品。
チャイ小屋は、朝ごはんに、おやつに、バスを待ってる間に、集う人々同士が談笑してさっと過ぎていく、気軽だけど街の大切な場所です。
そんな雰囲気が好きで、私もいつかチャイ小屋をやりたいと思っているので、サモサがチャイ小屋の一品であることはポイントでしたね」
「以前勤めていた菜食料理のカフェのメニューにサモサがあったのも、作り始めるきっかけに。
しばらく前のことですが、半年のインド旅を経て、菜食料理のカフェに2軒合わせて7年ほど働いていました。
最初に勤めた店のメニューにサモサがあったのですが、もともと提供していたのは、私が現地で食べてきたものと違う簡易的なもの。
ちょうどその頃、インド人の友人が日本に滞在することになり、彼にメニューを教えてもらい、本場仕込みのサモサをお店で作るようになりました」
「当時はサモサを知っている人も少なかったので、持ち寄りのごはん会などに持って行ったら評判になり、『マーケットで販売してみたら』と声をかけてもらったのが活動のはじまりです。
未だにサモサを知らない人も多くて大変な時もありますが、リピートしてくれる人がいたり、サモサがインドに行くきっかけになったりと、マニアックな食べ物がじわじわ広がっているのが嬉しくて続けているのだと思います」
北村さんが手がける料理は、その場所や食べる人に馴染む不思議な魅力があると思っていました。
相手のことや四季の巡りを思っているからこそ、あたたかい居場所を感じるお料理を作ることができるのでしょう。
うかがった人
Samosa wala Timoke
季節の巡りに沿った旬の野菜や豆を使ったインドのスナック・サモサの出店販売やスパイス料理のケータリングをしています。
野菜の素材の味を大切に、スパイスはほんのり優しく、彩り豊かな料理をお届けします。
https://www.instagram.com/samosawalatimoke/
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この記事のライター
Yu
趣味は見ることと食べること。 アート/民藝/工芸/古いもの、食、ナチュラルケアやセラピーに興味があります。 美術大学卒業後、プロダクトの企画や暮らし周りの編集に携わってきました。