植物生活編集部 植物生活編集部 2019/12/05

片瀬那奈さんのフラワーノート File.05「花を楽しむフラワーアート」




種から芽が出て、茎が伸び、葉をつけ花開く。

植物の生長がそうであるように、花が人の手に届くまでの間にも
たくさんの過程を経て、その時々の育てられかた、扱われかたをされながら
花は季節の美しさを表してくれています。



花が大好きな人は、その過程すべてを見てみたくなってしまいます。
日々「美しさ」を求める人、人々に「楽しさ」をお伝えするプロが、
その花の流れを見てみたら。
どう感じてくれるのでしょうか。



そこで、この連載では、
花、植物の生産から人に届くまでの現場を、女優の片瀬那奈さんとともに巡ります。
数々のドラマやTV番組などマルチに活躍をする片瀬那奈さん。

前回は、サボテンや多肉植物を扱うショップで、寄せ植えを体験した片瀬さん。

File.01 >> 「ラナンキュラスの生産地」青木園芸
File.02 >> 「コチョウランの生産地」座間洋らんセンター
File.03 >> 「植物が生き生きと育つ場所」フルヤプランツ
File.04 >> 「個性あふれるサボテンたちと寄せ植え体験」SABOTEN MISSILE

これまでの連載はこちら



今回、訪れたのは、切り花をメインとして扱う神奈川県横浜市の花店「バランスフラワーショップ」の西澤力さんにフラワーワークについて学ぶことになりました。

もともと、植物に興味を持つようになったきっかけは、映画や舞台のクランクアップや舞台挨拶などでいただく花束だったという片瀬さん、ステンレスの什器で統一された、シンプルでスタイリッシュな店内に入ると、店内の切り花のディスプレーや観葉植物に目がうばれてしまいます。



 

フラワーアートへ目覚め



西澤さん(以下、西澤):「フラワーアートを一緒にやってみようという企画ですが、何かイメージすることはありますか?」

片瀬さん(以下、片瀬):「今回はフラワーアーティストの頭の中を見てみたいという、教えていただくというよりも西澤さんの感覚を盗んでみようという感覚で来ました」

西澤:「僕自身もアートを学んだことがあるわけでなく、花店に勤めている時期があって、日々の業務をやりながら、コンテストに出したり、先人達がやってきたフラワーアートを独学で学んだりして、花の表現というのは、自由でいいんじゃないかなと、いつからか思うようになりました」
片瀬:「それは、もともとお花屋さんになるまえから、表現したいという気持ちがあったのですか?」
西澤:「絵を描くのは好きでしたね」
片瀬:「そういう芽はあったのですね。でも、お花屋さんにいるなかで、だんだんとそういう気持ちになっていったのですか?」
西澤:「そうですね。月刊フローリストやコンテストに出品するときには、店で作るものとは違う表現をできるだけするようになりました。だから、今日私がお伝えすることは、いわゆるフラワーデザインのスクールや華道を習っていた人から見ると、邪道に見える表現もあるかもしれないですね。型にはまっていないものですから」
片瀬:「逆にいうと、自由だからこそ、西澤さんにしかできない表現もあるってことですよね」




季節の花が美しく並んだ切り花のコーナー。花の色が際立つようにディスプレーされています。


片瀬:「花の仕入れなどは、どのように考えてされているのですか?」
西澤:「私たちは、店ではお客様のオーダーありきで、花を仕入れ、制作することがまず基本です。そして、お客様のオーダー以外に、市場でピンときた花を仕入れることが多いですね」
片瀬:「そうなのですね。今の季節(※取材時は晩秋)だと、どんな花がいいのでしょうか?」
西澤:「今の季節だとダリアやケイトウなどがきれいです」
片瀬:「ダリア素敵ですよね、大好きな花です。このガーベラも色がなんとも言えないグラデーションで素敵」



片瀬さんの視線がオレンジ色のガーベラに止まります。


片瀬:「そういえば、控え室にあったバラ、素敵でした!」

実は、西澤さん、今日の仕入れのために市場に行ったところ、まだ流通していないバラを生産者からもらったので、片瀬さんの控え室に飾っていたのです。



片瀬:「バラなんだけど、シャクヤクみたいな雰囲気で、すごく素敵でした」
西澤:「昨日、たまたま群馬の生産者が花市場にいてもらったのですが、このように試作の品種もあって、世に流通しない花も多くあります」

お花屋さんだけしかしらない裏話でも盛り上がります。


 

フラワーアートのインスピレーション


片瀬:「西澤さんがフラワーアート作りをはじめるときは、まず、どこから発想をしていくのですか?」
西澤:「自由な作品作りというのは、どこから発想をはじめていくか、というのは大事なところです。たとえば、並んでいる花の中から選ぶにしても、何を選ぶのか。花の種類なのか、色なのか、季節なのか、それとも器なのかという絞り込みが必要になります」

西澤さんが今日、片瀬さんに用意したあるものを見せます。ステンレスの作業台の上には、大きな二つの蜂の巣。



西澤:「今日は、片瀬さんのためにこれを用意しました。例えば、この蜂の巣は、働き蜂が木をかじり、作り上げた自然素材のものです。僕自身は染めた花やワイヤーなど人工的な加工がされた花よりも、ナチュラルな天然素材が好きです。私のフラワーアートとしては、地球上にあるもの、天然素材で遊ぶというのがまず、ベースにありますし、花屋なので、日々、花を触っています。ただ単に、面白いなという延長線上にあるものなので、特段アートという概念が頭の中にあるわけでもありません。ただ、花とはこうしなくてはいけないという固定観念や先入観を外すことが必要だと思っていますので、今日は、このスズメバチの巣を器とする、ということがひらめきました」

西澤:「蜂の巣に、どんな花をいけたいか、どんな風にしたいか、片瀬さんやってみましょう」
片瀬:「蜂の巣を器に、という発想にまず行きつかないですよね。花飾るなら、花瓶という考えしかなかったです。しかも柔らかいですね!」

わくわくしながら二つの蜂の巣を見つめて、触る片瀬さん。



西澤:「蜂の巣を器と設定して、店内にある花や緑をセレクトして組み合わせてみませんか」

片瀬さんはわくわくした顔で、切り花が並ぶコーナーで素材を選んでいきます。




西澤:「僕が頭の中を整理するときは、目に止まった花をさらっと合わせたり、スケッチをすることもありますね。片瀬さんが花を選ぶ基準はなんですか?」
片瀬:「並んだ花を見て、その時の気分で素直に惹かれたものを選んでいます。ここに並んだ花と蜂の巣を見て、徐々にイメージは浮かびはじめました!」

西澤:「鉢の巣にいけていることを忘れないで、花を選ぶことですね」
片瀬:「蜂の巣だから、穴から考えるのもいいですね。蜂ということからイメージを膨らませて……、蜜を吸う、蜜を集める……。うーん」

西澤:「花から考えていく場合、器から考えていく場合、あとは色とか形ですよね。色を統一させるとか、色をばらけさせるとか、蜂の巣にとっては色、植物の種類、それぞれ何がいいのかと思考をめぐらせます。蜂の巣の特徴を見ながら探していくといいですよ」

片瀬:「蜂の色だと、黄色ですかね。ちょっとイメージと違うかな……。躍動感と野性感を出してシンプルな仕上がりにしたいです」

片瀬さんが数ある花の中から、いちばん好きと選んだのは、白いキングプロテア。



片瀬:「このプロテアがすごく好きで、自宅には何本もドライフラワーにして飾っています」

キングプロテアは南アフリカの国花。個性的で存在感のある大きさの人気の花です。
花をさっと選んでいく片瀬さん。

片瀬:「とにかく、決めるのが早い性格なんです。躍動感と野性味をイメージして、シンプルな感じにしてみます」


西澤さんも並行して、花を選んでいきます。




西澤:「自由すぎて難しいですか?」
片瀬:「自由すぎて楽しいです!」



片瀬:「これを入れてみたいんですよね」
気になったのは、パンパスグラス。輝くような穂が特徴です。




片瀬:「これって元々大きいのですか?」
西澤:「すごく大きいものですよ」

西澤さんがショップのバックヤードから、大きなモンステラや大きなオクラなども出して来ました。



片瀬:「あ、モンステラもいいですね。これはオクラなんですね!」
西澤:「面白いかもしれませんよ。ひとつ大事にしてもらいたのは、やっぱり蜂の巣というイメージですね。それは忘れずに作ってください。蜂のイメージで攻撃的なものでもいいですね」
片瀬:「蜂のイメージは黄色なんだけど、やっぱり白と緑なんですよね。いつも飾るのは、白い花が多いですね」

真剣な眼差しで蜂の巣と向き合う片瀬さん。

片瀬:「すごい、この時間集中できますね」



昔から、アートや物作りが好きで、美術展などにも足を運ぶことが多いという片瀬さん。
女優にならなければ、美術大学へ進学したかったという話などと広がります。
頭の中のイメージを形にしていくけれど、素材が生なので必ずしも思い描いたように仕上がるとは限らないなど、西澤さんがアートワークを手がけるときの話を聞きながら花と向き合います。



ほぼ仕上がりに近いところで、片瀬さんが苦戦したのはメインのキングプロテアの場所。
蜂の巣の底が球面で安定してないこともあり、重心が決まらず、落ち着きません。

そんな片瀬さんに西澤さんが少し手伝います。
ぎゅっとプロテアを挿し直すと、すっきりしました。



片瀬:「やっぱり、プロだなぁ。すごい」

西澤:「僕は蜂に合わせて、オンシジウムというランを合わせました。この黄色いランを蜂に見立てて花を散らしたいなと思いました。実は昔から蜂の巣を使いたくてイメージができていたので、作業的には単調になりますね」



片瀬:「同じ芝居を何度もやるのは難しいことなんですが、花においては、何度も同じ作品を作ってくださいということはできますか?」
西澤:「仕事だとやらざるを得ないですけれど、何度もとなると少し変えていきたいですね」
片瀬:「私も同じことはやりますけれど、少し自分のスパイスを加えていきますね」

分野は異なれど、同じアートという共通項がある二人、クリエイティブな話は尽きません。

西澤:「いけばなの家元の方がおっしゃった言葉で、花には正解はないという言葉があります。ある意味、フラワーアートだとどこでやめるか、ということもないので、やめ時は難しいですね」


二人の作品が仕上がりました。
片瀬さんは白のキングプロテアが中心で、ランの花や根が印象的なシンプルでモダンな作品になりました。




西澤さんは蜂が舞っているかのような華やかさが際立ちます。



今日の感想を伺いました。

片瀬:「フラワーアレンジメントにおいて、花はここにあるべきという固定概念は強かったのですが、西澤さんの蜂の巣を持ってくるという発想が、自由で、自分の仕事にも生かせるなと刺激を受けました。同じものでも見方や使い方を変えることで、新たな発想が生まれる、と思いました。それに花がどれも生き生きとしていて、いいお店だなと思いました。作品は女王蜂のイメージで、女王蜂をみんなが支えているというイメージで仕上げました。色は華やかな花も好きでピンクの花も飾りますが、色を混ぜるよりも、白を中心に飾ることが多いので、今回もその色合いで制作しました」

西澤:「片瀬さんの自分の芯があって、ぶれないところが作品に出ているのもいいですね」








片瀬さんのFlower Noteに、今日のフラワーアートが記されました。

次回のフラワーノートもお楽しみに。


スタイリスト/中井綾子(crêpe) 
ヘア&メイク/窪田健吾
撮影/佐々木智幸
花店コーディネート・文/櫻井純子(Flow) 


衣装協力/
ピアス(右上)¥15,000、ピアス(右下)¥26,000、 ピアス(左)¥10,000、リング(左)¥12,000/e.mリング(右)¥28,000 Kengo Kuma +MA,YU/ ヴァンドームヤマダ 上記すべて税抜き。その他、スタイリスト私物

[ 問い合わせ先 ] 
e.m 表参道店 TEL:03-5785-0760
ヴァンドームヤマダ TEL:03-3470-4061



うかがった花店
BALANCE FLOWER SHOP
神奈川県横浜市中区住吉町2-17
http://www.balanceflowershop.com/

Instagram @___balance________



訪問した人
片瀬那奈 Nana Katase
1981年11月7日生まれ。東京都出身。
instagram@nana_katase

出演情報:
『シューイチ』( NTV系・日曜7:30 - 9:55 )に出演。



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