植物生活編集部 植物生活編集部 2021/02/11

ソラフラワーの素材の歴史|発見からフラワーアレンジメント素材としての開発まで




■ソラフラワーって、一体なに?

どんなアレンジメントができるのかという方はこちらをご覧ください

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ソラフラワーの自然な優しさに偶然出会って

 

最初の出会い


タイのチェンマイで国際花博が開催され、私の協会が日本政府館のブース担当になりました。
当時はプリザーブドフラワーが流行り始めたころで、フラワー装飾にはおもに生花を使用していました。

その時、造花のような小さな花を見る機会がありました。
造花ではないし、どんな素材からできているのだろうかと興味を持ったことがソラフラワーとの出会いの始まりです。



市場に行くと、その花がアロマディフューザーとして使われているのを見ました。
プラスチックや紙などではなく植物素材らしきことは分かりましたが、それ以上の事は皆目分かりませんでした。

そこでチェンマイで大農場を経営している知人の日本人に調査をお願いしました。
その人は京都大学大学院で植物研究していた人で、珍しい植物を探して世界中を旅しているうちにタイに移住され、チェンマイでおもにランなどを栽培することになった方です。



植物の専門家ならこれが何という名前の植物で、どんなところに生えているのか教えてもらえるのではないかと思い、調査をお願いしました。
文献調査でマメ科ツノクサネム属の草本植物と分かりました。

彼の大農場の傍らの池の縁にも、その植物は自生していました。
しかし後で明らかになるソラフラワーの素材とは似ても似つかないものでした。
後にわかったことですが、特別な場所で、特別な育ち方をしないとソラフラワーの素材として使えるようなものにはならなかったのです。

どんな場所で育っているのかどうしても知りたくなりました。

タイ人のネットワークでも調べてもらううちに、アユタヤ近くに住む友人から、それはタイ人が「セノー」と呼んでいる水田に育つ植物であることがわかりました。

アユタヤ地域ではセノーを収穫してディフューザー用の花を作っているという、貴重な情報でした。
一般のタイ人はこのマメ科の植物の先端部分の新芽と、小さな黄色の花を野菜として食べている事も分かりました。

そうなると居ても立ってもいられず、アユタヤに飛びました。
アユタヤの友人はディフューザー用の花を制作している現場に案内してくれて、セノーなる植物と制作過程を見せてくれました。

案内してくれたその人が、その後、私の大切なパートナーになります。
セノーはタイでは、米を作る際に必要な植物だったのです。
今ではタイの奥地にある水田にしか生えていません。
ディフューザーを扱っている大手メーカーでさえ、ソラが実際に生えている場所まで来なかった、と後に言われたくらいです。
 

フラワーアレンジメント用花材に大変身


この小さな白い花は、フラワーアレンジメントに使えると直感しました。
しかし、当時はディフューザー用としてほんの数種類の花しか入手できず、また小さくて脆いのでこのままでは使えないことも分かりました。

はじめ、桂剥きされたシート状のソラ(後日「ソラシート」と名付けました)と、独特の形をした桂剥き用の包丁を手に入れました。

日本に持ち帰り、あれこれと試行錯誤を繰り返し、さまざまな花をデザインしてみました。
ソラのシートを使えば、自由自在にあらゆる花をアレンジできました。
形も色も思いのままに作れるのです。

そして、それらを再びタイに持ち込み、パートナーを通して職人に見せました。
現地の職人の腕は本当に見事なもの。
技術的にレベルが高いので、私が日本でデザインしたさまざまな花も作ることができました。

ただ、問題は大量生産できるほど簡単につくれるものではなかったことです。
そうして新しいソラフラワーの試行錯誤が始まりました。

アユタヤの友人である彼女は自分が住む農村の主婦たちを集めて制作指導を行い、何とか合格品が大量に作れるよう指導しました。
手伝ってくれた人たちは、お金に代わるかもしれない期待と、それ以上に制作自体がおもしろいので、熱心に、私が滞在しているホテルの部屋まで、夜中でもかまわず見せに来てくれました。
修正すべき点もしっかりと指摘しダメ出しも続き、良い物を作れる職人を選び、その花だけを制作してもらうという作業を繰り返し、その花に特化した職人たちを育てることに成功しました。

できあがったソラフラワーは、すべて買い取り、日本においてフラワーアレンジメント用に使い始めました。
また、同時に金型(花びらのそれぞれの形、葉のそれぞれの形など)を作ることから、機械の製造に着手しました。

機械も何度も改良を重ね、常に新しくより良い機械を使用して、美しい物を作り上げています。
材料を職人に支給して美しい手仕事で完成させています。

その後も次々と新しい形の花を創作し、現在、百数十種類にもなりました。
一枚のソラシートから様々な形を創り出せるので、まだまだ新しい花を発表し続けています。


ソラはディフューザーやインテリアとして世界中で普及していますが、それは大量に簡単に作り出せる均一の整った形のデザインばかり。

だからこそ、現地で仕事として成り立っていたとも言えるのですが、しかし、ソラフラワーのもう一つの魅力は手仕事の美しさです。

植物の茎を手で桂剥きするのですから、シートの厚さも均一にはならない。
だからこそ、できあがる花も一つとして同じものはできないのです。



私はそういった一つ一つ異なる美しさを生み出せるところが、植物生まれのソラフラワーの重要なポイントだと思っています。

しかし、タイの職人は世界で雑貨やインテリアとして売れるものにするために、均一に整っているソラフラワーをたくさん作らざるをえない状況にいます。
タイ伝統の美を手にしていながら、それをわざわざ歪めて世界に売り出さざるを得ない、そのような屈折した労働事情に、ソラを通じて気づかされました。



ソラフラワーに関心が芽生えると、ヨーロッパやカナダでは、大きなソラをインテリアとして飾っているホテルやレストランも多いことが分かりました。

ステキだなと思って持ち帰ろうとしても、ドライフラワーのため、鞄の中でパリパリに壊れてしまう。
これが残念で仕方ありませんでした。

この脆さが克服できない限り、フラワーアレンジメント用としては自由に使えません。
今から10~12年ほど前のことです。
ソラフラワーをドライ化するのではなく、柔らかいままプリザーブドフラワーとして保存できる特殊な液体の開発に、さまざまな人の協力を経て成功しました。

私は、生花からプリザーブドフラワーを制作する技術も教えていることもあり、そのための処理液には習熟しておりました。

いろいろと試行錯誤を繰り返して、ついにしっとりしなやかなソラフラワーを創り出すことが出来ました。
この液をソラフラワーのアレンジメントにスプレーすると非常に長持ちすることが証明できました。

また、この液に着色剤を加えると本来白いソラフラワーが様々な、色鮮やかな花に変身しました。
ソラフラワーアレンジメントが新たな世界を切り開いた瞬間でした。

この液はその後セノーカラーとして売り出しました。


タイ発日本デザインのソラフラワー文化を世界へ発信


ソラフラワーはどのような素材とも相性がぴったりです。
プリザーブドやアーティフィシャルフラワーなど花はもちろん、雑貨や布製品、アクセサリーなど。

ソラフラワーズ協会の立ち上げメンバーは、それぞれ違う手法を用いているフラワーデザイナーの先生方に集まっていただきました。

ソラフラワーを核にして、違ったスタイルで花を表現している人たちを結びつけました。

ソラは今後、フラワー業界をも飛び越えて、アクセサリーや服飾、ウェディングアイテム、インテリア、と異なるジャンル・デザイナーへと道を広げていける素材です。

花一つを例にとっても、思い描くデザインを自在に実現してくれます。
フラワーデザイナーではなくても、きっと想像力を刺激されることでしょう。



私たちはソラフラワーズ協会のオリジナルのソラフラワーの普及を目指します。
すでに、ソラフラワーは雑貨やインテリアとして世界に広まっていますが、ひとつの芸術ジャンルとして確立させたい。

そのためには、まずタイの人たちが、自分たちがどれほど素晴らしい芸術をつくりだしているのか知ってほしいと思います。

丁寧に一つ一つ生み出したソラフラワーは味があって、手作りの温もりが込められています。
何よりも大量生産にはない品質の良さが一番の売りです。

ソラフラワーはタイの人たちが愛情を注いでいるお米と一緒に育つ植物。
伝統が息づいているソラフラワーの本当の良さを、私たちだけが世界に向けてPRするのではなく、タイの人たちと一緒に活動して、伝えていきたいと考えています。



そのサポートの一環として、タイの学校だけでなく、孤児院、職業訓練校、養護施設、介護施設などを訪れて、ソラフラワーの作り方やアレンジメントを教える予定です。

タイの人たちが自分の国だけで育つ植物から生まれた、人にも地球にも優しい自然由来の素材を使って、丁寧に何かを作る喜びを一緒に分かち合っていきたいです。

これからも、さまざまな計画をしております。
もしご興味のある方がいらっしゃいましたら、お気軽に声をおかけ下さい。
一度ソラフラワーに触れてみれば、その魅力に引きこまれること間違いありません。



教えてくれた人

網野妙子 Taeko Amino

フラワーデザイナー。厚生労働省フラワー装飾技能士1級、職業訓練指導員。ソラフラワーズ協会会長、プリザービングフラワーズ協会会長、一般社団法人プリザーブドフラワー全国協議会副会長、アーティフィシャルフラワーズ協会代表、MAFD AMINO主宰、トロッケンゲシュテック主宰、一般社団法人ブライダルフラワーコーディネート協議会理事、有限会社アミノ代表取締役。和洋女子大学特別講師など。
8年間のドイツ滞在と池坊で学んだ華道を基礎にヨーロピアンスタイルのフラワーデコレーションを確立。フラワーアレンジの普及に努め、農林水産大臣をはじめ県知事、コロンビア大使館などより多くの表彰を受ける。2016年、世界で初めてのソフトソラフラワーをテーマに17冊目となる本を出版。他著作本多数。
2018年2月、タイにおいて婦人職業庁の長官より、タイの婦人の職業作りに協力を認められ表彰を受ける。
 

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