新しい花の楽しみを伝える「花BOX」
昨年末にスタートしたプロジェクト「花BOX」は、あえて一手間かかる素材の状態で提供することで、より花に触れる喜びを体験してもらいたいという思いを込めた一般消費者向けのECサービスです。
サービスを提供するのは、首都圏主要6市場の商品を簡単に購入できる切り花仕入れサイト「ハナスタ」を運営する株式会社シフラ(以下、シフラ)。
花業界全体を盛り上げたい! という思いから始まったプロジェクトの特徴と背景を、シフラの花グループマネージャーである乙高圭太さんに伺いました。
開発の背景
「この状況をハナスタとして、ただ見ているだけというのはできなかった」というのが花BOXプロジェクトを立ち上げる大きな理由だったとシフラの乙高さんは言います。
コロナ禍の影響で、生産者・市場・小売店を含め花業界全体がかなり縮小していると感じていたそうです。
おうち需要で若干持ち直しはしたものの「園芸やガーデニングに比べるとまだ波は小さい」。
その状況を打破するためにまずは自社で、いまあるソースを使ってなにかできないかと探りました。
そこでFAJ、世田谷花き、第一花き、東京フラワーポート、東日本板橋花き、南関東花きという首都圏6市場で年間4億5000万本・22060品種(2019年度の実績)をネット上で売買するシステムを持つ「ハナスタ」の基盤をもとに、一般消費者に向けたサービスの開発に行き着きました。
それが花BOXです。
花の事業者に向けた仕入れサイト「ハナスタ」
花BOXはギフトではなく、素材に近い“花の束”として花を一般消費者に配送するサービス。
その理由はおもにふたつ。
一つは手間をかけてもらうことで花に触れる喜びを感じてもらうため。
もう一つは小売店などと競合してしまわないため。「もし今後ギフトなどを作るとしたら、プロの方とコラボレーションするなど、技術はプロの方にお願いしたいと思っています」。
目的はあくまでも花の需要の裾野を広げて、業界を盛り上げることにあります。
花BOXが“花に興味を持つきっかけ”の一つになれたらと考えています。
花BOXはこのような箱に入って届きます。
ベースとなる商品の規格はこのオリジナルBOX一種類のみで、季節や用途に応じたテーマに沿って毎回違う組み合わせの花が届くのです。
中身は開けてみてからのお楽しみ。
届くのは、葉落としなど最低限の下処理をした状態の花。誰かにお裾分けしたり、ふんだんに飾ったり、楽しみ方は自由自在。
ぎっしりと花が詰まった花BOX。
届けた花は品種名まで花BOXアカウントのSNSに掲載。なんの花が届いたかきちんとわかるようになっています。
「素材をお届けする形態なので、花屋さん以外の事業者さまが店先で“プチ花屋さん”みたいなものをされたり、カフェの一角でお花を並べて販売していただくなど異業種の事業者さまを介して間接的にお花に触れる機会が広がっていけばうれしい」と、さらなるニーズの開拓にも期待を込められています。
つぼみの状態で届ける
イメージは、一般消費者の代わりに市場で花を買って届けるというものに近いでしょう。
花BOXには季節の旬の花をメインとした「SEASON」や、色から選べる「COLOR」などテーマごとに商品が選べるようになっていて、オーダーが入ってから市場で適した花を仕入れるという流れです。
そして、中にはつぼみの状態で消費者の手元に届くものもあります。
つぼみの状態で届けられることで、咲いてから散っていくまでの移りゆく姿を愛でることができ、より長期間楽しめることにもつながるのです。
「SEASON」は季節ごとの旬の花をメインとしたBOX。
こちらは2月のチューリップのセット¥3,980(税込 送料無料)。
飾り方のイメージもあり、消費者、とくに初心者にとってはありがたい。
色で選ぶシリーズ「COLOR」よりYELLOW ¥3,980(税込 送料無料)。
ビタミンカラーで部屋に明るさを。
たとえばギフトだと届いた状態で華やか……と、すでに花盛りであることが望まれますが、素材に近い“花の束”として提供するからこそ、つぼみから咲かせるという楽しみ方も提案できます。
花の鮮度にもこだわりがあるし、きちんと開花させられるよう切り花栄養剤ももれなく同封しています。
「花BOXを始める前にいろいろヒアリングしたのですが、切り花は持たないなどネガティブな印象を持つ方がとても多くて。つぼみで届けることで開花から散るまで長く楽しんでもらえますし、それによって切り花は持たないという印象も変えていければ」。
実際、日持ちや品質も好評で、リピーターも増加中。
支援できるという付加価値
商品ラインナップは季節感やビジュアルだけではなく、生産者支援や機能性を目的としたものもあります。
1月末にスタートした「BRIDAL ROSE」では、「生産者応援企画」として本来ブライダルで使われる高品質なバラを、一般消費者に向けた花BOXにしています。
今回フィーチャーしたのは神奈川県伊勢原市にある「熊澤ばら園」。
産地レポートもウェブサイト上に掲載されていて、作り手の顔が見えることでよりその産地の思いが伝わってきます。
熊澤ばら園ブライダルローズ(40cm~45cm、約20本入り)4,980円(税込 送料無料)。
熊澤ばら園の産地レポート。伝統を受け継ぐ2代目のこと、力強いバラを育てる「土耕栽培」のことなどが綴られています。
レポートより熊澤ばら園の様子。花BOXのウェブサイトより。
届く品種も明記。この中から生産者のお任せミックスで花BOXが作られる。
また「東北六花」と題した企画では、全農東北プロジェクトとのタイアップし東北の生産者が育てた花を集めた花BOXを用意。
季節によってさまざまな東北産の花を届けています。
東北六花には6本入りの小さいサイズも。
近年「エモ消費」、いわゆるエモーショナル(感情を動かす)な消費活動が注目されていますが、産地応援などの取り組みはそのエモ消費を求める層にとくに響きそう。
「生産者を応援したい」という動機が花への入り口になり、精神的な満足感も高い。
さらに花粉が出ない花など機能的な部分を付加した商品も企画中で、これまで環境や状況が制限されて花を飾ることを諦めていた人々に新しい選択肢を提供する予定です。
現在はテーマごとの販売だが、たとえばお客様に一品目ごとに選んでもらえるような花好きに向けた企画など、今後さらに商品のバリエーションを増やしていく見通し。
株式会社シフラ × 植物生活 BOTANICAL PHOTO AWARD
「花色合わせ、花材合わせ for 花BOXコンテスト」
株式会社シフラ × 植物生活 BOTANICAL PHOTO AWARD 「花色合わせ、花材合わせ for 花BOXコンテスト」では、最優秀賞を獲得したアーティストのデザインが花BOXとして商品化されます。
2021年3月18日(木)締め切り、3月22日(月)に結果発表予定。
応募はこちらから
「花を素材として売るだけでなく、東北六花などの取り組みのように生産者さんと協力したり、いろいろなメーカー・団体さんなどとのタイアップもこれから行っていきたいです。ゆくゆくは花BOXのプロジェクトで集まった一般の消費者と、我々の周囲でつながった業者さまを紐付けていければ、業界を盛り上げることにつながるかなと」。
花業界全体のこれからを見据えた新しい試みは、まだ始まったばかりです。
花BOX
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この記事のライター
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