植物生活編集部 植物生活編集部 3週間前

【週のまんなか、読みたい本】東京の美しいお花屋さん


季節によって入れ替わる花の顔ぶれ、入店した時の香り、 花を家に持ち帰る時の、慎重になる足取り。
お花屋さんで買い物をすると五感の全てが満たされたような気持ちになります。
最近では以前よりも自分のために花を買うことが多くなったという人も多いのではないでしょうか。 街を歩いていると気になるお花屋さんにたくさん出会います。

一見アパレルショップのような内装だったり、カフェのようだったり。
店によって雰囲気 や、並んでいる花の品種や種類も様々です。

色々なお花屋さんが気になってしまう、そんな人にぴったりの本を見つけました。

2020年10月に刊行された、エクスナレッジの『東京の美しいお花屋さん』。
東京にある、26店の素敵なお花屋さんを美しい写真とともに紹介しています。


著者はライターの櫻井純子さん。
櫻井さんは、大学卒業後、花市場に勤めたのち、お花屋さんへ転職。
現在は花の雑誌「フローリスト」などでライターとして仕事をされています。

様々な視点から花業界を見つめてきた櫻井さんに『東京の美しいお花屋さん』の見どころや、制作にまつわるお話を伺いました。




本書を出版しているエクスナレッジからは、『東京の美しい本屋さん』、『東京の美しい洋食屋さん』など「美しい○○屋さん」という書籍が刊行されています。
そのお花屋さん版が企画された際、花業界をよく知っている人として、櫻井さんが著者として選ばれました。
櫻井さんは、お花屋さんや市場など、様々な立ち位置で働いたことがあり、現在はライターとして花の雑誌の仕事もしているということからオファーがあったそうです。


本書では、たくさんのお花屋さんを紹介していますが、どんなところに着目して店をセレクトされたのか気になったので聞いてみると、「ブーケなどの作品を紹介するというよりは、お店そのものの空間を見せたり、インテリアの参考にもなるというコンセプトだったので、写真で見て空間に魅せられるお店という点で選びました」と櫻井さん。

ーー
終日フラワー(代々木上原)/VOICE(神宮前)/Mugihana(渋谷)/ SORCERYDRESSING(恵比寿)/THE LITTLE SHOP OF FLOWERS(原宿)/ FleuristePETITaPETIT(桜新町)/Fleurs de chocolat(用賀)/Duft(松陰神社前) Marmelo(池ノ上)/BIONICPLANTS(都立大学)/flowers NEST(中目黒)/THE DAFFODILS flowershop(学芸大学)/BLOOM&STRIPES(奥沢) /LUFF(清澄白河)/野の花司(銀座)/jardin nostalgique(神楽坂) /小路苑(新宿)/4ひきのねこ(吉祥寺)/MIDORI(大鳥居) /ほか、全26軒を紹介 (出版社PRリリースより)
ーー

「写真については、すごく植物が好きなフォトグラファーと同行させてもらいまして。彼女の視点がいくつも切り取られていて、それがとてもよかったですね」というように、 こだわりを感じる写真がずらり。

女性カメラマンによる視点で、撮影されています。


(写真:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767828107

「写真だけでなく、食器などの日用品を花器として使用した例を紹介するページも注目していただきたいです。例えば野の花司さん、FLOWERS NESTさんなどが生けている色々な器の使い方ですね。シールがついたままの空き瓶にポンと入れたりしています。家に花器がないから花を買わない人もいるかもしれません。ですが、花のプロも、もっとカジュアルに花を生けているということを知ってもらえたらと思います」と櫻井さん。

本書に掲載されている花店「野の花司」の写真には、急須に生けている花もあります。
先が欠けてしまったりして食器としては使えないものを、花器として利用できることを表現されています。

このように、取材をしているうちに新たな発見があり、生まれてきたページも多かったとのこと。

「中目黒にあるfarverでは、よく若いお客様がお洒落な花器を求めて来店されるそうです が、その時に、大きなガラスの花器よりも口が狭い器の方が、花が1本でも2本でも良いので生けやすいですよとアドバイスされていると聞きました」


花器が使いやすくなるようなアイデアも見どころです。
生け方の例を見るだけで、雑貨屋さんなどでも器選びが楽しくなりそうなヒントが掲載されています。

「個人的には、花を生けることをあまり難しく考えて欲しくないんですよね」と櫻井さん。

自身、普段から花は購入しているかとの問いには、直感的に、かわいいと思ったものを買っているということなので、 今の時期におすすめの花を伺いました。

「春なので、バラ、ガーベラなんかは定番ですが、その魅力があふれている時期です。あと、これから旬を迎えるシャクヤクもおすすめです。晩春から初夏だけの楽しみとして記憶にも残る花ですね」



(写真:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767828107


彼女のキャリアは株式会社フラワーオークションジャパンという花市場からスタートしました。
花市場は、生産者から花を出荷してもらうということと、お花屋さんに花を売るという二つの側面があります。
その後お花屋さんに転職し、花を実際に売る立場を経験。

現在「フローリスト」などプロ向けの雑誌のライターとしての仕事をしているなど、花業界に長く密接に関わってきた櫻井さん独自の視点がこの本には盛り込まれています。



「取材先のお花屋さんからすると同業者に近い感覚で接してもらえたのではないかと思います。 例えば、珍しい花入ってるね、など共感しているときです。業界にいた時の知識で、ただ珍しいというだけではなく、仕入れ先で苦労した話まで聞けるのが自分の強みだと思っています。本書 にもお花屋さんのこだわりの生産地や仕入れ先などはできるだけ載せるようにしました」


本書の中では、花屋の在り方の変化についても触れられています。
櫻井さんが働いていた当時のお花屋さんと現在の東京のお花屋さんの違いについては気になります。


「当時はまだ、大半のお店にショーケースがあって、扉が閉ざされていて……、入ると何か買わないと帰れない!という雰囲気のお花屋さんばっかりだったと思うんですよね。今はお花屋さんってわかるような店名を持たなかったりとか、美容院のようだったり、何屋さんだろうというお店が増えたことが、とても大きい変化だと思います」


お花屋さんのコンセプト作りの参考になる記事はあるか聞いてみると、例として、kusakanmuriさんを取り上げてくれました。

本書で紹介されているkusakanmuriさんは、オーガニックハーブティーなども置いているお店です。

「kusakanmuriさんはコンセプトが緑と白でわかりやすく、ほかにも思い切ったチャレンジをしているお花屋さんです。花以外にも、例えばハーブティーなどにも力を入れていて。見て綺麗、体にも良い。植物つながりということで、そういったことにも興味を持つ人も今は増えていますよね」

業界に入りたてのころに感じたのは、花は冠婚葬祭の用途が多かったということ。

花は特別な時のものというイメージから、今は気軽に花を買っていく人が増え、日常に花を飾る人が増えていることを感じる、と櫻井さん。


花の初心者に向けて、道具などを含め、花の手入れのことも本書では紹介しています。
特に、切り花栄養剤をお勧めしています。

「店によって方法は様々ですが、水を腐らせない殺菌効果がある点と、糖が入っていて栄養になるという点で、効果があります。ツヤが出たり、蕾が色づいて咲いたりもします」

花を飾ったあと、こまめに面倒をみられないという人に向けて、櫻井さんは、

「気負わないでいいんですよ笑。 心に余裕があるときに、やるって感じで、と私は思っています。もちろん、毎日水替えして、毎日根元を水切りできるのが一番いいでしょうけど、それだと難しいと思って花を飾るのをやめてしまう人も多いはず。完璧を目指さずに、気軽に楽しんでほしい。心に癒しだけではなく、好きな花が視界に入るだけで、気持ちが上がる、元気になる、とかでいい。本では日々のお手入れ以外にも、水が下がった時に行う深水なども紹介していますが、花の水揚げには焼いたりお湯を使ったりという難しい方法もありますが、そういう方法は載せませんでした。一般の人が花を飾ることへの心理的ハードルをできるだけ、下げたかったのです」

と、気楽に花に臨んでもらうようアドバイスしています。

花市場とお花屋さんのどちらも経験された櫻井さんだからこその視点が盛り込まれた『東京の美しいお花屋さん』
プロが読んでも楽しい見どころがたくさん載っています。

お花屋さんのこだわりの空間が美しい写真を通して感じられ、写真集として楽しむこともできる本です。

お花屋さん巡りがしたいけれど、なかなかできないという今にもぴったり。
皆様ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。

取材/瀬尾美月 
著者撮影/三浦希衣子 ヘアメイク、着付け/鎌田真理子


『東京の美しいお花屋さん』(櫻井純子著、エクスナレッジ刊)
ISBN-13 : 978-4767828107
https://www.xknowledge.co.jp/

著者
櫻井純子 Junko Sakurai

群馬県安中市出身。琉球大学農学部生産環境学科卒業。株式会社フラワーオークションジャパン(東京都中央卸売市場大田市場花き部)にて生花の営業に配属されたことから、花の世界に。その後、青山フラワーマーケット(株式会社パーク・コーポレーション)にて、仕入れ、 商品企画、教育などに携わる。現在は独立し、花を軸とした雑誌、書籍の執筆、編集ならび に生産地、企業のPR、営業代行などを行っている。
https://www.audax.co.jp
 

あわせて読みたい、お花屋さんのインタビューまとめ記事

>>お花屋さんインタビュー 事業展開を聞いてきた

>>お花屋さんインタビュー お店づくり・商品づくりのこだわりを聞いてきた


フラワーデザインで成功する!雑誌フローリストのオンラインサロンができました。1期会員募集



週のまんなか、読みたい本 過去の記事はこちら
  • すてき 1
  • クリップ
  • 埋め込み

この記事をシェアするには埋め込みコードをコピーしてSNSやブログに貼り付けてください。

この記事のライター

植物生活編集部
植物生活編集部

「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。

直近の記事

関連記事