jardin nostalgique jardin nostalgique 2021/11/30

静寂のハマスホイ ストランゲーゼ30番地

こんにちは!jardin nostalgiqueの青江です。
このコラムを書いているのが11月30日。
明日からもう12月がはじまります。

お店では先週からリースレッスンがはじまり、
カットしたり巻き締める針葉樹から
冬の香りがふわりふわりと漂い、
店中が森の中のような深い香りに包まれています。
お越し頂く皆様が、「良い香りー!」と言ってくれて、
嗅覚からもお花屋さんに来たことを楽しんでもらえている様子に嬉しくなる日々です。

今日のコラムでは、先日まで開催していたブーケレッスンのご紹介。
テーマは、
「静寂のハマスホイ ストランゲーゼ30番地」

映画のタイトルのようです・・・

昨年、上野で開催していた
デンマークの画家ハマスホイの絵画展で感じたことをブーケにしてみました。

その展示会は、ハマスホイのみではなく、
たくさんの北欧絵画も展示していたのですが、
記憶に残っているのは、見ていてとても暖かな気持ちや、
ノスタルジックな気分になったことです。

その理由は、市民の生活や、家族の団欒などを描いたものが多く、
幸せな空気感を持った絵画が心に残ったからかと思います。
20世紀前半の北欧では、芸術を支えたのが市民階級だったそうで、
描く内容も、王族貴族や宗教といった、今の自分から遠いものではなく、
逆に、なんだか少し身近な生活感のあるものが多かったようです。

その中でも、ハマスホイの絵画はその題材もとてもユニークで、
「誰もいない部屋」をたくさん描いたことで有名です。

誰もいない部屋は動くものが無いので絵画としては静かな印象なのですが、
その静かさ故に、
間違いなく存在したその空間で過ごしたであろう人々がいたことを想像したり、
ノスタルジックな風情をすみずみに感じたり、
しみじみと思いを馳せることができるような絵画でした。

建物の構造には曲線が少なく、
絵画としてはその中にたくさんの直線が描かれることになるのですが、
モダンアートのようなパキっとした表現にはならず、
直線なのに、柔らかく、空間に馴染んで見えることも面白くて、
さらにそこに時々描かれる人物や食器など、
丸みを帯びたものの存在感が引き立っているように思いました。

色の印象として一言でいうとしたら、「グレイ」。
どの絵画も華やかな色彩は持たず、
ほぼ無彩色の色調の変化のみで描かれているように見えるのでした。
鮮やかではない分、わずかな色調による繊細な光感を感じることができて、
北欧のフェルメールと言われるのも納得なのでした。

ただ、よく見ていくと無彩色のように見えたグレイの中にも
わずかなブラウン、パープル、ブルーなど
様々な色を発見することが出来て、
グレイは色と色を混ぜれば混ぜる程濁ってくる中でできる色彩で、
ちょっとだけ多く入った色彩が顔を見せていることにも気づきます。
全体がグレイトーンなので、
そのわずかな違いにも気付くことができました。
​​​​
今回のレッスンでは、そんなハマスホイが長く気に入って住んでいたという、
ストランゲーゼ30番地のお部屋に飾ったもらって、
描きたくなるブーケ、というご提案でした。

まず、ブーケの色彩はハマスホイの描いたお部屋の色彩に合わせて、
極力グレイのお花に寄せることに。
お花には真っ黒というお花が少ないように
純粋なグレイを探すことは難しく、
ややブラウン味のあるグレイや、
ややパープルなグレイ、
ややグリーンなグレイを集めていると、
自ずとハマスホイの描いたお部屋にマッチする、様々なグレイが集まってきました。

絵画から感じる優しくマットな質感にもこだわってみました。
また、クラシックな印象のブーケにしたいなーと思ったので、
シンプルな丸いラウンドのフォルムにまとめることで、
直線的な構造のお部屋の中で、ぐっと引き立ってくれるような曲線の存在感を出せたらと
勝手にハマスホイに描いてもらう気まんまんで作成してみました。

1本だけ忍ばせた、つや感のあるダイヤモンドリリー。
マットな花の中で静かに光る存在感に、
ハマスホイのお部屋に差し込むちょっとした光感を託して。

今回、染めたカーネーションも使ってみましたが、
墨色の色素を吸ったかのような特殊な印象のカーネーションも、
このブーケの中では他のお花と仲良く存在してくれました。


ハマスホイの展示会を見て、この感動をブーケにしたい!と思ったのが
昨年の2月頃ですが、
春のお花がたくさん出回り、気分的にもウキウキする時期だったので、
「今ではないなー。冬に開催したい!」
と、その年の冬の開催をワクワクしていたわりに、
その冬にはすっかり忘れてしまっていたという裏話もありつつ。。。

1年経った今年の冬気分の今、開催できて、
しかも表現にピッタリなお花や葉物を見つけられたことは、
昨年うっかり忘れていたこともなんだかお花とのご縁かなーと、
良いように解釈しています。

天国のハマスホイも、まさか自分の絵画がブーケの題材になって
空想の中とはいえ勝手にお部屋に花を活けられているとは
さぞびっくりしていることと思いますが、
どうか暖かく見守ってくれているといいな、と思うレッスンなのでした。
















 
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この記事のライター

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ジャルダン ノスタルジック、2012年にオープンした東京・神楽坂にあるフローリストの青江、フローリスト/パティシエの加藤が経営する花店。おもちゃ箱をひっくりかえしたような、懐かしくてわくわくするお店づくりをコンセプトにした店内には、青江・加藤が選んだ季節の花とともに、焼き菓子、ハーブティーや花器、フランスのブロカントなどの雑貨が所狭しと並んでいる。土日の15時からは店内の一角でカフェも営業中。

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