食・空間プロデューサーに学ぶ老舗旅館での花あしらい
客室で軽い食前酒とアペリティフをいただくイメージのテーブルセッティング。
風景の彩りを生かして
食・空間プロデューサーの山本侑貴子さんによる
老舗温泉旅館での花のコーディネイトを紹介します。
自然の彩りを味方につけた花あしらいのコツ、
自宅でもぜひ参考にしてください。
紅葉を愛でながら
部屋で食事を楽しめるようにと大きめのテーブルが置かれた空間に、
2人用のセッティングを用意しました。
木工作家によって手掛けられた木のテーブルの風合いを生かすため、
テーブルクロスやマットを敷かずにコーディネート。
自然を感じさせる雰囲気を作り、ここに紅葉や常緑樹のグリーンなど、
庭の中にある色を花とテーブルアイテムに落とし込みました。
花器、皿、グラス、箸置きはすべて、
現代的な要素が取り込まれた日本の作家の作品からセレクト。
素材の質感やぬくもりを生かし、世界感を統一しています。
重厚感が魅力的な益子の陶芸家による花器を使用。
手びねりで作られた素朴でシンプルな形と
自然を感じさせる風合いから選びました。
花は庭の紅葉の色にリンクさせた色みのキクをチョイスし、
紫とピンクで明るさを出しています。
現代アートが壁に掛かる空間に合わせ、
色を強調するようにマスにアレンジ。
キイチゴ‘ベビーハンズ’で動きを出して。
ナプキンと箸は紅葉の赤、
箸置きと ナプキンにあしらったキイチゴの葉は常緑樹の緑と、
庭から拾った色でコントラストをつけました。
自然の中で月見酒
日常から離れた自然の中で、
時間を忘れて月を眺めながら一献かたむける。
そんなぜいたくなひとときを楽しむための席をしつらえました。
月見酒用に作られたテーブルを
部屋のテラスに出してセッティング。
庭で集めたススキとノギク、葉物を、
瓶子型の花器にのびやかに生け、お月見の気分を演出しています。
キクの黄色は月のイメージから選択。
素朴な中にも、現代的な印象の作家ものの酒器を揃えることで、
洗練された雰囲気が生まれます。
柔らかな印象の白磁の面取り花器を使用。
お月見のイメージでススキとグリーンを高く生け、ノギクで足元を締めています。
深まる秋のティータイム
庭のテーブルにティーセットを用意して、
紅葉を愛でながらのティータイムはいかが。
ポイントはテーブルに掛けた黒いテーブルクロス。
紅葉と常緑樹の色彩を生かし引き立てると同時に、
都会的でモダンなニュアンスが加わります。
ここに白いカップ&ソーサーとプレートを置くことで、
紅葉の色をさらに際立たせました。
花は鮮やかに色づいたモミジの枝を益子焼の花器に生けるのみ。
余分なものを削ぎ落とし、自然の美しさを見せるコーディネートです。
制作と解説
山本侑貴子 Yukiko Yamamoto
プロフィール:食・空間プロデューサー。食空間や新しいライフスタイルを提案する「dining&style」代表。テレビや雑誌で活躍のほか、店舗プロデュースや講演、セミナーも手がける。著書に『わたしのおもてなし』(アスペクト)、『初めてのおもてなしレッスン』『テーブルコーディネートのプロが教える 素敵なおもてなし厳選アイテム80』(以上講談社)ほか。
http://diningandstyle.com/
撮影・器協力:板室温泉 大黒屋 栃木県那須塩原市板室856番地
http://www.itamuro-daikokuya.com
BOOK おもてなしテーブルコーディネート 花と色の空間演出
山本侑貴子著 誠文堂新光社刊 A4変型判
112頁 オールカラー 定価:本体価格2,500円+税
花と色をテーマにした、美しくモダンなテーブルコーディネートの アイデア集。花を使った演出方法、花と色とテーブルアイテムの 合わせ方など、テーブルを彩るコツを詳細に解説。掲載作例25点。
text&photo 月刊フローリスト 撮影/山家 学
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この記事のライター
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