植物生活編集部 植物生活編集部 50ヶ月前

麦畑に囲まれた 花農園 ~レ・ジャルダン・ドゥ・ラ・シェライユ~[フランス]

秋は葉ものや実ものが美しい季節

日々色を変えていくビバーナムの葉やオレンジ色に染まっていくバラの実。
世界は知らない間に赤や黄色、赤茶、
オレンジのグラデーションに染まっていきます。
野生的で伸びやかな枝葉、そこにいつも主役の顔をしているバラが、
この季節だけはと、どこか控えめに寄り添います。
散歩中に出会うその植物たちの姿がとても美しく、
ふと立ち止まり“ブーケにしたい”、という思いが湧き上がります。
“素”の良さを大切にしたナチュラルなブーケ、
出発はいつも花々との出会い、
そしてこのような衝動から始まります。

パリ近郊、ランブイエの森の近くにある小さな村、シェライユ。
私が、8年間パリの花店で勤務後、
自然を身近に感じる生活を求めてここに移住して、はや9年が経ちました。
麦畑に囲まれた花農園
“レ・ジャルダン・ドゥ・ラ・シェライユ(Les Jardins de La Chéraille)。
農園というより広大な庭。そこには自然のリズムのまま育てられた、
自由で、奔放に育った数々の植物があります。
 
レッスンで使う花材はすべてこの庭から切り出したもの。
散歩しながら花木を採集しブーケを作ることは、
私にとってとても大切なことなのです。
大地に咲き乱れるコスモス、見事な枝振りの桜、
たわわに実るブラックベリー。
植物の持つ生命力そして、
不規則な枝振りでありながら全体で調和のとれた大木の美しさや草木が作り出す陰影。
そんな柔らかい美しさがダイレクトに感じられるからです。
 
生活のすぐそばにある自然。
庭に立つといつでもどこでも、何かが動いているのが分かります。
その姿はフィトラカ(ヨウシュヤマゴボウ)によく現れています。
私の大好きな花のひとつ。
ぞんざいに扱われがちなこの素材ですが、
しなやかで、どの部分をとっても動きがあります。
これを使えば、たちまち風が通り抜け、ブーケに動きが出てくるのです。
 
原点である「野に咲いている花を見て、それを素直に感じること。
生命力あふれる素材を見つけ、その良さをなるべくあるがままに束ねること」、
それがナチュラルなブーケを作るいちばんの近道だと思います。
私のレッスンでは、3ヘクタールにわたる庭の案内・散策から始めます。
花木だけではなく野菜や果樹木などが混在するこの庭にある植物の説明、
素材の良さを生かしたブーケを作る秘訣などを話しながら、
使う花材を自らの手で切り出します。
ここに訪れる人は皆、花が好きな人たちですので、
足がたびたび止まり、話が弾み、寄り道もしばしば。
戻るころには顔がほころび楽しむ様子が伺えます。
こうして1時間ほど庭でしっかりと花と向き合えば、
自然に、花を束ねる心と体の準備もでき上がるのです。
 
露地で自然のリズムのまま育っている植物なので、
ここにはアジサイやバラが1年中あるわけではありません。
季節を迎え、その時に美しいものだけを束ねます。
花が豊富な初夏。
でも今日使ったライラックが1週間後には終わってしまうこともあります。
まだまだ庭が寂しい3月、その時期に咲くクリスマスローズ。
この花に出会えるのはこの時期だけ。ある季節にある場所で出会った花々。
「ああ、何て美しいんだ……」と立ち止まったり、見ていると優しい気持ちになったり。
「またこの花に廻り会えた」とその季節を愛でたり。
その時々のそれぞれの想いを誰かと共感したいと、
私は花を束ねているのだと思います。
ある時はその気持ちをそのまま持ち帰りたくなった自分自身のために……。
 
“庭”は自然の恵みの宝庫。
何に出会うのかわからない楽しさと喜び。
そこで花を束ねるのは本当に楽しいことです。















教えてくれたフローリスト
西田啓子 Keiko Nshida
プロフィール:大阪出身。パリで愛されているナチュラルなスタイルの花のレッスンを提案。 1991年渡仏、Lieu dit などParisのフロ-リストで研修。 99年よりAtelier Vertumneにて8年間勤務。ブティック、Abonnement、ウエディングなどさまざまな分野を担当。2007年、自然をより身近に感じる生活を求めてパリ近郊の花農園 Les jardins de laCherailleに移住、花に携わる。 スロ-ライフの中で見出した花の原点をテ-マにレッスンを行っている。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/
 
 
インフォメーション
シェライユでの花のレッスン
Le cours de Keiko Nishida aux jardins de La Chéraille
パリ近郊ランブイエにて自然のリズムと共に行う花のレッスン。花・植物・人との出会いを大切にする一期一会のレッスンがテ-マ。ブーケを作るだけではなく、咲いている木花を感じ、花に素直に向き合ることができる。随時予約制(冬季は休み)
 
text&photo 月刊フローリスト 
 
 

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