植物生活編集部 植物生活編集部 48ヶ月前

花店インタビュー|独立10年でカフェ型店舗もOPEN、地域と繋がる花屋経営|アトリエモモ

Atelier Momo アトリエモモ


2012年フローリストレビューファイナリストである木村聡美さんは
2011年に「アトリエモモ」として山形県山形市で活動をスタート。
独立2年目には友人の山口瞳子さんも参画し、現在は2人のユニットに。
現在はアトリエでのレッスンや出張ワークショップ、
ウェディング、マルシェなどへの出店、花育、
そして母校での講師など仕事の範囲は多岐にわたります。
都心とはまた違う花の生産県でもある山形県で活動を続ける木村さんの、
独立からの10年間の軌跡をたどります。
 

人の縁が仕事につながってきた!

木村さんの故郷は茨城県、日本画を学ぶための大学進学で山形へやってきました。
在学中にアルバイトとして、花店に勤務。
卒業後は大学院進学費用を稼ぐために、そのまま正社員になりました。
ウェディング中心の業務に携わり、制作、
仕入れや打ち合わせなど若手ながら任されすべての業務に関わっていたそうです。
 
大学院進学ではなく独立を考えたとき、
外で動き回りたいという自身の性格と人の顔を覚えるのが不得意であることから、
ショップを持つという選択肢はなかったといいます。
「最初は絵を描いたりと、花に関わらず創作活動のために独立したいという思いが強く、
花の仕事ではお金を稼げたらいいなぁ、という程度の気持ちだった」と振り返ります。
けれど地元のフローリストや生産者と触れ合う中で
花の仕事に対して気持ちがどんどん強くなったそう。
花の生産現場にも足を運び、話を聞き、現場を見ることで、
彼らの思いを伝えたいと強く思うように変化しました。
 

絵画のように空間を可憐に彩る


手作りの額とキャンバスを使った作品。
フォルムが個性的なリューカデンドロンを中心に、
個性的な質感の素材を組み合わせ、
見惚れてしまう世界観を作り出しました。
壁に立て掛けても、横置きでも楽しめ、
見る角度による表情の違いも楽しめます。
キャンバスの中心をくり抜き
フローラルフォームを埋め込んで制作しているそう。
 

FLOWER & GREEN

○リューカデンドロン ‘サファリサンセット’
○キク
○クルクマ
○オキシペタルム ‘ホワイトスター’
○ビバーナム・ティナス
○エケベリア
○カリフラワー ‘ロマネスコ’
○アイビー
○ミスカンサス
○アイスランドモス
○チランジア ‘ウスネオイデス’
 
 
「山形には熱い人が多いんです」と笑う木村さん。
とはいえ、1年目は思うように稼ぐことができず、
故郷の茨城に戻ろうかと悩んだ時期もあったそうです。
けれども地元に戻っても同じだと思い直し、
アルバイトやイベントでの出会いの一つひとつを大切にしてきたことで、
仕事のチャンスが巡ってきました。
花育活動は稼ぐという観点では難しい分野ですが、
需要に合わせたスポンサーを見つけることで、依頼をこなしているそうです。
現在の売り上げの割合はウェディング4割、レッスン3割、
オーダーギフトやマルシェ、ディスプレーなどで2割。
2年前からは、幼いころから習い免状も持っている華道を、
改めて習いはじめました。
ベテランの70歳の先生にはいけばなだけでなく、
所作、季節のおもてなしなど学ぶことは多いそう。
引き出しを増やすためにも自身が学ぶことを続けています。
地に足がついた地道な活動の積み重ねと強い思いで、
これからも山形の地でアトリエモモは活動を続けていきます。
 

一軒家をリノベーションしたアトリエ

築45年を超える木造住宅をリノベーションした一軒家の1階(3部屋で約40畳程度)が
アトリエモモの仕事場。
吹き抜けの天井にガラス窓が印象的。
暖かい季節は降り注ぐ日の光が気持ち良い。
「でも冬はすっごく寒いですよ」と木村さん。
ゆったりとした時間が流れる空間は花と向き合うにはぴったり。
 

玄関からすぐの部屋は10畳ほどのレッスンスペース。
体験レッスンやイベントレッスンをはじめ、
マンツーマンのマンスリーレッスンが行われています。
レッスンの担当は木村さん。
 

レッスンスペースの奥は花材が並ぶスペース。
一番奥の和室には資材やパソコンなどを置いているそうです。
 
 

アトリエには来た人を和ませるような遊び心たっぷりのディスプレーも。
 
 



マルシェなどで販売している手作りのプランツハンギング。山口さんが制作を担当。
 

アトリエモモの人気者もやしちゃん。木村さんがシェアハウスで独立したころからの仲。
 

Atelier Momo’s chronology

2011年 3月 独立!


花店勤務時代にシェアハウスの自室でアトリエ立ち上げ。
3月11日の東日本大震災後に退職。
花店の先輩に山形でフリーランスで活動している
佐藤大成さんを紹介されたことも独立へ背中を押してくれました。
仕事場はかつての旅館をリノベーションしたシェアハウスで、
住居と一緒の個室は約6畳程度。
家賃は山形でも格安の物件。
同居者にはクリエーターとしてフリーランスで活動中の人が多く、
自身の独立心と創作活動への意欲を刺激され
「早く独立しなくては」という焦りが生まれたことも。
初めての仕事は日本料理店の生け込みでした。


開業一年目の苦労話

 開業当初から、SNSを活用して集客していました。
最初は週に数件しか、レッスンの予約がないこともあり、集客には苦労していました。
でも、不思議と心は折れませんでした。
正確には折れる暇さえなかった。
アルバイトしながら、イベント企画、準備など、忙しくしていました。
徐々にお客さんが付き始めたのは、「ワークショップ」という言葉が一般化していなかったころから、
「フラワーレッスン」ではなく、敷居の低そうな「ワークショップ」と呼んでいたのが良かったのかもしれません。
 

2011年 4月 テレビ番組の装花を担当

番組スポンサーの人とのご縁で、
ローカルテレビの情報番組のスタジオ装花を手がけました。
 
 

2011年 5月 花育活動スタート

アトリエからほど近い旧小学校校舎を使った公共施設の1室を借り、
約1年間花育ワークショップを開催しました。
 
 

2011年 12月 花集団floRe(ふらり)スタート!

山形県内の花生産者と花店、アーティストでパフォーマンスユニットを結成。
県内を中心に花の魅力を伝えるイベントを開催。
花を作る熱い思いを持つ人々との出会いで、
花に対する思いが大きく変わっていきました。
 

2012年 6月 フローリストレビュー出場


表参道ヒルズで開催されたフローリストレビュー2012のファイナリストに選出。
左端が木村さん。この頃はまだ生活が安定せずにアルバイトを2つ掛け持ちしていました。
東京までの高速代の捻出をためらい、軽自動車で10時間かけて上京。
大勢の前に立つ経験はこれが初めてで、緊張しすぎて当日はあっという間でした。
 
 

2012年 7月 花の力プロジェクト参加

宮城県石巻市へ。震災後は花に限らずさまざまなボランティア活動に参加しました。
 

2012年 10月 アトリエ移転と2人体制


アトリエをシェアハウスから、賃貸で探した現在の一軒家に移転。
大学の同窓である山口瞳子さんが東京から戻り、2人体制に。
山口さんは、在学中に花に魅力を感じ、卒業後に東京の花の専門学校へ進学。
都内でウェディングの花の仕事に携わってから、山形に戻ってきました。
2人体制になったことで、仕事の幅が大きく広がり、アトリエ2階が2人の住居に。
木村さんは掛け持ちアルバイトの1つを辞めました。
 

二人で開業する人へのアドバイス

お互いに依存し過ぎない関係の方が良いのかもしれません。
私たちの場合は、「ちょっとユニットを組んでいる」くらいの感覚でした。
書面でお互い契約関係はく、報酬面もお互い利益が出たら貰おうね、という感覚です。
それでも大きなトラブルはありません。
上手く行くアドバイスとしては、お互いがお互いの性格をきちんと把握していることだと思います。
 

2013年 1月 ウェディングの専属契約


上山温泉にある歴史ある名月荘という旅館とウェディングの契約を結び、ウェディング装花を請けます。
 

2013年 3月 マルシェに初出店と結婚


地元の農産品やハンドメイド作品などを販売するマルシェに週末に出店をはじめ、
現在もウェディングのない週末には各地へ出店、
生花や植物の販売以外にワークショップなども行っています。
プライベートでは木村さんは結婚。
夫婦でアトリエの2階に住むことになりました。
 

2013年 4月 東北芸術工科大学にてファシリテーター

母校である東北芸術工科大学の教養ゼミにて2015年までファシリテーターを務めるように。
翌年には日本画コースの特別講師も務めました。
 

2013年 5月 老舗和菓子店と母の日ワークショップコラボレーション




山形銘菓である乃し梅などを販売している老舗和菓子店「乃し梅本舗 佐藤屋」と
母の日ワークショップをコラボレーション。
イベントで8代目の若旦那を紹介されたことが縁で、木村さんが企画書を持ち込み、実現しました。
以降毎年開催しています。
 
 

2013年 8月 やっと本業1本に

長く働いていたアルバイトを辞めることを決断。
「アルバイトをする時間があったら、営業に行こう!」そう心を決めました。
 
 

2014年 1月 定期レッスンスタート


本格的にアトリエでのマンスリーレッスンをスタート。
出張レッスンやワークショップも行っています。
現在ではウェディングとともに収入の大きな柱として育っています。
 
 

2015年 6月 母校にて非常勤講師


東北芸術工科大学総合美術コースの短期講師を務めます(2016年度も開講)。
前期の講義を担当。大学でも花の講義は初の試み。
美大生はどうしても花を作品制作のパーツとして思いがちなところがあるのですが、
それを生産現場の実態や思いを伝えることで、生き物としての花であることを伝えたり、
いけばな、アレンジメントの制作など幅広く指導しています。

お花は生き物なので、作って終わりではなく、花の命が尽きるまでが作品であると教えました。
また、素材であるお花を作っている、生産者へも、学生みんなと話を聞きに行ったりもしました。
作り手の思いを、作品に込めるためです。
 

2016年 7月 5周年イベントを開催

アトリエモモ設立5周年イベント開催。自身の作品展示だけでなく、
レッスンを受けている生徒の作品展示も行った2日間。
開催前日にはオープニングイベントとして花育ワークショップも開催。
 
 

5周年イベントを開催

7月には山形県郷土館「文翔館」にて5周年記念イベントを開催。
大正初期の洋風建築の貴重な遺構として国の重要文化財に指定されている文翔館を借り、
「時間の花」というテーマで開催。
オープニングイベントと2日間の展示会で来場者は250名を超えました。
 

生徒の作品展示は初めてというアトリエモモ。今回の展示会で初めて作品を発表するという生徒も多かったそうです。
 
 



オープニングイベントの花育ワークショップ。
最初は緊張していた子供たちも時間が経つにつれ、すっかり夢中に。
ワークショップででき上がった作品は展示会場に飾られ、
生花は子供たちが自宅に持ち帰りました。
 

2017年  店舗の営業をスタート

お花屋さんを出店してみないかというお話が、地域のつながりでもともと相談を受けていました。
また、元保育士の生徒さんが、スタッフとしても働けるというタイミングも重なりました。
結果的に、出店ではなく、自分たちのアトリエを改装し、元生徒さんをスタッフに、
日・月・火の週三日のスタイルで、店舗営業を開始しました。
ずっと続けている、花育を広げる拠点になっています。

お花は1本から買いやすくしています。
また、最後はドライフラワーにしますので、ロスは少ないほうではないかと思っています。


店舗


2018年 お花屋さんだけが出店するマルシェも主宰

2018年は、新しいスタイルのマルシェも開催しました。
花屋だけで7店舗が出店しているマルシェです。その名も「フラワーピクニック」と言います。

山形にも素敵な花屋が沢山あって、それぞれ個性があること、自分のライフスタイルに合わせて植物の取り入れ方を変えていけること、をより多くの人に知ってほしかったというのが花屋だけのマルシェの開催理由です。お客様も、行ってみたかった花屋や知らなかった花屋があって、とても楽しかったと言ってもらえました。
マルシェ


2019年 花育のイベントを開催

2019年は、2011年ころから続けている花育のイベントをしました。
子供たちのお花を飾り、お菓子も食べたりするイベントです。
1年間通して行ってきた花育クラスの発表会的な位置づけです。
10クラスほどあるクラスが一堂に会して、特別な一日になればと企画しました

花育マルシェ


2020年 コロナの影響は一時的で、結果的にあらたなトライも始まりました

結婚式の中止や、教室の自粛などで、一時的には経営が苦しく成るタイミングも、もちろんありました。
でも、新しいスタイルのリモート結婚式や、野外での結婚式など、新しい提案が必要な仕事に変化しました。
お家時間の癒しで、お花はやはり欠かせません。夏ぐらいには、ホームユースでの消費も増えてきました。

野外ウエディング


2021年 カフェを併設した2店舗目をオープン!

花屋の屋号「モモ」は、ヒャエル・エンデ著『モモ』から付けた店名です。
ひっそりと、でも確かにひつようとされる少女モモの様に、隠れ家的なイメージでお店を作りました。
花も買える、季節を感じるお庭がある、そんなお店です。
カフェとしての特徴は、日本茶と和菓子が楽しめることです。
日本茶の産地は石巻市桃生町。モモがつく地名で、茶畑としては日本最北の希少なお茶の産地の茶葉を使用しています。
石巻市はガーベラの生産地でもあり、ガーベラ農家さんに紹介してもらったお茶農家さんから仕入れています。
また和菓子は、学生時代の友達である和菓子職人に頼んで、季節ごとに、オリジナルの和菓子をご提供しています。
カフェを始めたのも、ご提供する商品も、すべて人の縁ですね。
カフェの店名は「花とお茶 鴇色(ときいろ)」と言います。

カフェのインスタグラムはコチラ > https://www.instagram.com/tokiiro_yamagata/

カフェ


集客は、無理な広告などはしないことがポリシーです

普段はSNSの投稿を心掛けています。なるべく週1,2回は投稿するように。
最近は、ストーリーズという投稿方法で、更新しています。
また、2020年はYouTubeも始めました。
レッスン動画ではなく、コンセプトムービーを作ってみました。
SNSもYouTubeも、もちろん集客につながればよいですが表現の一つとして投稿している感覚です。

また、メディアの取材が来た場合、無理にお受けしないようにもしています。
無理に一時的な集客があってもリズムが乱れてしまうからです。
コンセプトを理解しておら得るお客様だからこそ、長く付き合えるお客様になります。
そんなお客様が多く恵まれています。

AtelierMomoのinstagramはコチラ > https://www.instagram.com/momo.mo84/
AtelierMomoのYouTubeはコチラ > https://www.youtube.com/user/ateliermomo


共に働く山口さん。
こちらは昨年、出産を控え大きなお腹でぎりぎりまで働いていたころの様子。
嫁ぎ先は花農家。
花が生まれるために多くの命が殺されるリアルな現場を写真で表現し、
生まれた花とともに追悼。
 
 

展示会での木村さんの作品。現代社会ではさまざまな命の誕生の仕方があります。
人間に限らず花や植物でも同様。どんな方法で命を授かったとしても、どの命も美しく、
尊いという木村さんの思いが花で表現されています。
 
 
お話をうかがったフローリスト
木村聡美  Satomi Kimura
アトリエ:ATELIER MOMO[アトリエ モモ]
https://www.ateliermomo.net
 
text/月刊フローリスト 撮影/志鎌康平 写真提供/Atelier Momo

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この記事のライター

植物生活編集部
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