植物生活編集部 植物生活編集部 63ヶ月前

Botanical TRIP 私の好きな、地元のこと。#01




アーティストがインスピレーションをうける場所。
海外、街、自然、いろんなものごとに刺激を得ながら
創作を形にしていく過程。
その源を探る旅に出てみます。
フラワーアーティストが「自分を作り上げた、地元」をたどる旅。
その名も「ボタニカル・トリップ」
まずは、静岡県出身のフラワーアーティスト
後藤清也さんに地元を旅してもらいます。

 

Botanical TRIP vol.1  

01/静岡県「河津桜」

 

静岡県の第一回目は、春、ということで、観光地として全国的に知られている河津町へ。
サクラの栽培品種であるカワヅザクラ(河津桜)を旅します。
訪れる人、後藤清也さんは、地元の自然に育まれた野生的な作風でフラワーアレンジを作るのが得意なフラワーアーティスト。
毎年春が来るたびに、子どものころから幾度となく眺めて来たこの桜を、
あらためてボタニカルな旅をすることで、何を感じ、何を得るのでしょうか。

 


カワヅザクラ
学名:Prunus lannesiana Wils. cv. Kawazu-zakura


河津町(かわづちょう)は、日本の東海地方東端にある町。
伊豆半島の先端部(南端部)に近い東側地域の一角を占め、太平洋に面しています。
サクラの栽培品種であるカワヅザクラの発祥地として、花見の季節には必ず紹介されています。

カワヅザクラの歴史はおよそ60年あまり。
河津町に住む飯田勝美さん(故人)が原木を1955年(昭和30年)ごろに偶然発見し、
さくらの苗を、現在地に植えたのがきっかけだそうです。
現在でも、伊豆急河津駅から天城山へ向かって1.2kmの地点、
河津町田中の飯田さん宅の庭に唯一の原木が残されています。

河津桜にはことのほか、思い入れのある後藤さんが、
この飯田勝美さんのご子息であり、現在、原木のあるお宅に住んでいる
飯田典延(いいだ・すけのぶ)さんを訪ね、お話を伺いました。
典延さんご自身は、1946年(昭和21年)から地元を離れてしまったそうなので
断片的な記憶ながらも、その思い出や昔の状況を語ってくださいました。



咲き姿と、色。

特徴ある早咲きサクラ。
1975年(昭和50年)には河津町の木に指定されました。 
カワヅサクラは早咲きオオシマザクラ系とヒカンザクラ系の自然交配種と推定されています。
枝ぶりがよく、他のサクラよりも色が鮮やかなピンクというのが特徴です。

飯田さんによれば、ご自宅のある地域の名前から「小峰桜」と呼ばれていた桜が、1966年(昭和41年)1月ごろに初めて開花。
原木の苗を植えた勝美さんは亡くなり、その後に町民有志の手で少しずつ町内に増殖されていったそうです。

典延さんは、毎年見ているこのサクラについて、改めて聞かれるとこう答えました。
「やっぱりほかのサクラより、長く咲くことと、花の色だね」

それに呼応するかのように、後藤さんが頷きます。

「フラワーアレンジメントでは、サクラの切り枝を使うことはありますが、そこで使う品種はソメイヨシノやヒガンザクラ、啓翁桜などです。
この河津桜を使えたら、枝ぶりや色合いが鮮やかなので、いろんな表現ができそうです」




苗は、全国に広がっていく。

寒い時期に色鮮やかな花を着け、枝いっぱい咲くこの花は、
春の訪れをいち早く感じるサクラとして人気があります。
早咲き、ということで、すでに全国に桜を楽しむ祭りが開かれています。
静岡の別の地域だけでなく、
神奈川、千葉、愛知など。


現在の原木が咲いている庭には、密やかに石碑が建っています。
そこには、勝美さんが読んだ句が刻まれています。

築山の小さき峰や寒桜

今、その小さき峰に密やかに咲いていた寒桜は、
地元の有志により河津町に広がり、
さらには愛好家の手によって全国へと広がり、
南は長崎でも、目にするようになりました。

「苗と同じように、切り枝もメジャーになって、
全国のお花屋さんの仕事を楽しませる
素材になる日が来ることを望んでいます」
フラワーアーティストとして、後藤さんはそう語りました。


旅した人
後藤清也 goto seiya
静岡県伊豆河津町出身。幼少期より自然や花に触れ、植物の魅力に惹かれていく。東京・恵比寿のウェディング会社にてパーティ装飾や空間装飾を行う。退社後は芸能活動などを経て2012年にSEIYA Designを設立。国内外にて活動中。





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