春を纏うアロマの「桜のスコーンとローズジャムの薫るお菓子作り」体験[表参道]
焼き菓子を作っているときの、バターの香りがキッチンに充満しているあの感じ。
おいしい小麦粉のお菓子の風味を思い出して、早く食べたくて心が躍ります。
「香り」は本能に訴えると言われています。
それは、五感の中で嗅覚だけが、脳の本能を動かす部分「大脳辺縁系」=海馬に直接情報を伝
えているから。いい香りを嗅げば気分がウキウキし、嫌な香りを嗅げば不愉快になり、思い出
の香りで過去の記憶がよみがえったり、おいしい香りで空腹に気がついたり。
「香り」は食べ物の味をぐっと引き立たせる名脇役。
そんな「香り」を主役にしたお料理教室を主催するのは、アロマブレンダーとして活動するaromateabase主催のtomomiさん。
ご実家は日本料理店のため、「食材の相性」を考えることは自然に身についていったそう。
精油を香料として使うためのレッスンはいつもすぐに満席になるほど大好評ですが、精油だけではなく
ハーブパウダーや抽出液、ときには植物そのものを使って料理の香りを複雑にアレンジしていきます。
「私が伝えたいのは、”香り”という植物の恵みをプラスして、食生活を豊かにすること。つまり『香りをおいしく食べよう!』ということです。香りの使い方を知るだけで、食事がぐーんと楽しくなるんですよ」
と語るtomomiさんの「桜のスコーンとローズジャムの薫るお菓子教室」に参加してきました。
食品添加物としての精油、その使い方とは
”食品の香り付け”といえば、思い浮かべるのはバニラエッセンスやレモン、オレンジオイルなど。
精油の文化が発達しているヨーロッパでは、家庭にある精油を香料として料理に使うことはごく一般的に行われています。
日本でも、商業的に生産される商品では香料として幅広い食品に使われていますが、一般家庭やレストランなどではまだ使っている人は少ないかと思います。
「”精油を食用に使う”というと驚く方が多いのですが、きちんと食品用に育てられたハーブを使い食品工場で作られた精油を適正に使えば、香料として使用することができます。
例えばバニラエッセンス一瓶を一気に飲み干したら『こんなもの食べ物じゃない!』と思うほどひどい味だと思いますが、少量使うことでお菓子に風味がプラスされますよね。精油も同じです。
もちろん飲食可能な精油を選ぶ必要はありますが、食品添加物として製造された精油を適正な濃度で使えば、いつもの食事を素晴らしい体験に演出してくれます」 (tomomiさん)
「精油を安全に香料として使う方法」をしっかりと学ぶレッスンもありますが、今回はお手軽に1日体験のお菓子教室の体験。食用の精油は、tomomiさんが用意してくれたものを使用します。
桜のスコーン作り、スタート!
レッスン会場は、表参道のお料理教室「Cross kitchen」さん。
メニューは春らしい「桜のスコーンとローズストロベリージャム」。
聞いただけでワクワクします!ではさっそくレッスン開始。
Cross kitchenさんでは、材料や道具、さらにエプロンまで用意されています。
何も持たずに参加できるのが嬉しいですね。
まずはスコーン作りから。人数分の桜の塩漬けとローズパウダーが準備されています。
どちらもピンクで、匂い立つような春らしさです。
桜の塩漬けは、塩漬けの原料となる八重桜の産地として名高い神奈川県秦野市のもの。
tomomiさんが直接農家さんから仕入れてきたそう。
塩抜きした桜はほんのり塩気が残って、味のアクセントにもなります。
さて、スコーン作り開始です。
まずは小麦粉にローズパウダーを混ぜ、そして桜を混ぜていきます。
バターが溶けないように手は使わず、フォークを使って、さくさく。
桜と薔薇は同じ「バラ科」で相性がよく、また、焼き菓子の甘い香りにもぴったり。
どの香りがメインになるかによって全く違うイメージになるので、ハーブやお花など”香る素材”の分量が「薫るお菓子」の大事なポイントです。
ローズパウダーを入れる以外は、一般的なスコーンの作り方とほぼ同じ。
牛乳と卵を投入して、バターが溶けないように手早くさっくり混ぜ合わせて、生地を伸ばしてたたんで、伸ばしてたたんで、サクっとした歯触りのスコーン生地に仕上げていきます。
生地が出来上がってきました!
桜の花びらが見えて、うっすらピンクマーブルなスコーン生地。
かわいい。
セルクルで抜いた生地を横から見ると、こんな感じ。
花びらがのぞいているのがわかりますか?
そして、仕上げの桜の花びらを飾ります。
花びらが薄く、ひらひら落ちてしまいがちなので ここでギュっと押し込んでおくのがポイント。
スコーンをつぶさないように注意しながら、ぐいぐい。
形になってきたら、いよいよオーブンへ。
しばらくすると、小麦粉とバターの焼ける香り、そしてほんのり薔薇と桜の香りが漂ってきて、教室がピンク色に染まるようです。
ここでのんびりしてもいられません。
焼けるまでの間に、ローズストロベリージャム作りがスタート。
まずはいちごを煮て。
だんだん水けが出てきました。ジャムは、果物を砂糖で煮詰めることで保存ができるようにするものですが、今回はすぐに食べてしまうので砂糖は少なめに煮詰めていきます。
tomomiさんが用意した精油を希釈したものを入れ、軽く煮詰めてできあがり。
「基本的には、精油は油になじみやすいものと一緒に、植物からの抽出液は水になじみやすいのでハーブティーのように水と一緒に使います。今回は精油を入れたのですが、あらかじめ私がレッスンで使っている方法で希釈したものを使いました」
仕上がったソースは、まるで宝石のようにキラキラと色鮮やか。 これで「薫るストロベリーソース」の完成です。
焼き菓子であるスコーンは香りが控えめなので、ソースは香りが残るように完成の間近に精油を入れ、あまり熱を通さないように。
tomomiさんの手順はサクサクと手早くて、見ていて気持ちいい!
そうしているうちに、最初にオーブンに入れたスコーンが焼きあがりました。
焼き色もいい感じに仕上がっています。
みなさんが2ターン目のスコーンを成形している間に、ローズティーを。 ふんわりとバラの花びらが開いて、優雅なティータイムです。
さて、「桜のスコーンとローズストロベリージャム」、完成です。
どうです、この仕上がり。まるでフレンチのデザートのようにフォトジェニック!
みんなの分が完成したら、8個焼いたうちのひとつで試食会です。
テーブルの上でかしこまっている時は、バターと小麦粉の焼き菓子の香り。 しかし、ひとくち噛み締めてゴクリと喉を通ったあとから、ふんわりとやさしい春の薫りの奥から華やかなバラの薫りが追いかけてきて、時間差でおいしさが二重奏になります。
ふわあぁ、不思議なおいしさ!
残りのスコーンはお持ち帰りに。この教室ではお持ち帰り用のカゴも準備してくれています。 ぎゅうぎゅうにつめて、全部入りました。春を感じるおやつをお家でもいただきます。
「おいしさ」に香りをプラスして、今までにない味わいに
世の中に「おいしい」ものは無数にありますが、「おいしさ」は味覚だけで感じているのではありません。
親が作ってくれたお惣菜や、大切な友人やパートナーと一緒に食べたごはんや、途方もなくおなかがすいたときにやっと口にしたおやつなど、「おいしい」には、その人の人生が詰まっています。 そして香りは、人の本能に密接に関わるもの。
「おいしさ」に「香り」をプラスすることで、人生×本能の、忘れられない鮮烈な思い出が残る味わいとなります。
「食材として考えると、プラスする香りや方法には無数のバリエーションがあります。
先日は『ゼラニウムが薫る』りんごのジャムを作りましたし、ココナッツのアイスクリームにラベンターのソースを合わせてもすごくおいしいし、レモングラスの精油を練りこんだパスタは嚙みしめるたびにレモングラスが薫って最後までおいしく食べられます。
香りは食べ物に混ざっていると拡散にしくいので、ただテーブルに置いてあるだけでは気づきにくいんです。
今日のスコーンもそうですが、香りの素材の形は見えないのに、食べてみて初めてふわっと思いがけない風味が鼻から抜けていく。
それは今までにない驚きがあるでしょう。そういった組み合わせを考えるのも楽しくて」
実は「香り」はまだ解明されていない部分も多い、未知数の分野でもあります。
もっと食と「香り」を結び付け、「新しい調味料」として定着できれば、まったく新しい食文化が生まれることになります。 植物の「精油」やハーブを使ったお料理は、まだまだ広がりがありそうです。
「ただ、そんな難しいことを考えなくても、純粋においしいですからね」 と笑うtomomiさん。
春の薫りをまとって桜のスコーンを食べる皆さんの顔も、皆一様に幸せそうでした。
(取材日:2018年3月25日 文章・イラスト:いしだわかこ)
<次回のtomomiさんのワークショップ詳細はCross Kitchenへ直接問い合わせください>
■Cross Kitchen
東京都港区南青山3-14-4 YTK南青山ビル 1F
TEL:03-6455-4755
FAX:03-6455-4756
営業時間:10時~21時
定休日:不定休
Cross Kitchen URL: https://www.crosskitchen.jp
<tomomiさんの今後の予定はSNSでチェックしてください>
aromateabase
Facebookページ: http:facebook.com/aromateabase/
Shop: https://aromateabase.thebase.in/
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この記事のライター
いしだわかこ
ぬいぐるみデザイナー、少女マンガ家、雑誌編集などを経てフリーランスへ。 編集・ライター、たまにイラストやマンガ、キャラクター制作、パンフレットなどの制作ディレクション、Webサイトのプロデュースなどのお仕事をしています。横浜・鎌倉を拠点にのんびり活動中。 好きなものはミステリーと少女漫画と手工芸。趣味は刺繍。担当書籍「最強のアンチエイジングは腸活だった!/辨野 義己(impress quickbooks)」ほか発売中。