植物生活編集部 植物生活編集部 15ヶ月前

“花のある空間と人間関係のこと” アワー・ボタニカル・トークvol.01 後編



「植物生活」のデザイナーでもあるフクナガコウジが親交のあるクリエイターと、「植物」をテーマに対談する連載。

 幡ヶ谷駅からすぐ、西原商店街にあるコーヒーショップ『PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)』のオーナー、松島大介さんと「植物生活」のデザイナーでもある、フクナガコウジさんによる対談企画の後編をお届け。

後編では、松島さんとフクナガさんの「朝の過ごし方」、そして、花とパドラーズコーヒーをとりまく人間関係にフィーチャーします。

前編はこちら → PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)前編


雨に濡れる木々の表情は、梅雨時の朝の楽しみ。 

フクナガコウジさん(以下、フクナガ):閉店間際とかオープンと同時くらいの早い時間にパトラーズへくると、松っちゃんが一つのテーブルに、店中の花をまとめてるのを見るけど、あれは何をしてるの?


松島大介さん(以下、松島):花瓶の大きさや生けられてる花を見ながら、どこにどれを置くか考えてるんだ。それから各テーブルに配置してみて、離れて見てみたり場所を入れ替えたり、花の向きを変えたりして、空間のバランスを整えてる。

フクナガ:その日の気分や天気によって、配置の仕方が変わったりする松島流のやり方なんだね。Shinoさんの器とディノや他のアーティストの器が混ざってるのも、ある意味松っちゃんにしか出来ない技だよね。(笑)

松島:一番重視してるのは空間全体のバランスだけど、その日のテーマをなんとなく決めてるかな。
例えば雨の日は、いつもより空間が落ち着いて見えるように仕上げたり。花や花瓶のバランスもそうだけど、音楽だったりも同じ。

フクナガ:雨の日は流してるレコードのセレクトもいつもと雰囲気が違うよね。
Peter Broderickをよく流してるイメージが強い。



松島:晴れてる日は、明るいトーンの曲にしたりね。

フクナガ:ブレバタとかね。(笑) 細野さんをよく流してるけど、同じ細野さんの中でも雨の日によく流してるのとそうじゃないのがあるよね。

松島:そうだね、天気によっても変えるし、お客さんの雰囲気とか人数とか、ギャラリースペースで開催されてるイベントのイメージとか、色んなものから店の雰囲気をつくってる。それは花まわりも音楽も境目はなく関わってるよ。



フクナガ:僕としては、梅雨のシーズンがくるのが楽しみ。窓際のカウンター席から見る外のグリーンが濡れて光って、すごいきれいなんだよね。
曇ってて白っぽい朝の光も好きだから、晴れよりも雨の日の方がオープンの7時半に合わせて来ちゃう。
家がパトラーズから近いから雨の日でも気軽に来れるのがうれしい。

入口の大きい桜の木も良いよね。
シンボルツリーがあるって羨ましい環境。




松島:フクナガくんカウンター好きだよね。僕も雨で時間に余裕があるときは窓の外を結構見てるかも。
桜はね、一度枯れちゃったことがあって。
根元の土を大幅に入れ替えて生き返らせたっていう経緯があるから、思い入れがあるんだ。

フクナガ:いつもは入ってすぐのカウンターの隅っこにいるから、ドライばかり目にしてるけどね。(笑)

 

朝起きて、友だちをもてなす感覚で花を飾る。

フクナガ:松っちゃんは朝の時間を大事にしてるよね。
花瓶の置き場所を考えるのも、その日の天気に合わせてレコードを選ぶのも、意識的に時間を作らないとできないことだよね。
僕も意識してるつもりだけど到底及ばない。

松島:そうだね。朝の時間の使い方は僕にとって毎日の大事な習慣になってる。
花に気を配ったりレコードを見立てることで、気持ちに余裕が生まれるというか。
例えば仕事に出かける前、缶コーヒーを慌てて飲むよりも、自分でドリップしたコーヒーを味わった方が、いい気分でその日をスタートできるよね。
自分たちが気持ちよく働いている空間は自然とお客さんも心地よくいられるんじゃないかな。



フクナガ:そういう毎日の積み重ねで、自然と余裕のある人になれたら格好良いよね。
それに花やグリーンの世話をするっていう行動そのものが、ゆとりある人柄を作ってくれると思うし。

松島:余裕のある人になるのが、僕の目標のひとつでもある。あと、パトラーズに来てくれた人をもてなすためにも、いつも状態のいい花を置きたいと思ってる。
お客さんにも言われたりするけど、パトラーズは、僕にとって“家”のような場所。家に遊びに来てくれた友だちを、きれいな花でもてなす感覚っていうのがあるかもしれない。



フクナガ:実際、ここでは松っちゃんの友だちがよく来てて紹介してくれるよね。たまたま居合わせたお客さん同士で、「最近できた、あの店知ってる?」みたいな感じで会話が始まったりして。パトラーズを起点に、人間関係や街のコミュニティが広がってる。

松島:そう言ってもらえると嬉しいね。花を通じて新しい人間関係ができたこともあるよ。

フクナガ:それってつまり?

松島:いつも店の花を生けてくれる『Forager』のチーコさんとは、かれこれ数年の付き合いになるけど、どんどん信頼関係が深まってる。
感覚を尊敬してるし、パドラーズにとって欠かせない存在。



フクナガ:赤い花や白い花、日によって違う花が飾られてるけど、いつも花器や店に合った雰囲気に仕上がってるもんね。

松島:そう。あえて伝えなくても、通じる部分が多いというか。人同士のつながりを作るうえで、毎日表情の違う生花はキーポイントになってるかもしれない。

フクナガ:隣にチーコさんの新しいお店も出来たことだし、これからもっと楽しくなるね。



松島:うん、季節に合わせてワークショップをやったり、花器や植物まわりの道具の展示とかもどんどんやっていきたい。

フクナガ: あ、あとは、 MOBLEY WORKSの鰤岡さんの木の使い方もパドラーズの温かさやお客さん同士が話しやすい雰囲気を作ってるよね。
木材も植物だからね、日常的によく触れる道具で植物を感じれる空間で過ごせるってのは、まさに植物生活。

松島:なるほど、うまいね!(笑)



写真・取材/緒方佳子



うかがった店
「PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)」

住所 東京都渋谷区西原2-26-5
営業時間 7:30~18:00
定休日 月曜日
電話番号 03-5738-7281


フクナガコウジ Kohji Fukunaga

日本のアートディレクター、デザイナー。1985年神奈川県藤沢市出身。2010年武蔵野美術大学卒業後、広告制作や個人事務所勤務を経てフリーランス。現在は宣伝美術をはじめとするデザイン・企画に従事する他、“LOVE ME AND MISO SOUP.”でミソを軸に日本の文化を広める活動を行い、“SOBA”や“PARA BOOK PRESS”においてリトルプレスのプロジェクトを主宰するなど、分野を問わず作品制作を行う。花束は一種類の花だけで良い。近年はフレンチゴムを育てている。左利き。  
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