植物生活編集部 植物生活編集部 2018/04/26

“花器と花から生まれる店づくりのこと”アワー・ボタニカル・トークvol.01



「植物生活」のデザイナーでもあるフクナガコウジが親交のあるクリエイターと、「植物」をテーマに対談する連載がスタート。


本回では、東京・京王線幡ヶ谷駅からすぐ、西原商店街にあるコーヒーショップ『PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)』を営む松島大介さんと日常における花や植物、それらを取り巻く花器や店づくりについてトークします。

“ビンテージや作家モノの花瓶が好き”と話す松島さんのボタニカルトーク。


 花器やコーヒーカップは、気分で決める。


フクナガコウジさん(以下、フクナガ):家が近いこともあってよくパドラーズコーヒーに来てるけど、いつも店内に生花やグリーンがあるのが印象的だよね。

松島大介さん(以下、松島):パドラーズは男性スタッフが多いから、僕の好きな色ってゆうのも言われるけどインテリアが黒や茶色ばかりになっちゃう。
だからどうしても少しカタい印象になりがちだけど、植物を加えるだけで店の雰囲気が明るくなるよね。ドライもあるけど、やっぱり生の花が良いね。



フクナガ:植物を飾るにしても、男だと多肉植物や観葉植物とかいわゆるグリーン系を選びがちなイメージがあるけど、生花を飾ろうと思ったきっかけってあるの?

松島:僕は学生時代を主にアメリカで過ごしたんだけど、現地のコーヒーショップでは普通に各テーブルに花が置かれてるんだよね。それが単純にいいなと思っていて。
目の前に花があるだけで、なんとなく毎日いい気分になれる。
男とか女とかいう意識はなくて自然と空間に溶け込んでるんだよ。



フクナガ:それは良い文化だね。花も良いけど、パドラーズならではって思うとやっぱ花器の良さ、空間に対する細やかなこだわりってところだよね。どれもフォルムや色づかいが特徴的で、かっこいいし面白い。

松島:店の花瓶は、ニューヨークで陶芸家として活動してるShino Takedaさんにオーダーして作ってもらってるんだ。
5年くらい前、コーヒー豆の買い付けでポートランドへ行った時、たまたまShinoさんの陶器を見つけて。
昔からこういうアーティストの一点モノっぽいものが好きだから、パッと見てすごくいいなと思った。

フクナガ:Shinoさんの器って日本にはなかなかない雰囲気があるし、花器として使えるもの、コーヒーカップや食器として使えるものとかどれも一点モノで一見ばらばらだけど、パドラーズでの使い方は不思議と統一されてる。
セレクトが良いんだろうね。

松島:ありがとう。(笑)見つけてすぐにShinoさんにコンタクトをとって、アトリエにも行って。その頃、僕は間借りでコーヒーショップをやったりしてて、まだパドラーズはなかったんだけど、「将来、自分の店にこの花瓶を置きたい」って思ったのを覚えてる。
この店のオープンが現実的になってきた時、Shinoさんに「店のために花瓶とマグカップを作れるだけ作って欲しい!」って頼んだら、ちょうど8つ花瓶が送られてきた。
それを各テーブルに置いたら店の雰囲気がぐっと良くなって。
しかもテーブルの数ともぴったりだったんだ。
僕らが西原の店をオープンしてからは毎年ギャラリースペースで展示販売もしてもらってる。



フクナガ:テーブルごとに花瓶の大きさやフォルムが違ったりするところがパドラーズの味わい深さや楽しみのひとつにもなってるよね。
店全体に松っちゃんらしさがよく出てるというか。おしゃれだけど無機質じゃない、リラックスして過ごせる空間になってると思う。スタッフもお客さんも自然体でいられる雰囲気というか。

ほぼ松っちゃんの家みたいなノリだよね、店づくりの方針が。(笑)




松島:すごい見てるね。(笑)あと、生けられてる花もかなり僕の好みでセレクトされてるね。
でもこれは僕が細かくディレクションしてるわけじゃなくてパトラーズの隣で『Forager』という花屋をやってる、フローリストのチーコさんに活け込みを任せてるんだ。

チーコさんはいつも花瓶に合う甘すぎないテイストに季節の花を活けてくれて。
花と花瓶それぞれが引き立て合うセンスが店に気持ち良いバランスを作ってくれてるんだよね。


フクナガ:みんなのその日の気分次第で店が作られてるってことか。
だからパドラーズって結構な頻度で来てても飽きないんだね。


日常のファッションの一部に花を。


フクナガ:パドラーズにある花器とか花って、お客さんから何か言われたりする?「こだわってるね」とか。

松島:テーブルの花はよく褒められるよ。
「この花瓶、どこで売ってるんですか?」ともよく聞かれるね。
うちは年に一回、花瓶や食器とか普段店で使ってたものを入れ替える“セカンドハンド”ってゆうのをやってるから、一年間店で使ったものをクリスマスの時期にお客さんに販売してるんだよ。

フクナガ:そうなんだ、それは知らなかった。良い仕組みだね。
パドラーズで実際使ってて何度か目にしたものだったら、家で飾るイメージもつきやすいね。
花器を買ったのをきっかけに日常的に花を飾る習慣が身につく人がいたらもっと良いね。

松島:まあね。これから、さらにそういう人が増えるといいかな。





フクナガ:そもそも日本には、日常的に部屋に花を飾る人が少ない気がするんだよね。
特に男の場合、花を買ったり飾ったりすることに対して、まだまだ文化的に感覚が追いついてなくて躊躇してる人が多いと思う。
でも、それってすごくもったいないよね。
花は季節を感じさせてくれるものだし、日常を豊かにしてくれるから、もっと生活に取り入れていいんじゃないかと思う。それが洋花でも日本には四季があるし、季節の花や植物に合わせて花器をセレクトしたりっていうのは日本的だし、風情があるじゃん。日本的な感覚に近いというか。

松島:そうなんだよね。欧米では、花束を抱えて歩いてる男をよく見る。
一般家庭にも、当たり前のように花が飾られてるし。
僕も店に花を飾るようになってから気づいたけど、花を買うっていう行為は、想像以上にテンションが上がる。

フクナガ:若い子も、ゲームやSNSをして画面の中ばかり見てるんじゃなくて、その時間の一部を使って、花屋に寄ったり花を生けたりすればいいのに……。
生のものと向き合うのって生活において大切なことだと思う。
あとは何がきっかけになるか、どうきっかけを作るかってゆうのが課題なのかなぁ。



松島:きっかけといえば、チーコさんや縁のあるアーティストたちとコラボしてフラワーベースを作ったり、植物にまつわるものを展示販売する『Flower Vase Camp』っていうイベントをいつかやりたいねって企画してるんだけど、その目的の一つが、まさに花瓶と花のある暮らしの提案。

そのイベントで部屋にかっこいい花瓶があるといいよね、それに花を生けるともっといいよねって伝えたい。
フクナガくんにイベントのフライヤーお願いしようかな、ははは。

フクナガ:やろうか?松っちゃんは巻き込み上手だし良いイベントになりそうだね。
「かっこいい花器を手に入れたから、それに何を生けようか」っていうのも、花に親しむ理由の流れとしては良いきっかけだね。
西原は古着やレコードを買うようなカルチャーに敏感な若者もどんどん増えてきてるし、その感覚で花器や花を日常使いする流れが馴染んだら最高だね。

<後編につづく>

写真・取材/緒方佳子



うかがった店
「PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)」
住所 東京都渋谷区西原2-26-5
営業時間 7:30~18:00
定休日 月曜日
電話番号 03-5738-7281


フクナガコウジ Kohji Fukunaga

日本のアートディレクター、デザイナー。1985年神奈川県藤沢市出身。2010年武蔵野美術大学卒業後、広告制作や個人事務所勤務を経てフリーランス。現在は宣伝美術をはじめとするデザイン・企画に従事する他、“LOVE ME AND MISO SOUP.”でミソを軸に日本の文化を広める活動を行い、“SOBA”や“PARA BOOK PRESS”においてリトルプレスのプロジェクトを主宰するなど、分野を問わず作品制作を行う。花束は一種類の花だけで良い。近年はフレンチゴムを育てている。左利き。  
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