植物生活編集部 植物生活編集部 2018/05/06

花を触れていて思うのは 「合わない花は、基本的にない」ということ~Tumbler & FLOWERS~

渡来徹さんに聞くマルチカラーの色合わせを考える


渡来徹さんは、ファッション雑誌の編集者やライターをしていたキャリアをお持ちで、多くのクリエーターたちから求められ、各種装花やワークショップでのコラボレーションを行うなど、まさに時の人。

その魅力は独特な色彩感覚が生み出す、色の合わせ方にも見ることができます。

今回はカラフルをテーマに花束制作を依頼させていただき、マルチカラー(3色以上の配色)の色合わせについてもインタビューしました!


 

―ファッション誌の編集者やライターをしていた頃の経験は、色彩感覚に影響しているのでしょうか。


さまざまなブランドのコレクションを俯瞰したり、スタイリストさんはじめご一緒する方々のクリエーションに触れたことは少なからず影響していると思います。ただ、色彩感覚という点では編集者以前、学生の頃に好きで眺めていたブランド、クリスチャン・ラクロワやエマニュエル・ウンガロのコレクションや、またプリミティブアートが好きで知ったカンガほかアフリカの布地などに見られる色使いにも多分に影響を受けていると思います。

 

―色の理論はどうお考えですか。


色彩理論は、花の仕事をはじめる前に、少なからず勉強していました。ただ、理論というのは万人がそれを理解するために語られるものであって、削ぎ落とされた細かいところまでは拾うことができません。理論が自分のためになったかといえば、あまり活かせていない気がします。反対色や補色などもあまり気にせず組んでいますし。そういうこともあり、僕にとってはファッションやアフリカンアートが教科書だったのかなと。

 

―多色使いで、色をうまく組み合わせるコツはあるのでしょうか。


花を触れていて思うのは「合わない花は、基本的にない」ということです。「この花と、この花の合わせ方ってどうですか」と質問されることも多いのですが、何を合わせてもどうにかなるものです。少なくとも、どこかの花屋さんに入ったとして、セレクトされた花材に店主の好みが反映されている限り、明快なフィルタリングがされているから妙な組み合わせにはならない。一見、合わないと感じられたとしても、その間をつなぐ一本さえ見つければ収まります。

 

―その「つなげる技術」はどのようなものでしょう。


言葉にしきれないところもありますが、色彩的な視点だけでなく、季節感や形状、質感、水分量など、いずれかをブリッジ/共通項にすることでつなげます。いけばなでは数種類の花材を組み合わせて構成することを「取り合わせ」といいますが、今回のようにマルチカラーで見せたいのであれば、形が似ている花材同士や、同じ科や品種で取り合わせるのも一つの手です。例えば、色の異なるキンポウゲ科の植物ですべて合わせる、もしくは、しっとりした肉厚の花同士や粉っぽいテクスチャーで揃えるといった具合に。ブリッジとなる花材を探し、つないでいくことで、自分のなかで一つの花になっていきます。

 

―難しいように聞こえますね。


彩度を合わせるだけでもいいですし、最終的に自分の落としどころが見つけられればいいんです。教室の生徒にも「色をたくさん入れると難しくありませんか」と聞かれますが、「難しく考えすぎだよ」と答えています。どこの花屋さんでも、並んだ花はすでにショップのフィルターがかかったもの。何をどう合わせても多分、かたちになります。学習という意味であれば、「この色とこの色を使いたいんですが……」と3つ4つ色みを指定してブーケを作ってもらい、花屋さんがブリッジにあたる花材をどのように選び、使っているかを観察するのも一つだと思います。

 

―まさに今、花材を選んでいただいていますが、選ぶ段階で完成形は見えているのでしょうか。


(ディスプレー全体を指差しながら)色の取り合わせは、ここにあるままのイメージです。あとは、微調整する花材を変えていくだけ。これが、お客様からのオーダーだった場合は、まずは予算ありき。使う花材や本数を大雑把に把握して必要とされるサイズ感を目指して骨格を作り、彩りとしてのディテールに使う花を選びます。いけばなにおいて僕は基本、うつわに一輪花を挿れた時点で完成する花を目指しています。以降、何本挿れようと、花を挿れた都度都度で作品として完成していることが望ましい。こうした考え方は花束を組む場合にも活きています。花材の姿あり様を活かしてブーケのアウトラインを作ったら、あとはディテールと予算のせめぎ合い。15本でも20本でも、それが50本になったとしても、どれも同一線上にある制作物なんです。

 

―色の取り合わせは仕入れの段階から、ということでしょうか。


注文に応じた特定色があれば、仕入れの時にも色を意識しますが、基本は市場で気になる花材を気ままに仕入れています。そのため荷解きをしていると「あれ、今日は紫の花しかないな」「ピンクばかりだ」なんてこともままあります。ただ花屋になってこんなことを繰り返しているうちに、僕のなかでの季節の色が定まってきたのかなと(笑)。取り合わせには色以外の要素も欠かせませんし、そういう点も総合的に判断しながら仕入れているのかなと。

 

―多色使いのときに、便利な色や花材はありますか。


1つの花のなかに、2、3色入っているものは使いやすいです。その1本で複数色をまかなってくれるので。例えば、1輪の花にも、ピンクっぽいところ、ベージュっぽいところ、茶色いところなどが混ざっている。よく花の表情を観察して、そういう部分を拾って、ブリッジになる花材としてつないでいくと統一感は出しやすいです。また、たまに複色多彩に組んだ花束に別の要素を共通項にしてド派手な赤を加えたりするんですが、これはこれで色彩的なつながりを無視したなかにあっても、妙な統一感をもたらしてくれたりすることもあるんです。

 

―鋭い観察が必要ですね。


レッスンのとき、「花をこんなにまじまじと見たことがない」と言われることもあります。でも、自分が漠然と好きでいるものの正体はなんなのか。好きなものへのフォーカスをもう一絞りしてもらい、「この花びらのここがかわいい」とか「このくびれがかわいい」とか「ピンク色がかわいいわけでなく、白からピンクに変わるところがかわいい」などの気づきを得てほしい。そのうえで、自らが好きだと思えるポイントをよく見せるための手段を考えるわけです。

 

―逆に、あまり使用しない色はありますか。


カラフルというテーマで言うならば、白はイメージがありません。白を主体にして、別の色を差し色にすることはありますが、白自体を差し色には用いません。でもライトグレーやドライフラワーのくすんだ白は差し色使いするかな。白い花が嫌いなわけではなくて、白いバラなんて最高に好きですよ。

 

―お客様からのオーダーで「カラフルな色使い」は多いですか。


直接的な表現として、そのようなオーダーは少ないですが、作っています。花束であれば、贈られる相手の人となりを聞き、湧いたイメージに基づいて組むので、モノトーンの印象が強い人に対してもカラフルに作ることはあります。

 

―カラフルの需要は今後どうなっていくと思いますか。


自分のために飾る花であればカラフル、増えてくれるといいなぁ、と。花を飾る機会が多い人ほど、気ままな、ときに奇抜な色合わせも楽しめると思いますし。他方、贈り物としてはどうでしょう。かわらず無難にまとめられることも多いので。でも、一定以上の関係性が築けている相手に贈る花であるなら、今まで以上に多色使いの、遊び心があるブーケをおススメしたいですね。花の持つ彩りを満喫してもらいたいです。

 

―ところで、花材を選ぶ手に迷いがありませんね。


迷っていますよ。伸びやかな感じでふわりと束ねたブーケって、世間的に評判いい気がするんですが、僕のはぎゅぎゅっとしてる。今回はおもねってそう作ろうかしら、なんて邪念と戦ってる最中です(笑)。



マルチカラーのカラフルをテーマに花束を制作。



多色を重ねてコンパクトにまとめていく。ときには花弁をむしって使用することも。







完成した作品を見ると、さまざまな色が調和しながら隣り合う。


 

心に染みる歓びのブーケ


花材が持つ質感のみずみずしさをブリッジとして、多色で取り合わせたブーケ。ピンクを主体に差し色となりそうな花を選択。

 

Flower&Green

モナルダ、スカビオサ、ガーベラ3種、ニゲラ‘ ブルーイスタンブール’ 、アネモネ、アスター、チューリップ‘ ロココ’ 、キク、ラナンキュラス(タンタン、シャルロット)、カーネーション(オレンジミナミ、ピート)、バラ‘テナチュール’、ハナミズキ


撮影/野村正治


教えてくれた人

Profile

渡来徹 Toru Watarai

2012年にいけばな教室兼オーダー花店「Tumbler& FLOWERS」をオープン。いけばなのおもしろさを多くの人に知ってもらうべく活動する。


ホームページ
http://tumblerandflowers.com
facebook
https://www.facebook.com/TumblerandFlowers


Instagram 
https://www.instagram.com/watara_ikebana/  
https://www.instagram.com/tumblerandflowers/









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