植物生活編集部ライター 植物生活編集部ライター 32ヶ月前

花屋さんに聞く、染めの花の魅力とは?




自店で積極的に花を染め、商品に取り入れている花店がああります。
その一つ、「…and flower(アンド フラワー)」(神奈川県川崎市)のフラワーデザイナーの平野かおるさんに、染めの花を手がけたきっかけやメリット、魅力について聞いてみました。

作り手の個性が現れるおもしろさ


 ―染めの花をご自身で作るようになった経緯を聞かせてください。
 
レインボーフラワーを作るセミナーに参加したのがきっかけです。
ちょうどレインボーローズが出回りはじめた頃でした。
そのときは商品にするつもりはなく「自分で作れるならおもしろそう」という軽い気持ちでした。

参加者全員が花を染める実習を行い、同じ花、同じ染色液を使っているのに、仕上がった花の色のニュアンスはすべて違っていて興味深かったです。
染めの花でも個性を表現できるのだと実感しました。染色液が花に害を与えないことも理解できました。
 

―実際に商品に取り入れたのはいつ頃ですか?
 
キャラクタースタンドに代表されるような造形的、デザイン的なスタンド花の受注が増えた7~8年前ですね。
カーネーションを青く染めたのが最初で、イベント用の花の商品のみに使用していたのですが、2~3年前からは一般的な花束やアレンジメントにも使いはじめました。

男性に贈る花束に青いバラを入れると好評で、その後、市販の染色液のカラーバリエーションも増えたことから、色や花の種類を増やしていきました。
現在は、常時10種類程度の染めの花を、1本からでもお求めいただけるように店頭に並べています。


 
―よく染める花の種類や色は?
 
バラ、スイートピー、ガーベラ、カーネーションはきれいに染まります。
市場に出荷されている染めの花を参考にしながら、いろいろな花で試しています。
色は青のほかにピンクや、ベージュ系のニュアンスカラーに染めることも多いです。
イベント装花では黒も。
ナデシコ’テマリソウ‘は、ピンクの染色液で栗色に変えたものを含めて常時2~3種類を店に置き、「かわいい!」と好評です。


―自店で花を染めるメリットやおもしろさはどこにあるのでしょうか。
 
必要な量が少量から用意でき、好みの色が作れる点です。
また、染めの色によって商品に店らしさと個性を加えられるところですね。
同じ花でも、花の状態や質によって吸水の具合は異なり、染め上がりの状態は変わります。
温度や湿度、品種によっても差が出ます。
染めたことによって、合わない花同士の相性がよくなることもあるんですよ。
ピンクの染色液で染めたマーガレットとプロテアの組み合わせなどがその一例で、日々発見があります。

 

生産者と自然に敬意を払う


 ―染めの花に対するお客様の反応は?

 芸能関係者への楽屋花などの場合は、花をもらう機会が多いため、染めの花は「珍しい」と興味を持っていただけます。また染めの花を使うとデザインが作り込んだ印象になり、どこか絵画的というか、ストーリーを盛り込みやすくなる点も、演劇やコンサートのテーマに合わせられるので喜ばれますね。
一般的なギフトの場合は、抵抗のある人もいらっしゃると思うので、染めの花を使ってよいか必ず確認しますが、喜んでいただけることが多いですよ。

 
―花を染めるときに、注意していることはありますか?
 
色に特化されたものやニュアンスカラーのものは、その雰囲気を壊さないように気をつけています。
また、染める、という行為に慣れすぎないように常に心がけています。
一定の時間を超えるといくら染色液に浸けていても花は液を吸い上げず、色も着かなくなります。
だからといって、放置することはしません。
花に負担がかからないように、ベストと思える状態に色づくまでをしっかりと見届け、「今だ!」というタイミングで引き上げる。

この見極めはとても大切で、いつも赤ちゃんを見守る母親のような気持ちで向き合っています。
自然と生産者への敬意を忘れず、真摯な気持ちで、お客様に喜ばれる染めの花を制作していきたいですね。



花は染色液の吸い上げがよくなるように、水揚げせずに置いたものを用意。余分な葉や傷ついた花弁は取り除く。


ビニール袋に花を入れ、染色液を必要量注ぎ、口をセロハンテープでしっかりと留める。


そのまま花器などに入れる。花が染色液を吸い上げて徐々に染まってくる。

欲しいと思う色の4~5割程度染まったところで引き上げ、切り戻し、水に浸けるとさらに色が入るんだそう。



染色液はパレス化学の切り花着色剤「ファンタジー」を使用。

使用頻度の高い青は異なる色みを各種揃え、モカ、アプリコットなどのニュアンスカラーも出番の多いカラー。
染まり具合が不十分だったり部分的に色を入れる場合は、着色スプレー剤を使って色味を足して調節する……まさに職人ワザです。


カーネーションがどの染色液を使用するとどのような色に染まるかを撮影して記録し、色見本として活用。


店で染めた花の一部。

 

種類の染めの花を使い、春の花束を印象的に


旬のラナンキュラスをメインに制作。


やさしいピンク色のものと、妖艶な雰囲気のものとの違いをより強調するため、‘レイネッテ’と‘ゼブラ’を染めて使用したアレンジ。
インパクトが加わった花束に合わせ、サブ花材のアリウム・コワニーも染めたものを選択することにより、より映えます。花弁の筋のところだけが染まって星のような形になるのが特徴的です。

Flower & Green
バラ‘ノーブルサラ(’ キャメル染め)、カラー(アプリコット染め)、ラナンキュラス‘レイネッテ(’ モカ染め)、ラナンキュラス‘ゼブラ’(ロイヤルブルー染め)、アリウム・コワニー(コバルト染め)、ラナンキュラス、ハクモクレン、ヘデラベリー、ユーカリ・ポポラス



染める前の花はふんわりと柔らかい雰囲気。染めたことで花束がぐっと作り込んだ印象に。

 

「…and flower」ショップ拝見


切り花1本の小売りから、ギフトフラワー、ブライダル装花、スタンド花、楽屋花、イベント装飾、ガーデニングなど、幅広い分野で植物にかかわる業務を行っているアンドフラワー。

フラワーレッスンのほか、ハンドメイドソープやウィービングタペストリー制作など、さまざまなワークショップを開催しています。

「花を買う目的だけでなく、花に特別興味がなくても気軽に遊びに来てもらえるテーマパークのような店を目指しています」と話してくれました。



古い町工場だった建物を改装した店舗の面積は約170㎡。
自然光が差し込む広々とした店内にはアンティーク家具や古道具が配され、切り花が色別にディスプレーされています。


窓辺に設置された観葉植物のコーナー。


ドライフラワーを使った商品も多彩。染めの花をドライにすると時間が経っても色褪せないというメリットが。


ハーバリウムなどに活用できるよう、染めの花のドライもパーツとして販売しています。

 

教えてくれたフローリスト
平野 かおる

…and flower[ アンドフラワー ]
株式会社ビスポークシェネ
神奈川県川崎市中原区木月4-32-18

http://shop.andflower.jp

Facebook:@ andflower.sakura


撮影/佐々木智幸
 

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