Yu Yu 67ヶ月前

植物と暮らす おうち時間 第7回 ギャラリー&ショップ『組む』 / 小沼訓子さん

「植物と暮らすおうち時間」

今回は東京の馬喰町にてギャラリー&ショップ『組む』を運営されている小沼訓子さんにご登場いただきます。

埼玉県にあるご自宅では、木漆芸作家のご主人とお母様、藝大生と高校生の姉妹の5人でお住まいです。
沢山の植物と作家ものの暮らしのアイテムに囲まれたご自宅での様子をお伺いしました。




自分の内と外を繋げてくれる植物との暮らし


のびのびと沢山の植物が育っていますね。小沼さんにとって植物とはどういった存在ですか。

「植物は、私たち家族に癒しと調和を与えてくれる存在で、植物と私たちとの “エネルギーの交流” が大切なことだと思っているんです。

 “植物とのエネルギー交流” といっても普段馴染みのない方が殆どだと思います。
うまく言えないのですが、『植物があることで閉鎖的にならず、宇宙の中の地球にいるということが感じられる、自分の内側と外側がつながるような感覚』でしょうか。
私はこの考え方を木漆芸作家の夫から学び、意識するようになりました。彼は木を扱う仕事ですので、常に植物と対話しているところがあります。

植物もまた、私たちとの調和を望んでいるように感じていますね。植物は自分では殆ど動けないので、 “その場” と調和しようとしている感じです。
そんな “植物の波長” を感じることが私たちにとっての癒しにつながっているのでは。

癒しと調和のエネルギーがあるのは植物に限ったことではないですが、植物は特別な存在ですね」


 
「住まいの空間作りでも内と外のつながりを意識し、光や風がどう感じられるかを大切なテーマにしています。
家の中に、外とのつながりを感じられる空間を作るために、中庭のような場所を作りました。

その部分だけガラス屋根にしており、日光が降り注ぐことはもちろん、雨の日には雨音が響き、月の明るい夜には植物の葉の影がくっきりと床に映るなど外の気配を感じることができます。植物の多くはこちらに置いてありますね」


 
「子供達が小さい頃から、中庭にブランコを下げて遊ばせていました。すると訪ねて来てくれる友人や親戚たちが自然と集まってきます。

実際は埼玉のベッドタウンの住宅街なのですが、訪れた方からは『リゾートに来たみたいだね』と言われることも。
人間も植物も、心地よく過ごせる空間は共通しているのかもしれません」



「そんな我が家には人を招くことが多いです。家族全員、料理をすることが好きなのも理由の1つですね。家に帰ると甘いシナモンの香りでいっぱいになっていて、娘が作ったできたてのシナモンロールを頬張ったりすることもしばしば。

写真は、娘の友人達が集まったときで、料理は夫が作りました。その後、植物の下で太古のような打楽器パーティーとなったのも楽しい思い出です」




沢山の植物の中でも大切にしているのはどのようなものですか。

「やはり長く育てて来たものに思い入れがあります。結婚当初買ってきたもので、それから20年を過ぎた今、大きく育ったものがいくつもありますね。

最初はとても小さくて、園芸売り場の片隅にひっそりと置かれていたものばかり。それが今では特大サイズの鉢に植え替えられ、簡単に持ち上げられないほど大きくなりました。私たちの暮らしと共にあり続けてきた愛着の深い存在です」



「例えば、小さなパキラも大きくなり、挿し木によって増えて、最近また一つの株から2輪の花が咲きました。
パキラの花はとても珍しく、夜に咲くと同時に、まるで蘭のような華やかで強い香りが溢れてくるんです。
我が家では、この20年の間に2回、花が咲きましたよ」
 



「その他には、もちろん切り花も好きですし、何気無いものを育てるのもいいですね。
野菜の切れ端を育てると、大根の花はとても可憐で可愛く、さつまいもの葉は端正なほど綺麗だなと思います。
庭のラベンダーは毎年とても元気で、こんなに収穫できるんです」

お仕事柄、日々たくさんの作家さんとご交流があると思います。植物を用いた作家さんの作品で特にお気に入りはありますか。




「まずは那須を拠点に活動するRARI YOSHIOさん。〈JARDIN BLANC〉を主宰し、広大な庭でとれる植物などを使って制作活動をしていらっしゃいます。
RARIさんが空間に植物をあしらうと、どこにでもある草花がこんなに完璧で美しかったのかと気付かされますね。

それには華やかという言葉は似合わず、小さき神が宿るような凜とした存在感なのです。
RARIさんはこんな素敵な草花とフードの組み合わせをすいすい作って下さいます」


 
「そして、このRARIさんを介して2015年に知り合った〈TOKIIRO〉さん。〈TOKIIRO〉は、近藤義展さんと友美さんご夫婦のユニットで、このお写真はお二人が我が家に遊びにきてくれた時のもの。テーブルの上にある多肉植物が彼らの作品です。

多肉植物に特化し、グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップなどを手がけています。

彼らが多肉植物を通して伝えたいことは、生命や宇宙の神秘。それを知れば知るほど、深遠な世界の発見から、大きな感銘を受けているのでしょう。お二人のアレンジする多肉植物からは、その感動が伝わってきますね」


『組む』のお店では、無農薬のお米や天然素材のみでできたキャンドルなど素材や材料の育て方にまで徹底的にこだわったものが並んでいるなと思っています。セレクトする際のポイントはあるのでしょうか。

「ここでも何より大切なのは命で、忘れてはいけないのは、私たちは命があり、地球の一部であるということです。

少し飛躍しますが、例えば人工知能などが発達すればするほど、むしろ本来の生命の豊かさや身体感覚などが尊ばれていくのではないかと考えています」



「私の場合、思い返せば幼い頃からの  “幸せな記憶” は “身体的な感触” と深く結びついていますね。

例えば、他界した祖母のお手伝いで鰹節を削ったときの、さくさくとした感触、音、香り、味。ただ手を動かす楽しさや、おばあちゃんと一緒にいる安心感と温かさ。幸せな記憶はそんなことの集積のような気がします。

幸せとは、私にとって命を大切にすることそのもので、命とは文字通り生命でもあり、毎日の時間や生き方です。

その信念は、日々の生活やお店で扱うものの選びかたにも大きな影響を与えていると思っています」




普段何気なく日々を過ごしていると、 “いのちやエネルギー” という根源的なことからは遠く離れてしまっている感覚があります。
ただ、様々な実感から離れすぎてしまっている今だからこそ、〈エネルギーのあるもの〉や〈暮らしにまつわること/生きるとは何か〉という問いに本能的に惹かれる人が増えてきているようにも思うのです。そんなことを植物を通して考える時間になりました。

次回の更新もどうぞお楽しみに。
 

うかがった人



小沼訓子
馬喰町でギャラリー&ショップ「組む」を運営。暮らしにかかわるものづくりや生活デザイン製品を紹介する傍ら、インテリアデザイン、展示デザイン、サインデザインなど、空間作りにかかわるクリエィティブディレクションを行っています。

組むHP 
http://www.kumu-tokyo.jp

小沼智靖 木漆芸作家 
http://tomoyasukonuma.com

 
 
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この記事のライター

Yu
Yu

趣味は見ることと食べること。 アート/民藝/工芸/古いもの、食、ナチュラルケアやセラピーに興味があります。 美術大学卒業後、プロダクトの企画や暮らし周りの編集に携わってきました。

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