Yu Yu 2018/09/25

月と星とハーブと。 第2回  自然に身を委ねて、旧暦と暮らすススメ 前編 / 石田紀佳さん

自然に沿った暮らし方や、古くから伝わるレシピなどをお届けする連載
『月と星とハーブと。』
これから二回に渡り「自然に身を委ねて、旧暦と暮らすススメ」をお送りいたします。

お話を伺うのはフリーランスキュレーター、バッチフラワーレメディプラクティショナーの石田紀佳さんです。

都市に住みながらも、旧暦と新暦の両方を取り入れた暮らしを大切にされ、季節の手仕事にまつわる様々な活動をされている紀佳さん。毎年オリジナルで『草暦(くさこよみ)』も制作されています。



「自然のリズムを取り戻したいと願う人にとって、旧暦の考え方を取り入れることは、日々を楽に過ごすヒントが詰まっているんですよ」と紀佳さん。

前編の今回は、入門編としてまず押さえるべきポイントを伺います。

 

新暦と旧暦の大きな違い

“新暦は太陽のみ、旧暦は月と太陽の動きを用いています”


「日頃、私たちが目にするカレンダーに使われている “新暦” は太陽の動きを意識して作られたものです。

それに対し、いわゆる日本の "旧暦" とは、月と太陽の動きからつくる暦のこと。
月の満ち欠けで月日を数え、太陽の運行に沿った〈二十四節気(にじゅうしせっき)〉や〈七十二候(しちじゅうにこう)〉と呼ばれる言葉によって季節を知るものです
。」




「つまり、私たちが日頃親しんでいる新暦には〈月の満ち欠け〉についての考え方が抜けてしまっているのです。

新暦は太陽と地球の位置関係を元に作られているのですが、実際に使うカレンダーに記載されているのは "何月何日" という数字が並んだ表記のみですよね。

数字だけの表記に慣れてしまった現代では、そもそも何故1か月が30日前後なのか、考えたことがない人も多いかもしれません。

そんなシステマチックな新暦に慣れている現代人でも、これからお話しする旧暦の考え方を意識すると、きっと新暦だけの時空とは違う世界が広がりますよ」


 

旧暦は月と太陽、両方の動きをイメージしやすい暦 


旧暦の考え方のメインになるのは、〈月の満ち欠け〉と、太陽と地球の位置関係を言葉で示した 〈二十四節気(にじゅうしせっき)〉 です。

まず月に関しては、新月を1日として数え、その後満月になり、新月に戻るまでの1周期を1つの月として考えています。

その月の満ち欠けに加え、太陽の周りを地球が一周するのを1年(一太陽年)とし、その1年を二十四に分けたそれぞれの期間を表す言葉〈二十四節気〉を取り入れたものが旧暦の大まかな考え方。

二十四節気にはそれぞれ “立春” のような季節を表す漢字二文字の言葉が付けられていますよ。

例えば、二十四節気の “秋分” は『昼夜の長さが同じになる日で、この日を境に日が短くなり、秋の夜長に向かっていく頃』。

11月下旬の “小雪” は『わずかに雪が降り始める頃』、春の “穀雨” は『春の柔らかな雨に農作物が潤う頃で、この辺りに種を蒔くとよく成長する時期』など、二十四節気を意識するだけでも今がどのような季節なのか、感じ取ることができるようになると思います
 

「ちなみに旧暦は月を陰、太陽を陽とした 〈太陰太陽暦〉 とも言われ、もともとは中国発祥の暦

古代において太陽の運行を正確に予測し、季節を知る暦を作ることは、農耕を計画的に行うための先端技術でした。

暦作りの際に月の満ち欠けだけで日数を数えると、太陽による四季の実態とずれるので、二十四節気によって季節と暦が合うように工夫されていたんです。

現存する資料が伝えるところによると、おおよそ2500年前には、二十四節気を含む太陰太陽暦が黄河流域で成立していたとのこと。
ということは、それに先立って天文や気象の知識があったのですね」



「旧暦が出来てから2500年以上も経つ訳ですが、ごく最近の2016年には中国の二十四節気がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界無形文化遺産に登録されました。

旧暦は数字では表せない部分が大きく、現代に暮らす私たちにとって不確かな古いものに感じられてしまうかもしれません。しかし、実は地球が太陽の周りを回り続ける限り、未来にも通用する確かなもの

世界無形文化遺産に登録された二十四節気の英訳はどこか未来的な響きの〈the twenty-four solar terms〉なんですよ。
これは中華文化圏だけではなく、人類全体の文化遺産と言えるのではないでしょうか」



 

季節の旬の気配を感じさせてくれる “七十二候(しちじゅうにこう)” のことば


「先ほどお話した 〈二十四節気〉 をさらに三つの期間に分け、それぞれに付けた言葉を 〈七十二候〉 と呼び、おおよそ五日おきの季節感を知らせてくれます二十四節気よりもさらに短い期間を指すので、具体的な季節を感じることができますよ

例えば10月の半ばは『菊花開(きくのはなひらく)』、4月の初めは『玄鳥至(つばめきたる)』のように。

7月の終わりころには『大雨時行(たいうときどきにふる)』などという天気を表すものもあり、花鳥風月や天候の様子を言葉から読み取れます」



「冷暖房や照明などが完備されるのが当たり前で、季節を感じることがだいぶ少なくなっている現代。

しかし、私たちの芯の部分は古代からそう変わっていないように思うのです。ですから、きっと季節や天体の流れに身を委ねることが、心身の充実をもたらしてくれるはず

とはいえ、自然に沿った暮らしをどこから始めたらよいのか戸惑う人も少なくないでしょう。
そんな時に参考になるのが、今回お話しした旧暦です。

旧暦と言っても難しく構える必要はありません。
まずは空を見上げて月の満ち欠けを意識するだけでも、からだとこころの状態が整っていきますよ。

なぜなら、個人差がありますが、月齢に影響される潮の満ち引きのように人の体液も影響を受けているから。
また月は人の感性をも開き、文学や絵画を豊かにしてくれた大きな存在だと思っています」



「太陽と地球の関係をベースにした二十四節気や七十二候の言葉は、太陽が季節の中でどこから昇りどこへ沈むのか、草木や虫たちは太陽をどう感じているのか。そんなことを、思い出させてくれます。

太陽と対応した二十四節気や七十二候の言葉は、季節の気配を先取りしているので、スケジュールが立てやすいなど実用的な一面も」



「これからは新暦と旧暦を併用して、一日、一ヶ月、一季節、一年の行動計画を描いてみませんか。

地球上ほとんどの民族が、太古には月と太陽を神として仰ぎました。気候風土によって見え方は変わりますが、月と太陽には国境がありません。

大げさではなく、現代人として改めてそのことを強く感じれば、民族の違いや争いなどのない “地球人” としての振る舞いに向かうのではないでしょうか。

私たちが本来の人間としての感覚や生き方を取り戻し、充実した毎日を送るために、旧暦の見直しがとても大切なことだと感じているのです



『自然に身を委ねて、旧暦と暮らすススメ』後編に続く。


プロフィール

石田紀佳 / フリーランスキュレーター、バッチフラワーレメディプラクティショナー

世田谷ものづくり学校にて、無料の公開庭仕事を週に一度ほど行っています。
詳細はこちらから 巡る庭:http://meguruniwa.blogspot.jp/

季節の草木と手仕事のお知らせ
草木と手仕事:https://www.facebook.com/plantsandhands

草作家矢谷左知子さんとの共同ブログ
草虫こよみ:http://xusamusi.blog121.fc2.com/

著書:
藍から青へ 自然の産物と手工芸 建築資料研究社
草木と手仕事 plants and hands 薫風堂
魔女入門 暮らしを楽しくする七十二候の手仕事 すばる舎

 
  • すてき 0
  • クリップ
  • 埋め込み

この記事をシェアするには埋め込みコードをコピーしてSNSやブログに貼り付けてください。

この記事のライター

Yu
Yu

趣味は見ることと食べること。 アート/民藝/工芸/古いもの、食、ナチュラルケアやセラピーに興味があります。 美術大学卒業後、プロダクトの企画や暮らし周りの編集に携わってきました。

直近の記事

関連記事