Yu Yu 66ヶ月前

植物と暮らす おうち時間 第8回 料理家 / 森田久美さん



『この人の見ている世界はなんて美しいのだろう』


これからご紹介する森田久美さんの感覚を通した世界を見ていると、そう思います。

『植物と暮らすおうち時間』
今回ご登場いただくのは、料理家の森田久美さんです。

建築家の夫、お子さん、たくさんの動物たちと京都にある古い町家に住まれています。

森田さんの魔法に掛かったかのような植物と、京町家での暮らしをどうぞお楽しみください。


すべてのイノチをそのまま受けいれる


まずはじめに主催されている料理教室についてお伺いします。
森田さんが菜食を始めたきっかけ、続けていらっしゃる理由はどのようなものでしょうか。


「私はもともとアレルギー体質で、二十歳の時にアトピーで入院し、体質改善の治療を受けた時に玄米菜食を知りました。それが菜食や断食を実際に始めたきっかけで。

菜食を始めてから、身体の変化と共に心や身の回りにも変化がありました。その頃に出会った恩師からの影響も大きく、菜食を選択することは私にとって自然な流れでしたね。

肉や魚がダメだとは思いませんし、私も子どもが生まれてから柔軟に魚を数十年ぶりにいただくような経験もしています。
ですが、菜食を中心とし続けているのは、動物性のものを食べない日の方が断然身体は軽く、気持ちも詰まるものがなくて楽だという実感があるからです。

一言で菜食の料理教室といっても色々ありますが、私は料理を通して “イノチ” やこの星の秩序とは一体何なのかを見て感じる料理教室を行なっています」





野菜といつも真摯に向きあっている森田さんにとって、植物も親しみがあるものではないかと思います。
改めて森田さんにとって植物とはどういった存在ですか。


「植物は私にとって共に生きていく親友や家族のようで、また人生の大先輩のようなかけがえのない存在でもあります。

この地球に花がないことを少し想像するだけでも、感じ取ることができると思うのですが、花や植物はこの地球になくてはならないもので、 “生命であるもの全て” ととても関わりが深い」



「日頃、私たちが植物に支えられているのはもちろんのこと、人がこの世に誕生した時にも祝福を花で表し、命の炎が消えたときも哀しみと畏敬の念を花に託しますよね。植物は日常も特別な日にも、側で支えてくれる存在ではないでしょうか。

我が家の庭でも花が咲き、植物は育っていますが、『私が彼らを育てている』のではなく、育っていくお手伝いをしている感覚。

私たちと共に暮らしている植物たちは、我々が心身ともに元気であれば、基本的には元気ですし、またその逆も然り。我が家には四季を通して花の咲く庭があるので、花から季節を学んでいますね」




特に好きな花はありますか。

「薔薇と白い百合が特に好きです。薔薇はたくさんの種類が庭で咲きますよ。
天候をはじめ様々な条件によって、毎年香りや色かたちに違いがあるものの、いつも美しく、そして可憐。

薔薇と暮らす様になり、しばらく経ちますが、その魅力は色褪せることなく月日が過ぎています。
薔薇は病気になりやすいことや、虫がつきやすいことなど、育てるのが一見難しいように思っていました。

しかし薔薇と暮らして5年目の花が咲く春に、大切なことに気づいたんです。それは “薔薇は夜にエネルギーが満ちる” ということ。

それからは、薔薇には夜話しかけるように。すると、全く病気にならなくなり、たくさんの花を毎年咲かせてくれます」



「それと、白い百合の花の姿を見ていると何故か私は心が落ち着きますね。切り花にせず、庭で咲く百合は枯れゆく姿まで見ていたい。
そこには理屈では言い表せることのできない何かが私にはあります」




「実は我が家には “秘密の花園” があって。
うちは京都の古い町家。基本的に町家の庭は日陰が多く、植物は苔やシダといった和風なものが一般的です。

なので外から見ると、この町家の奥に薔薇などが咲く、緑豊かな庭があるとは想像しがたいようで。
実際に我が家の庭を見た方は、想像を遥かに超えた景色に驚かれますよ。

庭の枇杷の木は、樹齢80年以上も経つ大きなもの。夏の始まりに沢山の実をつけてくれるので、家族で収穫を毎年楽しみにしています。
蔓薔薇は大きく育ち、開花すると空から花が降る様に咲き、薔薇のドームが出来るほど」



森田さんはたくさんの動物と暮らしていらっしゃいますが、どんな動物たちがいるのでしょうか。


「9歳のフラットコーデットレトリバー、7歳と5歳のトイプードル、5歳の猫と金魚1匹と暮らしています。
ちなみに全員男子なので、私は家族の中で紅一点といったところ。

子供の頃から動物と暮らしてきたので、動物がいない方が私の生活には不自然かもしれません。数については、気がついたら増えていたという感じです。
今も犬3匹、猫1匹と暮らしていますが、特に多いとは思わないかな。家族だとお互い認め合い暮らしているんでしょうね」




お子さんが生まれてから、大人気だった料理教室をしばらくお休み(現在はプライベートレッスンを中心に再開)されるなど、たくさんの変化があったようにお見受けしています。
お子さんは日々どのようなことを教えてくれる存在ですか。


「4歳になった息子は〈希望〉そのものです。その希望とは私たち夫婦の希望というより、この星で〈子供たちの存在自体が希望〉という意味合い。

笑ったり、泣いたり、拗ねたりと、毎日発見の中に身を投じている彼には『世界が差し出している物事を信じることには、愛しかない』といつも伝えています。

日々すくすく成長している姿が、世界からたくさんの愛を吸収していることを物語ってくれているよう。
息子と暮らし、私たちは夫婦から家族になりました。
すると、食べるものに変化があったことを始め、彼が出合わせてくれる世界は私たち夫婦だけでは見られなかったもの。

夫と息子、たくさんの動物たちと植物と暮らせて、とても幸せです」



森田さんは自分自身を
『幼い頃から周りに理解されずにいた』と表していることがあります。

たとえ、そういった存在だとしても自分の感性や自分自身であることに安心して、開いていること。

そうするとひとやモノ、動植物、場所さえも、必ず自分と合うものが現れ、完璧な世界がきっとそこに広がるのだと森田さんの存在は教えてくれます。



次回の更新もどうぞお楽しみに。



うかがった人

森田久美 / 料理家
自宅で菜食の料理教室を行う。現在はプライベートレッスンを中心に開催。また、暮らしにまつわる物の展覧会や、お話会、演奏会などの企画をしています。

料理教室森田 http://r.goope.jp/morita0358


 
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この記事のライター

Yu
Yu

趣味は見ることと食べること。 アート/民藝/工芸/古いもの、食、ナチュラルケアやセラピーに興味があります。 美術大学卒業後、プロダクトの企画や暮らし周りの編集に携わってきました。

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