植物生活編集部 植物生活編集部 2018/10/02

植物生活なあの人vo.2 中本健太/ルフルロン





花は生きもの。
だからこそ、その瑞々しい美しさに感動するし、やがて枯れていく儚さすらも愛おしく感じます。
そんな花のきれいな姿を長く留めておくには“写真”という手段が欠かせません。

そのようなことから「植物生活」でも定期的にフォトコンテストを行っています。


毎回たくさんの力作をご応募いただくなか、入賞するのはすごいこと。
そのなかでも
「フラワーリースフォトコンテスト優秀賞受賞」
「ナチュラルブーケフォトコンテスト優秀賞受賞」
「花と器のある風景フォトコンテスト優秀賞受賞」
と、なんと三冠に輝いた方がいます。

「ルフルロン」という屋号で活動されている中本健太さんです。
一体どんな人物なのだろう? 気になってしかたない! ということでお話しを伺いました。

中本さんが拠点とする広島にて。
柔らかい語り口から、穏やかな人柄が垣間見えます。


 

撮影は早朝に、何枚も


「自分の作品を沢山の方に見ていただけたことがとても嬉しく、大変光栄に思います。
私のように花を扱う者にとって、コンテストはとても刺激や勉強になり、自分の活動の道標にもなるので、今後も是非機会をいただきたいです」

フォトコンテスト三冠の感想を尋ねたところ、丁寧に答えてくださった中本さん。


応募のきっかけは、定期的に愛読していた月刊誌『フローリスト』で募集を見つけたことだったそうです。
モチベーションを高めるため、日頃生み出す自分の作品を見てもらいたいという強い想いがそうさせました。

中本さんの作品写真はどれも柔らかく落ち着いた雰囲気がすてきです。



ルフルロンのインスタグラムより

どういった環境でどのように撮影されているのだろうと、聞いてみたところ、なんと携帯のandroid soneを使っているとのこと。
しかもアプリを使って加工もしていなというから驚きです。
インスタグラムやフェイスブックなどにすぐアップできるのも、携帯撮影の利点。撮影する時間帯と光の入り方、作品が引き立つように背景に気を使っているとのことですが、実は花の道に入る前から写真が好きで、マニュアルカメラやポラロイドカメラを持ち歩いていたそうです。

写真の本もいろいろ読み込んでいました。


「写真の本を読みあさっていたとき、朝の光がいいよ、夕方は夕陽が入って光の加減がすてきだと書いてあったのを見て。写真は光が大事だよと。あとはお花を撮影するときに時間的に青みがかった写真が好きで、そうすると早朝のまだ光が入るか入らないかくらいの時間帯がいいなと。5時とか6時とか。季節によって陽の上がり方が違うと思うので、作品を作ったときに、早朝何時に起きて撮ろうかなとか考えたりします」

そんなこだわりのなか、撮影時にいちばん大事にしているのは
“作品のメッセージが伝わるよう何度も撮影し、その中から厳選すること”。

「何枚もたくさん撮影して、そこから使う写真を選ぶのは手間ですが、それは見てもらうための一枚を決めるというこだわりです」

撮影時は、花に合う背景から決めていくのが中本さんのスタイル。
花やグリーンの作品が主役なので、無機質なコンクリートやシンプルな背景に自然と落ち着くそうです。


「フラワーリースフォトコンテスト優秀賞受賞」の作品。打ちっぱなしコンクリートとグレイッシュなユーカリの緑が絶妙の取り合わせ!


こうした背景は、日頃、自宅や近所でステキだと思う一部を利用しています。
植物を撮影するときの背景って、その植物にストーリーやキャラクターを加えるような力強さがありますよね。
そうした場所を常日頃から探していると、中本さんは言います。

「ほんの一部分なので見逃しがちですが、どんな場所でも、心が動いたり、はっとして二度見する部分があったりして、それを見つけるのも楽しいです。お洒落なアトリエで素敵な場所を作れたらとは思っていますが……」

この「花と器のある風景」フォトコンテスト入賞作も、背景、光の加減がとてもマッチして印象的な一枚でした。
浮かび上がる花びらの柔らかそうな質感に眼を奪われます。




「応募の時期が春でしたので、春の花を撮りたくて、花びらがふんわり溶けそうに繊細なラナンキュラスを選びました。一本一本それぞれ表情が違ったので、みんなの個性が出るように。器は、水に付けるために無造作に活けた花瓶が似合っていたので、そのまま使いました。背景を黒にしたのは、見る人によって背景や風景を想像してもらいたかったのと、ラナンキュラスがこの場所の花、このイメージの花ではなく、それぞれの記憶の中のそれぞれの花になって欲しいと思って、無彩色の黒色にしました」

作品を“どう見せるか”。そのための熱意とセンスが、中本さんの写真にはあふれている気がします。


 

フランス語と母のガーデニング


いま、中本さんは「ルフルロン」という屋号で、店舗を持たず活動しています。
拠点は広島。依頼を受けてアレンジメントや花束、リースの制作、空間ディスプレイや庭への植栽、イベントへの出店も行っています。

「まだまだ活動が少ないのですが、今出来ることを全力でしています」

中本さんがいまの形態で活動を始めたのは2014年。
作品展への出品をきっかけに「ルフルロン」を立ち上げました。

花自体に興味を持ち始めたきっかけは2つ。
前職で観葉植物を担当したことと、母親のガーデニングです。

実は中本さん、この仕事にする以前はまったくの異業種で働いていました。
みなさんおなじみの「無印良品」で接客販売員をされていたそうです。


中本さんが勤めていた無印良品では一時期観葉植物の扱いがあり、その管理を担当することがあったそう。
けれども店舗の中では環境がなかなかよくなくて枯らしてしまうことも……「それがかわいそうだなと思っていたのが心に残っています」。

あとは、ガーデニング好きのお母さまが庭にバラなどを植えていたのを見て、「はじめのころはなにやっているんだろな?」と思っていたそうです。

けれども「楽しそうな表情を見ているとつられてしまって。気づけば二人でやるようになっていました(笑)。
必要なきっかけを母からももらった気がします」。



中本さんにはずっと、自分で何かを表現したいという気持ちがありました。
さらに手に職をつけたいという思いも重なって退職し、造園の職業訓練に通うようになったそうです。
そしてその造園の職業訓練の学校に通っているとき、たまたま夏に、広島の原爆のいろいろな献花や作品展があり、それを見たことが大きな転機になります。

「ちょうど通りかかった作品展で平和をテーマにした作品を見てすてきだなと思いました。花を勉強して、自分もそういう作品を作れたらいいなと。職業訓練を終えてからもお花の勉強を本格的にしたいと思い、花の学校に入りました。そこでは2年間でフラワーデザインだけでなく、園芸なども学びました。当時の仕事のやりがいについて悩んでいた時期だったこともあり、自分の中の想いを花で表現出来るフローリストになりたいと」



屋号の「ルフルロン」はフランス語で“le  fleuron”(花飾り)という意味だそう。

「“花飾り”にしたのは、誰もが花を身近に飾って楽しみ、癒やされ、日々を優しく過ごせる、そんな時代になって欲しいという思いでつけました」

中本さんにとってフランス語は懐かしい言葉。

「幼い頃に数年間フランス語圏に居たことから、大学ではフランス語を学び、フランスが自分にとって特別でその言語を忘れたくないという思いもありました」という言葉を掘り下げて聞くと、かつてお父さまの仕事の都合で海外に滞在していたことがあり、0~5歳くらいまでニュージーランド、7~10歳ごろまでニューカレドニアに暮らしていたそうです。
そこで現地の学校に行くことになり、フランス語に触れることになりました。

その後は日本で中高と過ごしましたが、「そのころからフランス語をどうしてももう一度勉強したい」という思いが強く、京都外国語大学に入り4年間フランス語を勉強。

ちょうど4年生のときに派遣留学でフランスの大学に留学もしました。
それは「本当に幸せな1年間だったなと思います」と、当時を懐かしみます。

そうした暮らしがいまの花の仕事にも影響しているのでは?との問いには

「小さすぎるころは記憶にないかもしれないけれど、そうやって海外の風景だったり文化を見たり聞いたりにおいをかいできたり、知らないうちに五感で身に着けてもらえたのかなという気もしています。海外はお庭だったりお花を飾ったりという文化が日本とまた違って、より日常に入り込んでいる感じがするので、きっとそういう影響はあるかもしれないですね」
 

健気な姿に惹かれる


いまやすっかり植物の虜となった中本さんですが、作品制作時のこだわりはなんといっても「色」。

「落ち着いたナチュラルトーンで、自然な色の流れが出るようにしています。
たくさんの色を使うときは特に、全体の色の相性や、個々が活きる色使いに気をつかいます。
花を選ぶときには、オーダーやコンセプトを頭に、市場では自然に惹きつけられる花に手が出ます」

今回、インタビューの撮影用にご用意いただいた作品も、落ち着きのあるナチュラルトーンが心地よいです。



最初はリースだけにしようかと思っていたそうですが、リースがドライだったので、撮影が近づくにつれてもっと根本的に自分が「お花が好き」というストレートなメッセージを撮影の中で伝えたいと思うようになり、生花の花束も準備してくださいました。

「大きい花束ではありますが、優しい感じで撮ってもらいたいと思い、小花があったりグリーンがチラチラしたり、アジサイの微妙なピンクやライムグリーンだったりするはっきりしないというかそういった色とかが自分らしいかなと」




それぞれ印象の違う2つのリースもステキです。


「はじめてコンテストで入賞したのがリースで、そのとき本当にうれしくて。掲載されたフローリスト2冊買いました(笑)。だからリースは作りたいなって。性格的におじいさんとか(笑)ゆっくりだとか言われるんですが、大きなリースではダイナミックさというか、自分が普段表現できないところを作品で表現できたらいいなと思いました」


2個の作品で対照的なものをという構想のもと、小さなリースと大きなリースを合わせて秋っぽさを感じる仕上がりに。



「グレビレアも面白い葉っぱですよね。こういう葉っぱを見たことない人もたくさんいると思うので、そこから興味を持っていただけてもいいなぁと思います」



「いま住んでいるのが広島でも山の方で。そこでの自然が教科書じゃないですけど、ここステキだなと思ったりしたら制作のヒントになったりとかしますね」

秋。この時季にお気に入りの花を尋ねたところ

「秋に近づくと渋い色、ちょっとくすんだようなお花に眼がいってしまいます。自分の庭で咲いているフジバカマのような、小花なんだけれど存在感のあるような、キラキラしているような花に惹かれます」

先日お客さまの庭を整理することがあり、ユーパトリウム・チョコラータをいただく機会があったそうです。
こうした繊細な花がお好きだと教えてくれました。






お客さまからいただいたというユーパトリウム・チョコラータ。チラチラとした小花がキュート。
ルフルロンのインスタグラムより

「植物は、どんな過酷な環境でも健気に育つところが好き!」

と植物愛を語ってくれた中本さん。
ちなみにとくに好きな花は、寒さや暑さに耐えながら、花開く時をじっと待ち、うつむいてひたむきに咲く「クリスマスローズ」だそう。

「もともとよく下を見て歩いていたりするんですけど、そんな割れ目のところに雑草が生えていたり、誰にも見られないようなきれいな花とか、ただひっそりきれいに咲いているのを見ると愛らしいなと思ったりします。作った風景とかではなくて、当たり前に日常的にある風景で写真を撮ってあげるときれいに見えるのかなとか。グリーンとコンクリートのグレーの対比がきれいで好きで、インスタグラムとかでもさすがに毎回それでしつこいかなと思うこともあるけれど、やっぱりしっくりくるんですよね」


「コンクリートから命が出てきて、根を下ろしているのを見るとたくましさを感じます。そういう風に自分も生きたいという尊敬のまなざしです。植物はスゴいです!」


 

今後


アトリエか店舗、自分の活動の拠点になる、自分と花たちの場所を持ちたいとのこと。
「あとは……自分の作品をたくさん作りたい、ワークショップを開きたい、フランスの田舎町の花と植物に触れたい……まだまだたくさんのことを学んで、成長していきたいです」


中本さんが花の道に入って約8年。
「これまでいろいろ苦しんだり壁にぶつかったり悩んだり、自分には向いてないと思ったときもありました。自分なりに花と植物と向き合い、その時時に花と植物を通して出会えたすべての人に感謝しています。いまの自分があるのは、これまでに出会えた人たちがあるからこそだと思っています。そして、そんな出会いをくれた花と植物に、感謝です。これからどんな未来になるのか、期待しつつ」

なにごとも「思いやりがすべてだと思っています。人や物、何にでも思いやりの気持ちをもつことが一番大事だと思います」と、人も、植物も、モノも大切にする中本さんの、今後もとっても楽しみです。




文/植物生活編集部
撮影/北恵けんじ(中本さんの受賞作品、インスタグラムからの写真以外)


話をうかがった人
ルフルロン 中本健太さん

花を飾り、植物を傍に。言葉をもたない花や植物の言葉にならない沢山の魅力を伝えていけたら。ひとつひとつ丁寧に、やさしさをそっと添えてこころを込めて制作しています。広島県在住。店舗を持たず、地道に小さな事からコツコツと。37歳、酉年。趣味は、写真を撮る、読書(花の本)、花屋さん・雑貨屋さんめぐり、愛犬と遊ぶこと。

【インスタグラム】 @le_fleuron
【フェイスブック】@kenta.nakamoto.180
【ブログ】 https://shokubutsuseikatsu.jp/users/lefleuron/




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