植物生活編集部 植物生活編集部 17ヶ月前

植物生活なあの人 vol.4 細根誠/しろくま生花店



新進気鋭のフローリストでミュージシャン。
新宿・牛込柳町に「しろくま生花店」を構える細根誠さんは、ちょっと異色の肩書きをお持ちです。

細根さんが手がけるフラワーデザインは、季節感が色濃く反映された、ナチュラルで繊細なものばかり。
しかし時には、見る人の意表をつく、斬新で遊び心あふれるデザインも生み出します。
そうした豊かなアウトプットを可能にする細根さんの感性は、どのように養われたのでしょう。
学生時代から現在にいたるまでのお話を伺うとともに、その秘密を探ります。



バンドの一時解散後、飛び込んだのは草花の世界

 都営大江戸線・牛込柳町駅より徒歩およそ2分という、好立地にある「しろくま生花店」。
店先には手作りのトタン屋根や看板が設置されており、親しみやすさを感じます。



また、店内に足を踏み入れると、木の質感が強く残るカウンターや珪藻土で覆われた壁など、どこか懐かしいインテリアが多くあることに気がつきます。
聞けば、そのほとんどが、細根さんが手がけたものなのだそう。


 「昭和初期など、古い時代を思わせる生花店にしたくて。天井が低いので叶わなかったのですが、本当は店の中に、小上がりも作りたかったんですよね」


 こだわりと独自の世界観を感じさせる生花店ゆえ、わざわざ足を運びたくなる魅力があります。
実際、近隣の住民はもちろん、遠方に住む人も「しろくま生花店」を目指してやってくるそうです。

 細根さんが「しろくま生花店」を開いたのは、自身が36歳だった2009年のこと。

“話上手ではないので、うまく説明できるかわからないのですが”

と、はにかみながら、生花店をオープンさせるまでのいきさつを語ってくれました。



 静岡県に生まれた細根さんは、東京農業大学への進学をきっかけに上京。高校時代から続けてきたバンド活動が実を結び、大学卒業と同時にフォークデュオ「ブリーフ&トランクス」のメンバーとしてメジャーデビューします。

「ブリーフ&トランクス」がテーマとするのは、「半径5メートル以内の日常生活」。
日常に潜むユニークな事象を独特な目線で歌った楽曲は、中高生を中心に人気を集めました。
しかし、相方である伊藤多賀之さんの発病などがきっかけとなり、デビュー後およそ2年でデュオは解散することとなります。

 「バンドを解散した直後は、これからどうしよう、と一瞬迷いましたね。でもすぐに、“心機一転して、なにか新しいことを始めてみようかな”と、前向きな気持ちになりました」



 真っ先に頭に浮かんだのは、農業大学時代に学んだ、農作物をはじめとする植物のこと。
花に関してはほとんど知識がなかったものの、興味の赴くままに大学時代の同級生が営む生花店の門を叩き、草花の世界に飛び込みます。
それからは、鉢への水やりや花の切り方といった基礎技術からフラワーデザインのノウハウまで、幅広く学ぶ日々。
月日が経つにつれ、草花の魅力にとりつかれていったそうです。
また、日常的に草花やフラワーデザインに触れるうち、新たな感覚や目線が養われるのを感じたそう。


 「“世の中には、本当にたくさんの植物があるんだな”とつくづく思い、桜やひまわりといったポピュラーな花だけでなく、道端に咲く草花にも興味を持つようになりましたね。造形美にも惹かれ、草花だけでなく、様々なもののフォルムや色合いにも注目するようになりました」
 

自然物の観察を通して養われた、確かな感性



 近年、細根さんが好み、そして得意としてきたフラワーデザインのひとつが、“流れ”を感じさせるナチュラルな印象なもの。

作品群を見ると、あらゆる自然物を観察することで培われた、形や色に対する豊かな感性が発揮されているとわかります。

また、その感性は確かで、時には斬新なアウトプットも可能にするよう。
昨年開催された「かながわ花フェスタ21 第9回フラワーデザインコンテスト クイーンズカップ」に出場した際は、現代アート作品に限りなく近いユニークで印象的な作品を出品し、見事に優勝を勝ち取っています。

 細根さんがフローリストとして独立し、「しろくま生花店」を開いてから、もうすぐ10年が経とうとしています。
草花やフラワーデザインに対しての興味は尽きることがないそうで、まだまだ知識と腕を磨きたいと、細根さんは話します。

 「コンテストに作品を出品したり、フラワーデザインのレッスンに参加したりと、意識的にレベルアップを図っています。また、もっと多くの人たちに『しろくま生花店』の存在を知ってもらえるよう、SNSに作品の写真をアップするようになりましたね」




 2012年に再開した「ブリーフ&トランクス」としての活動も、楽しみながら、順調に進めているよう。

 「僕にとって歌とは、エンターテイメント性が強いもの。自分もすごくエキサイトしていますし、人に楽しんでもらうためのツールでもあります」

草花やフラワーデザインも、人に楽しんでもらうためのツール。
そういう意味では歌とフラワーデザインは、僕にとって似通った存在なのかもしれません、と続けます。

 当然ながら、フラワーデザインと歌は、全く異なる表現手法。
それでも両者は、細根さんの中で深く繋がり、影響を及ぼし合っているのかも……。
強いエンターテイメント性をも感じさせる、「クイーンズカップ」での優勝作品を眺めていると、そう思わずにいられません。

 時に、揺るぎない才能をのぞかせる細根さん。
今後も花業界と音楽業界の両方で、異彩を放つ存在であり続けるでしょう。


取材・写真/緒方佳子


話をうかがった人

細根誠
しろくま生花店
http://www.4690.in



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