植物生活編集部 植物生活編集部 14ヶ月前

Botanical TRIP 私の好きな、地元のこと。#07 奄美の古代天然染色工房


海外、街、自然、いろんなものごとに刺激を得ながら
創作を形にしていく過程。
その源を探る旅に出てみます。
その名も「ボタニカル・トリップ」
今回は、鹿児島県の奄美大島へと旅します。
 

Botanical TRIP vol.7
奄美大島「古代天然染色工房」




1300年の時を超え、世界三大織物の一つとなった大島紬。
鹿児島県の奄美大島で製造され、製造過程が非常に細かく、一反を織るのに半年以上かかるとも言われています。
30以上の工程を経て仕上がる、「泥染」という染色方法を行っているのが、今回うかがった金井工芸です。
美しい仕上がりを大きく左右する「泥染」。
今回は、伝統の奄美泥染を発展させて注目を浴びている、金井志人さんに大島紬と泥染について「植物」を切り口としてお話を聞きました。



植物の力で染める泥染

奄美大島の泥染には、車輪梅(シャリンバイ)というバラ科の植物が使われます。
奄美の言葉では「テーチ木」と呼ばれていました。
山から伐採されたこのテーチ木を数日かけて煮出し、染色の材料にしているそうです。

テーチ木の中のタンニンが、泥田(染色の工程を行う鉄分の入った泥の水溜)の鉄と反応して黒く染まります。
この反応を利用し、何度も繰り返し染色作業を行うことで大島紬特有の漆黒が現れるのです。



サスティナブルな仕組みで続く泥田

ザブザブと布を洗う泥田は、膝のあたたりまでの深さ。
ここにずっと昔からあり、金井さんの染色作業になくてはならない場所です。
泥に含まれる鉄分とテーチ木の化学反応で行う泥染。
泥の鉄分が少なくなったなと感じたら、蘇鉄(ソテツ)の葉や茎を泥田に放り込むそう。
そうすることで、いつまでもサスティナブルに泥染ができるのです。



このキメの細やかさが、繊維を傷つけず泥染に適しています。




自然の恵みを無駄にしない 

染料としての役目を果たすテーチ木は、木片として煮出した後も無駄にはしません。
乾燥させて、燃料として活用。
さらに、その灰は藍染や釉薬、郷土菓子の灰汁巻きに再々利用されます。




テーチ木を機械で粉砕します。




大きな釜で煮出したテーチ木を乾燥しています。
なんと、この機械も、粉砕する機械も、もはや作っているメーカーはないそうです。
故障したら?と尋ねると、

「パーツごとに修理したりして、なんとか……。もともと自然の中でやっていた作業なので、機械がなくともなんとかなるかな。いや、大変ですね」と金井さん。



あるものはありがたく使い 
ないものは自ら作り出す


日本国内を見渡すと、同様に様々な工芸産地が直面しているのが、存続の危機。
大島紬も例にもれません。
しかし金井さんは多くのブランドとコラボレーションしたり、
現代の生活に展開できるアイテムを開発したり。
多くのメーカーさんがロールモデルとして参考にされています。
「紬にこだわることなく、色々試しました。絣ではないものに泥染を使ったり。
けれど、自然の力を借りる知恵を伝統的に守りながらも、現代に使いやすくて魅力的なものを作らなくてはと思います。
しかも、品質は良いもので」



 

奄美だからできること 
奄美に生きる人々

ほかの地域ではできない、奄美大島の生態系があってこそできる大島紬。
台風が直撃することも多く、その度に工程がストップすることもあるそうです。

取材で訪れた時には、台風が特に多かった年でもあったため、その影響で屋根が吹き飛んでしまっていました。
過去にも多く被災し、染色の工程を行う、鉄分の入った泥の水溜である泥田に、土砂が流れ込んだりする被害もありました。



美しい青い海も、青い空も時にその表情を一変させます。




山一面の豊かなソテツの森。
このソテツが大島紬の黒を引き出す根幹なのです。
ソテツもシャリンバイも、自分たちの手で、必要な分だけ必要な時に伐採するそうです。




看板猫を横目に、ギャラリーショップへ。
南国は猫がよく似合います。


暮らしに寄り添うこと 
伝統を守ること


金井工芸では染色体験もでき、
現代のライフスタイルにも寄り添ったアイテムが揃うので、多くの観光客が訪れます。




泥染だけでなく、藍染などカラフルなものも多数並んでいます。
ほかで見ることができない、このサンゴ礁の染めもの。
一つ一つのサンゴの表情と、染色の微妙な組み合わせ。

店内には新しいアイデア、島内外の方との
コラボレーション作品・商品がたくさん!



「藍染ドライフラワーのハーバリウム」
植物生活としては、とても気になりましたのでお話を伺ったところ、
奄美にあるお花屋さんH.O PROJECTとのコラボ作品とのことでした。






「どんなに災害があったとしても、
そもそも自然の恵みなくして、私たちの仕事は行えません。

あるものをありがたく使わせてもらう。
それが、奄美で生きていくということだと考えています」



金井さんの言葉が、胸に響きます。



撮影/別府 亮

文・取材/植物生活編集部




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