植物生活編集部 植物生活編集部 2019/01/23

Botanical TRIP 私の好きな、地元のこと。#08 奈良「種木屋 塩津植物研究所」


海外、街、自然、いろんなものごとに刺激を得ながら
創作を形にしていく過程。
その源を探る旅に出てみます。
その名も「ボタニカル・トリップ」
今回は、奈良県の種木屋さんを訪問します。
 

Botanical TRIP vol.8
奈良「種木屋 塩津植物研究所」




いまではなかなかその名前を聞くことはなくなりましたが、盆栽や和物の観賞用の樹木を育てる人たちのことを「種木屋さん」と呼びます。
植物が大好きで、とにかく木に関わる仕事がしたいと始めた植物研究所。
紆余曲折あって、奈良に自分たちの「場所」を見つけた塩津丈洋さん、久実子さん。
ここに来てくれる人をたくさん笑顔にしたい、そんな思いで営んでいる種木屋「塩津植物研究所」は、今日も多くの「草木と人の関わり」で溢れます。



もともとは「植物を売らない店」というコンセプトで東京・世田谷に店を開いた塩津さん。
日本には花店が二万店舗くらいあると言われていますが、もちろんそのほとんどは植物を販売する店。
塩津さんは、買われた植物をその後、メンテナンスしてあげるようなイメージのお店を作りたかったそうで「植物研究所」という名前もそういうことに由来しています。



人伝などで評判は広がり、2年ほど経ち、次第に相談も入ってくるように。
さらに、インターネットを通してじわじわと増えていき感じたのは、

植物が弱った時に「どうしよう?」と困っている人が世間にはたくさんいる、ということ。


 植林はもちろん、農家、林業、お花屋さん、植物に関係する多くの経験してきた塩津さん。
学生の頃から、プロが何をして、どんな生活をしているかを直接見に行ったりするなか、いちばん興味深かったのが盆栽でした。



しかし盆栽と長く関わるうち「種から育てたい」という思いがどんどん強くなっていったのです。

「原点回帰というか。そこで種からいのちを生み出す仕事をしたいと思いました」




盆栽を仕立てだけではなく種から育てるとなると、必要となってくるのは場所。
自然とはそういうものですが、植物は太陽の光を浴びて、雨が降り、風があたるという環境のほうがよく育ちます。
東京では厳しい面も多く、自分たちの暮らしもできるだけシンプルで自然にしたいと思ったそうです。


塩津さんご夫婦は、奈良県と和歌山県出身の二人。


「地元には広い土地があって、家族もいるわけですから、仕事のためだけに関東にいることにすごく違和感がありました。何よりも、ここ奈良の土地が気に入ったし、植物と一緒で根をおろす場所が必要だなって思いました」

東京とは全然違う植物の育ち方があるようで、水も井戸の水を使い、鉄分が多い井戸水は植物にとっても良く、鉄をあげると緑が綺麗になるそうです。



「奈良に来てから言い始めたんですが、自分たちのことを草木の駆け込み寺と言っています」

塩津植物研究所は、場所は変わり昔と形は変わっていても「植物を長く大切に扱ってほしい」という想いは全く変わっていません。

植物も人と同じように、「弱ったら病院に連れて行くものだよね」という認識が広がったらいいと塩津さんは言います。




目指すのは、草木の駆け込み寺。

「たくさん枯らしてしまってもう育てるのをやめてしまった」
「好きな植物が見つからない」
「植物が弱ってしまってもう何してもダメだ」
悩んだ人たちが、あきらめてしまうまえに「あそこに駆け込めば解決する」という、そんな場所。
そのために、日々研究をされています。







持ち込まれる多くは
モミジ、苔玉など日本の植物。
盆栽の他にもサボテンや観葉植物など幅広い植物が持ち込まれます。

「奈良には、遠方から自らの鉢を持ってきてくださるお客様もいるので、そういう場合は状態を見て、その場で植え替えたり、管理の方法をアドバイスします。そのままダメになってしまいそうな植物もいるけれど、枯れてないもの、弱っているだけのもので、あれば大体治ります。メールでも、添付してもらった写真を見て、いくつか質問に答えてもらえば、おおよそ理由はわかります。」




そこで、塩津さんに、ガーデニング歴7年の編集者が個人的に質問してみました。

・虫に葉が食べられて、裸になってしまいました。オリーブの葉がテントウムシにほとんど食べられてしまって、残り3枚くらいしか残っていないのですが。テントウムシは除けたけれど、これはどうすればいいですか?

塩津さん:

「それだったら大丈夫です。葉っぱが急激にやられているから肥料をまいたほうがいいです。光合成できていないから、栄養をあげるという意味で。粒より液体の方が効きが早いので、液体の肥料をおすすめします。緊急のダメージには液体を用いてください」

・鉢植えの土は、ずっと同じ土でいいのですか?5年くらい変えていない鉢がうちにあるのですが。

塩津さん:

「両手で持てるぐらいの鉢の大きさだったら、だいたい3年くらいです。持ち上げられない重たいものだったら5年ぐらい。鉢から植物を抜いて、根っこの土を払って、全部新しいものに変えましょう」

・手軽に育てられるというハイドロカルチャーなども土を変えた方がいいですか?

塩津さん:

「本当は変えた方がいいです。根はどんどん成長するし、枝も出てくるので、最後は器の中にぎゅうぎゅうになってしまいます。そうなると自分の根っこで窒息死してしまうこともあるんです。入れ物を変えるか、どうしてもその器が良ければ、一度取り出して根を切って、またハイドロカルチャーを入れるかのどちらか。そうしていかないと鉢に入れる樹木は、最後には限界がきてしまいます。永久的にというのは難しいです」

・手軽なものはありますか?

塩津さん:

「手軽なものがいいと思われているようですが、手がかかるものって、やっぱり可愛いんです。盆栽は最初は難しいと敬遠されることもありますが、時間をかけてあげればあげるほど、ちゃんと形になりますから、そういうところが醍醐味です。あとは植物との時間をたくさん費やしてもらえるから、それも勧める理由です。手がかかるんでしょう?と聞かれることがあるけど、だからいいんですよ!と僕は答えています」




 「鑑賞価値が低いとされている木がありますが、それは人間が勝手に決めたこと。野山には容器には入れられていない美しい木がたくさんあるのです。そういう木のタネを撒いて芽を出したり。種木をやってて自由に楽しくできるのはそういうところ。自己満足かなとも思うけどそういうものが結構売れたりします。そういう時、間違ってなかったんだなと思えます。」



種からまいて、間もない姿。
これからどんな姿にでもなり得る植物。
技術や知識がなくても、買った人が育て方ひとつで自分好みに変えていけるのです。



「種木の良いところは、自分で作り変えられる未来があるところ」と塩津さん。

それが、種木屋と名乗る所以だそうです。

ご自宅の植物相談に、新しい植物の出会いに。
奈良へのBotanical tripはいかがでしょうか?

塩津植物研究所 http://syokubutsukenkyujo.com

※訪問は事前にご連絡をお願いします。




撮影/高見尊裕

文・取材/植物生活編集部




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