植物生活編集部 植物生活編集部 2019/01/31

北欧流「ヒュッゲな暮らし」で 冬の時間を楽しく豊かに <後編>

家族や親しい仲間と温かでほっこりとした時間を共有する、デンマーク特有のライフスタイル「ヒュッゲ(Hygge)」
日本で今、注目を集めるこのシンプルで心地よい暮らし方について、北欧流ワークライフデザイナー、芳子ビューエルさんにお話をうかがいます。
インタビュー後編では、デンマークの人々にとって欠かせないインテリアアイテムや、住まいへの植物の取り入れ方を通して、日本で「ヒュッゲな暮らし」を楽しむためのヒントを紹介します。
 


デンマーク人がこだわる、ヒュッゲなインテリアとは


「わが家」が大好きなデンマークの人々。
快適な空間を演出するため、家具やインテリアにはとことんこだわります。
特にデンマークらしいアイテムについて、ビューエルさんに挙げていただきました。


◎温かな空間を演出する照明器具

「日照時間が短い冬のデンマークでは、人々が家で過ごす時間も長くなります。心地よい空間づくりのためには、照明のセレクトはとても重要」と話すビューエルさん。
デンマークの家庭では、電球の色は温かみのある「電球色」がメイン。日本の蛍光灯のような、部屋全体を照らす照明はほとんど使いません。

ダイニングルームでは、長さを調節できるタイプの、シンプルでモダンなデザインのペンダントライトが一般的。ライトの明度を調節するための調光機能がついているのも特徴です。

また光源は一つということはなく、リビングルームでは必ずいつくかスタンドライトを置くのもデンマーク流。
「料理や、テーブルを囲むゲストの顔ぶれに合わせて光源の高さと明るさを調整したり、その日の気分に合わせてスタンドライトを使い分けたり。照明器具によって空間の雰囲気を演出するのが、デンマークの人々はとても上手です」
 

◎癒しの時間をくれるキャンドル

「長く暗く、寒い冬を耐えなければならないデンマークの人々にとって、自然の炎は明るさや暖かさの象徴。パーティーなどでキャンドルを使用する国は多いですが、デンマークでの日常使いの頻度とは比べものになりません」とビューエルさん。

「デンマークは室内の照明が暗めですが、キャンドルの炎を美しく見せるために、あえて照明を落としているのでは、思うくらい(笑)」

家庭では、外が薄暗くなると室内のあちこちにキャンドルを灯します。シンプルな白いキャンドルが主流で、長さや大きさのバリエーションも豊富。テーブルの上だけでなく、玄関にキャンドルを灯してゲストを迎えることもあります。
キャンドルのゆらゆらと揺れる炎をながめていると心が落ち着き、時間の流れを忘れます。日本でも人気のキャンドルは、手軽にヒュッゲな時間を演出できる好アイテムといえそうです。


◎自分だけの居場所をつくるマイチェア

「マイチェア」とはその名の通り、自分専用の椅子のこと。デンマークの人々の多くがマイチェアを持っています。形はリクライニング式だったり、ロッキングチェアだったりとさまざまですが、「家に帰ると真っ先に腰をおろしたくなる椅子、心からくつろげる椅子」であることが必須条件。

1人1脚とは限りません。家族3人なのに、椅子は10脚、という家庭もあるのだとか。各自が好みの椅子を集めた結果ですが、揃っていなくても気にしないのがデンマーク流です。
マイチェアの隣にコーヒーや読みかけの本を置くサイドテーブルを用意し、その横には、マイチェアに座って本を読むための高さの合ったスタンドライト。この3つが揃えば「ヒュッゲな空間」ができあがります。

「たとえ狭い家の一角でも、お気に入りの椅子が1脚置ける場所があれば、自分だけの素になれる空間と時間を持つことができます。日本でも忙しい人にこそ、マイチェアを持つことをお勧めしたいですね」


この写真は、ビューエルさんがインテリア·アドバイザーとして関わる、東京建物株式会社のマンション「Brillia八潮」のモデルルームの様子。
「都心にも暮らしにも近い時短ライフを叶えるヒュッゲなレジデンス」というテーマに合わせて、インテリアをセレクトしています。
 


デンマーク流、植物とのつきあい方

庭やベランダで植物を育てることはもちろん、部屋の中に植物を飾り、自然と緑を取り込むのも、ヒュッゲなライフスタイルの一環です。
 

◎リーズナブルな花を投げ入れて

デンマークでは、オランダで輸出用としてはじかれた2級品や3級品の花々が流通し、花屋では10~20本の束になってリーズナブルな価格で売られています。それを、大きめのフラワーベースにポンと投げ入れるのがデンマーク流。

また、野原に咲いているマーガレットやポピー、アザミなどのほか、雑草と呼ばれるような草花を切ってきて飾ることも。花でなくても葉がきれいな植物も好まれます。

「日照時間短い冬のデンマークでは、特に家の中に植物は欠かせませんね」
 

◎球根花を植えて春を待つ

庭のある家では、秋になるとチューリップやヒヤシンスの球根をたくさん植えて春を待ちます。
また、庭のあるなしに限らず、球根花をガラスの平たい器や、少し深みのある陶器のお皿などに寄せ植えをして部屋に飾ることも一般的。球根が少しずつ花を咲かせていく様子を眺めながら、春を待つのがデンマーク流です。

庭に植える植物では、毎年花を咲かせる多年草や宿根草も人気があります。

「デンマークでは庭もつくり込んだ印象がなく、とてもナチュラル。不揃いのよさを楽しむところがありますね。また芝生の代わりに、グラウンドカバー·プランツと呼ばれる常緑の小さな多年生植物をよく用います。芝生のように定期的に刈る必要もなく、自然的な雰囲気を演出できます。私も自宅の庭で愛用しています」
 

◎ベランダで自然を楽しむ

「デンマークのレンガ造りのアパートでは、ベランダの柵がプランターを兼ねているところもあります。人々はそこに球根を植えたり、草花やハーブの種を蒔き、春を待ちます。そして夏の花、秋の花と植え替えて冬が来るまで自然を楽しみます」とビューエルさん。
ベランダにお気に入りのマイチェアとサイドテーブルを置いて花を眺めたり、夜はキャンドルを灯して過ごすのもヒュッゲな楽しみ方の一つです。





ヒュッゲとは、日本人の価値観にも通じる
「シンプルに暮らしを楽しむこと」


ビューエルさんの著書『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』では、収納の工夫や狭い家を広く見せるコツ、家具の選び方、おもてなしの方法など、さまざまな分野にわたってデンマークの人々の暮らし方のノウハウが紹介されています。すべてに共通するのは「無理せず、気負わず、自然体」であること。読んでいると、すーっと肩の力が抜け、「自分にも真似できそう」という気持ちになります。

「でもヒュッゲは、決して異国の特殊な生活文化ではないのですよ」とビューエルさんは語ります。

「消費大国といわれる日本ですが、少し前までは、シンプルでミニマムな美意識大切にするミニマリストでした。また、伝統的な家族団らんの習慣や価値観と、ヒュッゲの精神の間には共通点は多いと思います。たとえば、ひと昔前に日本でおなじみだった“家族全員でこたつを囲み、みかんを食べること”もヒュッゲの精神。各自が、携帯電話をさわったり別のことをするのではなく、そこにいるメンバーが一つの話題で盛り上がったり、ゲームを楽しむなど、一緒の時間と空間、体験を共有することがヒュッゲなのです」

たまにはスマートフォンを置き、家族や友人、気のおけない仲間と家の中で語らいながらゆっくりと食事をし、予定を決めずにのんびり過ごしてみる。本当に必要なモノだけを取捨選択し、生活をシンプルにしてみる。ヒュッゲをお手本に、自分らしい暮らし方を探してみたいですね。

文・取材/植物生活編集部
写真/小林写函


話をうかがった人

芳子ビューエル
Yoshiko Buell

株式会社アペックス取締役社長、株式会社アルト代表取締役、北欧流ワークライフデザイナー、通販コンサルタント。
高校卒業後にカナダに留学、カナダ人男性と結婚。現地の企業に勤務し、帰国後、1989年、群馬県高崎市に輸入商社株式会社アペックスを設立。98年、J ETROよりライフスタイルのスペシャリストとして北欧に派遣され、99年からアペックスにてデンマーク寝具の輸入販売をスタート。現在は北欧ブランド7社の日本代理店代表を務め、多くの北欧雑貨を日本に紹介した実績から、「北欧輸入の第一人者」と称される。
2006年、同市に輸入雑貨·インテリア販売を手がける株式会社アルトを設立、北欧家具や照明器具の輸入販売を開始。17年にインテリアショップ「アルト」、カフェ「ヒュッゲ」をオープンし、北欧関連の商品を日本向けにカスタマイズした形で提案している。
著書に『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』(大和書房)など。
現在、埼玉県八潮市に建築中のヒュッゲをコンセプトとしたマンション「Brillia八潮」にて、インテリアに関するアドバイザーとしてプロジェクト参加中。

株式会社アペックス
http://www.apexb1.com

株式会社アルト
https://www.alto-star.com

芳子ビューエルさん公式ブログ
http://yoshiko-buell.com





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