吉野みゆき 吉野みゆき 2019/02/26

有機的里山暮らし<vol.4>金継ぎしごと。

都心から、山と湖のある町に移住したのは10年前のこと。
自然に魅了され、触れ合ううちに、いつしか植物との関係は切っても切れないものになりました。
ふと気がつけば、自然と共にあって、植物の恩恵をうけている里山暮らしの、ちいさな、ちいさな楽しみを連載しています。
 

金継ぎのこと。

今回は、古物好き、うつわ好きの私の楽しみ、金継ぎを紹介します。
壊れたうつわを繕う技法であるのは、ご存知の方も多いでしょうか?
金継ぎと言っても、金で継いでいるわけではないのです。
漆という木の樹液を使って、うつわの欠けや割れを継ぐ、古来からの技法です。
金で装飾するのは、室町時代の、茶道の世界から始まったのだとか。
直した箇所を、『景色』が増えたと言い、愛でて楽しんでいたそうです。

私は、金継ぎを始めた頃、思ったより遥かな時間を要する事にかなり戸惑いもありました。
作業工程の多さに加えて、漆を乾かすのに2〜3日以上は間をおかなくてはならず、
一つの器の修繕に、なんと1年以上かかってしまったり……
ああ、仕事を増やしてしまった、手をつけなければ良かったかなと、やや後悔もありました。
そんな私でしたが、続けていくうちに金継ぎの奥深さに触れて、伝統的な技法にすっかり魅了されてしまいました。


金継ぎ教室にて

私が習っている、KiKuRaでの作業を紹介します。
本当はこれ以前に長い行程があり、ここからは、クライマックスです。
絵漆(赤い漆)で銀粉を撒く前の下塗り作業。
漆を扱う時は、かぶれないように、手袋をしています。
なるべく細く、美しい線が描けるように、これは、緊張の一瞬です。
そして、漆を乾かす時間には、温度と湿度が関係しているので、季節に合わせて調整が必要なのです。
なんとも、自然界との繋がりを感じずにはいられません。


漆が程よく乾くのを待ち、銀粉を粉筒に入れ、トントンと蒔きます。
あれ?金ではないの?と思いましたでしょうか。

金粉の他にも銀粉や絵漆という、色付きの漆で仕上げることもあります。
うつわの色や雰囲気に合わせて、配色をデザイン出来るのも楽しいものです。
近頃、金粉がとても高価なので、今回は銀粉で修行中。
 



そして、ここからは、2週間後の教室です。
乾いた銀を磨き、輝きを出す工程。この道具、何と鯛の牙!
先人の知恵には、しばしば驚かされます。
その上、これはセンセイのお手製なのです。



完成しました!(やっと!)
実は前回、下塗りを乾かしすぎてしまい、銀粉がのらなかったのでやり直し、というハプニングが……。
失敗を重ね、喜びもひとしお。

これ以前の行程も、漆で継いでは乾かし、はみ出した部分や出っ張りを丁寧にヤスリがけ、などの作業を繰り返し、たびたび失敗もあり、とても手間隙のかかる仕事なのです。

その賜物であるゆえ、金継ぎされたうつわは、もちろんお気に入り上位にランクアップ!


こちらは、角の漆が取れてしまったところを、塗りなおし修繕しました。

昔の人の知恵に想いを馳せ、繊細な目で物をよく観察し、丁寧な仕事をする時、佳き時間だなぁ、と。
金継ぎしごとの後は、なんだか心も満たされています。
スピード感が増していく現代に生きるには、こんな時間が大切なのだと感じます。

拭き漆仕上げのお椀

もう一つ、近頃の漆しごと。
こちらは、生地で買ったお椀を、拭き漆で仕上げました。
初めに表面全体をサンドペーパーで滑らかにしたら、専用のペーパーで、塗る、拭き取る、乾かす、を幾度も繰り返します。
拭き漆の、作業は単純なので、気楽にできます。(漆かぶれには注意!)
使って行くうちに、漆が擦れてしまったら、また塗りなおせるのも魅力なのです。
環境にも、優しいですね。

ほんの一部しか紹介できませんが、漆という、植物の力を生かした、金継ぎの魅力を感じていただけたでしょうか?

自分で直したうつわで、食卓に新しい『景色』を楽しむ時は、密かに、誇らしくて、嬉しい気持ちになります。
これからも、もっと様々な技法を習得していきたいと思います!


古い絹問屋の倉を改装した、雰囲気たっぷりのアトリエにて。

文・写真/吉野みゆき


学んだ場所

金継ぎ教室&漆教室 KiKuRa -器の蔵-
山梨県上野原市上野原2041
tel:050-5359-3461
講師 西山 陽

facebook@KiKuRa -器の蔵-
メール:kikurainfo@gmail.com


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この記事のライター

吉野みゆき
吉野みゆき

吉野みゆき ファッションスタイリスト、エディターを経て、結婚、二児の母となる。 10年ほど前、都心より、山と湖のある里山に移住。自然と繋がっている、手しごと、美しいもの、素敵なことを研究中。

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