続・きょうの花活け 花と鎌倉とウーロンと、ときどき茶話。/vol.10 桜折曲輪
vol.10 桜折曲輪
こんにちは! CHAJINです。
こちらは、かつて月刊フローリストさんで連載させていただいていた
「花と鎌倉とウーロンと。」のエピソード2……?
はたまた、
その連載をまとめた本「きょうの花活け_花と鎌倉とウーロンと。」の続編……?
とでも言いましょうか~。
季節ごとに出逢う日々の花あしらいについて、
花活けを始めたばかりの植物好きなアラフォー女子のMちゃんに
わかり易~く(時に脱線しながら)お話ししてゆくWEB版の花教室……、みたいなコーナーです。
そして二人の花トークの後は、
アトリエのある鎌倉界隈についての茶話や、
愛猫ウーロンの親バカ話など……諸々な由なし事も綴っております。
そんな彼此と緩さ満載ではございますが、
皆さまの日々の花活けに、少しでもお役に立てればうれしいです。
それでは今回もよろしくおねがいします~!
桜の枝を、部屋で
CHAJINさん(以下C)「今回は桜です。この記事が更新されるころには、桜の時季は過ぎちゃってるんですけど」
植物好きなアラフォー女子M(以下M)「桜って外で見るけど、家の中で飾るっていうのはあんまりやったことがないというか」
C「そうですね~。街で見たりとか、そういうのがいちばんよくあるパターンだと思うけど、でも桜の季節は花屋さんによっては桜の枝とかを売っているので家で楽しむのもありかと思います。スタンダードなのは、枝をそのまま器に投げ入れて飾る感じで」
M「ふんふん」
C「桜の枝もサイズはいろいろありますけど、それなりに大きいからね」
M「確かになんか、大きそうなイメージがあります」
C「ね、だからちょっとコップとかにはなかなか活けづらいので。逆にこの“桜を飾る”っていう機会にそれなりの花瓶を買うきっかけになるかな~という気はします」
M「ふむふむ」
C「よく生徒さんとかにも聞かれますけど、持っているといい花瓶ってどんなのでしょうって」
M「あぁ、知りたいですね~」
C「いくつかあると思いますけど、いわゆる円柱のやつとかはよく売ってますよね」
M「はい」
C「ガラスであったり、陶器であったり。円柱の花器は枝ものにも対応できるし、長さのある切り花とかでも飾れるのでいいですよね」
M「なるほど」
C「あとは、ちょっと気持ち上に放射状に広がっているような形の器とか。器のフォルムに準じて花を入れればしなやかに放射状になりますよ」
M「いいですね、自然といい感じになってくれるみたいな!」
C「自転車で言うと補助輪みたいな感じでしょうか。身を任せておけば形を整えてくれるみたいなのはありますね~。あとは本みたいな形。よくブック型とか言うんですけど」
M「薄い四角型のガラスの器ですよね」
C「そう、あれは、たとえば左右の長さはあるけど前後の奥行きはタイトなので、花をパサッと入れたときに幅が狭いからそこで花を支えてくれて。横長の長方形だとしたら、右か左の端にパサッと花を入れてその狭いところで止めてくれるのと、あと残りのところはなにもない空間でもそのコントラストとして絵になりやすいんです」
M「そうなんですね!」
C「はい。だからまず揃えておくといい花器としては円柱型とか、ブック型みたいなもの。そしてやがて花が朽ち果てたときに短く切って活けられるような一輪挿しの延長みたいなもの。その辺りを持ってると便利かな~と。それが三種の神器かもしれませんね」
M「三種の神器! メモメモ。……でも今回は、これはなんの器なんでしょう?」
C「あ、そう言っておきながら今回は実は、片口みたいな変わったタイプの器です(笑)」
M「なんと(笑)」
C「10年以上前にフラッと出合って、なんかいいなって。大体僕が食器とかを買うときは、花活け目線なんで」
M「この器に花、活けられるかなっていう基準なんですね」
C「はい、これになんとかペペロンチーノとかそういうものを盛りたいっていう目では一回も見たことがなくて(苦笑)。今回の器はお皿のような薄い丸い形ですけど、周りが少し甲高になっているっていうか、ちょっと高さがあって」
M「そうですね、フチが高い」
C「そのフチを利用して枝を巻き込んでいます。こういう器と同じものを見つけるのは難しいかもしれないけど、まったく同じでなくても形状が似ていたらできるかも。従来桜とかは自然の借景に倣って、枝が伸びやかに伸びてそこから蕾が開いて、やがてパラパラと散って……とそういった動線が見慣れた風景なので、そういう飾り方がスタンダードなんだけど。たとえば3年目の春とか、5年目の春とかに(笑)」
M「いつもとちょっと気分を変えようかな、みたいなときに?」
C「そう、そんなことになったらちょっと器の方で整えてもらってもいいと思うんですね」
M「器を変えて、活け方も変えてみるみたいな感じですね」
C「この(花を活けた)ころはよくリースを作ってたりしていて」
M「これもリースっぽくってかわいいです」
C「桜という直線のイメージのある枝ものを少し輪っか状にする、その非日常の風景がオモシロいかもなって。ただ輪っか状にするには、低くてフチのある器の中に巻き込むこと、あとはあんまり太い枝だとなかなか曲げられないので、ちょっと細めの枝とかだと曲げやすいですね」
M「なんか枝って硬いイメージがあるので、こんなにこうクルクル器の中で回っているというのに割と衝撃なんですけれど……」
C「そうですか~。(器に)それなりの直径があった方が回し込めますね」
M「この作品はどれくらいの大きさなんですか?」
C「大体20~30㎝くらいですね。そのサイズの器に、何本かの桜の枝を巻き込んでいるんです」
M「長いのをグルグルやっているわけではなく、何本かを合わせているんですか! 納得がいきました」
C「そう、何本かをつないでます。しかもメインの枝から派生している枝分かれした柔らかい枝振りを使っていて、そういうセレクトの妙もありますし。あとは、“折り”を入れるって言って、枝の幹の上半分を折って下半分はつながっている、みたいな状態にするんですけど」
M「へえ~。枝をちょっとだけパキッと折る、みたいな感じですか?」
C「昔80年代のツッパリがね、怪我させない程度に……、ほら(金八先生の時の)三原じゅん子が『顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを』(※青春ドラマでの有名な台詞です~。By編集部)って言って見えないところを痛めつける、みたいな(笑)。そうやってちょっとだけ、折るか折らないかみたいな感じでやるといいんです」
M「見えないところを(笑)。そうしてあげることで、見た目も美しく、まっすぐな枝もより曲線で活けやすくなるんですね」
C「そうなんです。一箇所だけじゃなくて数カ所にわたって入れてあげると、段々(枝が)曲がってきます」
M「そうなんですね~」
C「本当に折るか折らないかのささやかな力で。顔はやばいよ、ボディボディ、って三原じゅん子の顔を思い出してもらってやると、上半分だけ裂けるように折れて下はつながってるみたいな感じでうまくできるかもしれません(笑)」
M「なんかイメージできました(笑)」
C「もしかしたら最初はパキッと折れちゃうかもしれないけど、花活けでもそうですがなんでも慣れなので。段々できるようになります!」
M「じゃあ、ちょっとずつじゅん子さんを思いながら……(笑)」
C「(笑)。あとまたちょっと別の言い方をすれば、スプーン曲げの要領」
M「あぁ! なるほど~」
C「スプーンを何回もさすっているうちに曲がってきた、みたいな」
M「とにかく優しく何回も、ですね」
C「今回は話だけ聞くとハードルが高いような気がしますけど、枝の少し柔らかいところをセレクトするっていうことと、ちょっと折りを入れるっていうことと、活ける器の方もその形を担えるようなフォローの効いている器にするということがポイントかな。もし話を聞いているとやる気なくなっちゃったな~という方は、円柱の器に普通にバッと活けてもいいかなって思います!」
桜ってこの花を待ちわびるような
春を彩る特別な存在だと思います。
それを、家でも少し飾ってみる。
ささやかですが、この上ない贅沢な気もします。
家中の桜もなかなかに風情がありますよ! ぜひ!(byM)
鎌倉と、
一番桜
今春の桜は花冷えの日も多かったせいか
愛でる期間がいつもより長かったようにも感じましたね。
鎌倉にもお気に入り桜スポットは多々ありますが
長きにわたりずっと眺め続けていると言えばやはり鶴岡八幡宮の桜でしょうか。
こちらはお花見シーズンに限らず、ふだんの散歩コースでもあり、
境内に今もある幼稚園に通っていた頃からの馴染みの風景。
鎌倉駅方面から進むと、”段葛”という参道があり、その両脇に桜が植栽されているのですが、
近年、これまでの老木を全て植え替える大工事が行われ、現在は枝ぶりも若いフレッシュ並木となっています。
それはそれでかわいくもあり良い風景なのですが、
個人的にはその参道を進んだ境内の中にある源平池にのぞく老(木)桜が、大きさや枝振りも含めて好きなのです。
現在も幼稚園の頃の原風景そのままな感も、自分的には八幡宮内ベスト桜と言えばこちらかな~?と。
でも、そうまで言っておいて、いちばん好きな桜は八重桜だったりして(おいおい!)。
お花見シーズンが落ち着いてから盛り上がる八重桜の開花が実はいちばん楽しみな自分です。
ときどき茶話、
令和決意
アトリエレッスンでは花活け後に皆さんとお茶を楽しむのですが、
その際、様々な鎌倉銘菓をお出ししています。
花合わせや季節により特に決まりはないのですが、
今月はやはり桜モノに落ち着きましたね。
先述した鶴岡八幡宮に向かう段葛沿いにあるアトリエバニラさんの桜ロールは
教室でもよくお出ししている人気スイーツ。
各教室でご用意する際に、自分の分もつい一緒に購入してしまうのですが、
それぞれの皆さんは月に1個のところ、自分はその都度なので大変危険!
この流れをどこかで断ち切らなければ!!と長いこと思っていたのですが、
新元号の切り替えに肖り、平成までで終了しようとふと思い立ちました。
守れたかどうかは来月になったら分かるのかな~?(ハハハ)。
プロフィール
CHAJIN/チャジン
フラワーアーティスト。
ORIGINAL FLOWER STYLE CHAJIN 主宰。
暮らしまわりの雑貨と季節の花を合わせ、個性的でありながらもカジュアルな花あしらい、存在感あるリースの作品が得意技。
雑誌や広告の花活け、店舗や温泉宿のディスプレイ、展示会の花活けの他、鎌倉のアトリエや、池袋コミュニティカレッジ、NHKカルチャー青山教室、NHKカルチャー横浜ランドマーク教室、二子玉川高島屋S.C教室ほか、都内各所で開催中の花教室も人気。
著書に『きょうの花活け』(誠文堂新光社刊)、『花活けのココロ』(主婦と生活社刊)、『小さな花あしらいと12ヶ月の花の話』、『季節の花でつくる12ヶ月のリース』(ともに芸文社刊)がある。
紅茶好きでプロレス好きで愛猫家。鎌倉在住。
インスタグラム instagram.com/chajin_eye
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この記事のライター
植物生活編集部
「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。