Yu Yu 2019/04/24

植物と暮らす おうち時間 第13回 TOKIIRO / 近藤義展さん

「植物と暮らすおうち時間」。
今回ご登場いただくのは、ご夫婦で多肉植物を通した表現を続ける〈TOKIIRO〉の近藤義展さんです。

〈TOKIIRO〉の活動は、植物の世界だけにとどまらず、暮らしにまつわるイベントやショップでの展示、ワークショップ、様々な分野の方とのコミュニケーションの場「コエルハコ」の企画運営など、今の空気感をすくい上げて形にするような幅広い活動をされています。

日々どのような思いで過ごし、植物と触れ合っているのか、お話を伺いました。

多肉植物から学ぶ、私たちの在り方



こちらは、お住まい兼アトリエなのでしょうか。

「そうですね。浦安にあるアトリエは妻の育った実家で、震災を期にデザインを改め、建て替えました。その際、もともと裏庭にあったアトリエを道路側に配置しました。

住まいでもあり、現在は僕たち夫婦と、妻の母、13歳のキャバリアの “ベリー” 、5歳のトイプードル “ラズ” と暮らしています。

植物を見ていただいたりイベントなどを開催したりするため、不定期ではありますが、オープン日も設けています」


〈TOKIIRO〉のお二人が、多肉植物に注目し続けているのはなぜでしょうか。

「多肉植物に惹かれたのは、生きる力強さと適応する能力が秀でているからです。
僕ら人間は何か辛いことや問題が起きると色々言ってしまいます。

その反面、多肉植物は何一つ文句も言わずに、置かれた環境を受け入れて体の形を変えてまで生きようとします。それが例え光の届かないデスクの上だったとしても。

そんな在り方から沢山の学びをもらいました」



「10億年の植物の歴史の中、気候変動や天変地異を超えて植物は存在し続けてきました。

たくさんある植物の中で多肉植物と同様に、苔にも魅力を感じています。

苔はまさしくどんな環境下も乗り越えて今につないできた不変のもの。
そして多肉植物は環境を自分の中に取り込み、適応した姿へと変化させ、今もなお進化の中にいる状態なんですよ。

これから変動の時を迎えるであろう地球環境の中で、多肉植物や苔のもつ力が必要な時が訪れると信じています。

だからこそ、世界中で近年急速に多肉植物や苔に注目が集まっているのではないでしょうか」



「僕は、多肉植物と出あっていなかったらこんな素敵で有意義な時間を積み上げてはいなかったでしょう。

植物は僕にとって先生です。知りたいことや求めているものがあるとき、植物の存在が全ての答えを与えてくれます。

植物がなくては、人に限らずほとんどの生命体が生きていけません。

文明や人、動物は全て植物が光合成するおかげで存在しています。
そのことが本能的にヒトのDNAに刻まれているからこそ、グリーンを見ると癒され、植物を近くに置きたいと思うのではないかという研究もされているんですよ。

それを理解した上で植物と暮らしていくと、ヒトの持つ100年単位の物差しでは測りきれないことばかりという事実に気がつきます。植物を通して、 "地球単位の物差し" を少しでも感じ取ってみると気持ちが楽になると思います」



〈TOKIIRO〉の活動の魅力は、植物にとどまらず、文化的・思想的に発展していく活動の幅広さと、何と言ってもお二人の人柄にあると思います。
ご夫婦で活動していくにあたり、何か心がけていることはありますでしょうか。


「〈TOKIIRO〉の中で役割が決まっています。僕の担当は0を1に創作すること。
妻は僕が創作したものを、いまの時代の流れに乗せ、多くの方々に植物の魅力を知っていただけるようにすることです。

僕はインプットしなければ作品ができないというわけではなく、どちらかというと何もいらないんです。
表現の源は記憶です。小さい頃育った海まで10歩の団地、田んぼの中の家から感じた音や匂い、ワクワクして探検した森の中の池。日本海に沈む雄大な夏の夕日。ハラハラ登った波消しテトラポット。雪が深々と夜に降った朝の白い陰影。

そんな田舎の景色や自然の空気感の記憶、東京に出てきて初めて見た新宿の高層ビル、アスファルトの隙間から生きる草、遠くに見える山々の陰など。

それら全てが源となり、今では多肉植物の姿を通して器に表現しています」



「様々な情報がすごいスピードで流れていて、情報を整理して処理していく能力が必要な時代になりました。

僕はそんな時代だからこそ、物事の根本を見ようといつも自分に問いかけています。
それは難しい問いでなく、昔からある当たり前のこと。例えば、地球と人をつないでいるものは何だろう、植物と人はどんな関係が良いのだろうか、目に見えないものの大事さについてなどですね。

妻はマネージメントやマーケティングを主に担当しています。
そのために、五感をひらき、いつも動き回っています。

具体的には、彼女の目線で感じる作家さんやアーティスト、ショップの元に直接足を運び、コミュニケーションを通して時代の流れを感じ取りながら〈TOKIIRO〉の舵取りをしています」



〈TOKIIRO〉の手がける植物は、ちゃんと生命が宿っているような、良い状態であることを感じます。
育てるにあたり、何か気をつけていることはありますでしょうか。


「僕たちが大切にしているのは、HOW TOではなく、思考や在り方についてです。

沢山の方に、植物を枯らさないための水やりの頻度をご質問としていただくことがあります。
みなさんが気にされるポイントだと思いますし、例外なく僕もはじめはそうでした。

10年ほど前のことですが、僕自身気に入って迎え入れた高額な多肉植物の苗を枯らせてしまったことがあります。

当時はやる事をリスト化して実行するべきだと考えていました。ですから、プロである農家さんの水やり頻度を参考にして、カレンダーの日にチェックを入れ、忘れずに実行していました。
これで必ずうまくいくはずでしたが、なんと植物は悲惨な状況に。

厳密にやっていたのに、なぜダメにしてしまったのか農家さんに聞いてみたところ、『置く場所、光や風の量、温度や湿度など環境が違うのに水やりだけ同じでいいわけがない。そもそも植物になぜ水が必要かもわからないまま、機械的に決められたタイミングであげても、うまくいくわけがない』というお返事でした」



「それから月日は流れ、いまでは僕が植物について教える立場になることもあります。
現在、水やりのタイミングをどうしているかというと『欲しそうだったら水やり、なんとなく感じたら水やり』なんです。

具体的でないし、不謹慎、不親切に聞こえてしまうかもしれませんが、本当に決めていなくて。
ただ、おおよそどれぐらいの頻度で水やりしているか思い返してみると、実は最初に農家さんが教えてくださったのとほぼ同じペース。
している事は当時と変わらないのに、手にした結果は正反対です。

当時は枯れてしまったのに対し、今では元気で育っているのに加え、多肉を通して沢山の方が笑顔になるお手伝いをするまでになっています」



「10年前と今で何が一体違うのかというと自分自身の思い、いわば思考や在り方が違うのです。
当時の僕は『いかに目の前の植物を枯らさないか』という小さな単位でしか物事を考えていませんでした。

現在は『多肉植物の魅力を通して世界中の人が笑顔になり、地球が元気で自然な状態であってほしい』と心から願っています。

行動が結果につながるわけではなく、何を思い考えるかがそのまま形になっていくということですね」



その他に、植物と過ごす上で気をつけていることはありますでしょうか。

「基本的に部屋の中に生きている植物を置くことはしていません。つまり、 “多肉は外” に置くことがとても大切。

建屋の中は通常、ヒトのために作られています。最近ではエネルギー消費を抑えるために気密構造で窓には結露や紫外線を防止するなどの技術が進化し、住み心地が良い空間になりました。

その一方、植物が生きる上で必要な光は残念ながら、カットされてしまっています。つまり室内で植物は生きられない。

インテリアのように捉えられがちな多肉植物ですが、決してそうではないということなんです」



「また、植物が生きている本来の環境に置いておけば、例え人がそこにいなくなっても生命の営みは絶えることはありません。
万が一、災害が起きた時、テーブルの上のサボテンを持って避難できるでしょうか。外に置いておけば、そんな心配をしなくてもいいですよね。

〈TOKIIRO〉が作家さんの器とコラボレーションすることが多いのは、外に置く際にお気に入りの器に多肉が植えてあると良い景色がうまれるだろうなという思いからなんです」



年々表現の幅が広がり、お忙しい日々を過ごされていると思います。リラックスの方法はありますか。

「2匹の愛犬と戯れること、姪っ子の “メイ” と遊ぶことが何よりの癒しですね。
また、なんといっても植物と触れ合い続けていることが良いエネルギー循環に繋がっているのだと思います」





無機質になりがちな現代だからこそ、私たちはエネルギーのあるものを感覚的に欲し、選ぶ力が育ってきているのかもしれません。〈TOKIIRO〉の活動の広がりを見ていると、いつもそんなことを思います。

もともと〈TOKIIRO〉の活動は、義展さんが妻の友美さんを喜ばせようと、多肉のリースを作り始めたのがきっかけだったとか。妻の笑顔を見ていたら作品がどんどん増え、自然と活動が始まったと。

スタートから変わらず、根っこに純粋な愛がある〈TOKIIRO〉の活動の芯を垣間見た気がしました。



うかがった人

TOKIIRO / 近藤義展、近藤友美

グリーンデザイナーユニット。グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など活動は多岐にわたる。屋号のTOKIIROは、季節の移ろいを多肉植物のなかに感じてほしいという願いをこめて「季色(ときいろ)」という言葉から。2018年より花を扱うライン「pause (パウズ)」をスタート。あらゆる業界の先人を迎えワークショップ的にコミュニケーションの場を創作する『コエルハコ』始動。

著書に『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)、『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)他がある。

http://www.tokiiro.com/
http://www.instagram.com/ateliertokiiro 
http://www.instagram.com/pause_story_
http://www.instagram.com/koeruhako


 
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この記事のライター

Yu
Yu

趣味は見ることと食べること。 アート/民藝/工芸/古いもの、食、ナチュラルケアやセラピーに興味があります。 美術大学卒業後、プロダクトの企画や暮らし周りの編集に携わってきました。

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