ウェディングストーリーズ〈vol.12〉ブーケの印象を左右する奥深きグリーンの世界/kusakanmuri
ウェディングストーリーズ vol.12
新郎新婦の思いをカタチにした“世界にたったひとつ”のウェディングブーケ。それを束ねるフローリストは、どんな思いでブーケをデザインしているのでしょうか。インスピレーションの源やこだわりを取材しました。
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東京・恵比寿駅から徒歩数分、小さな十字路の一角に「kusakanmuri」というお花屋さんがあります。
いや、「お花屋さん」という表現は、少々適切ではないかもしれません。
なぜならお店の主役は草、つまりグリーン。花はグリーンの引き立て役だというのです。
店内に置かれた草花は、緑と白の2色のみ。
たった2色の組み合わせから、洗練されたいくつもの表情を生み出すアレンジの秘訣を、代表の堀田 理佳さんとフローリストの伊藤 美穂子さんに伺いました。
「緑」と「白」、選びぬいた2色へのこだわり
植物を扱うお店が、花材を2色に限定するなんて、なんともチャレンジングな話。一体どうしてそんなお店を作ろうと思ったのか、決断の背景にはある特別な思いがありました。
「東日本大震災が起きた2011年に、kusakanmuriはオープンしました。お客様が求めているのは“癒し”であると感じ、その声に応えうるのは、赤でもオレンジでもなく、グリーンだと思いました」と、堀田さんは創業当時を振り返ります。
ショップのコンセプトは「都会の野原」。癒しの象徴であるグリーンに寄り添う色として、ふさわしいと思えたのは白一色のみ。
白い花はときに可憐に、ときに慎ましく、手に取る人に安らぎをもたらすのです。
2色から広がる無限の可能性
ウェディングの世界では、王道のコンビネーションとも言うべき「緑」と「白」。とはいえ、ベタなスタイルなどと侮ってはいけません。
kusakanmuriの手にかかれば、ロマンチックなテイストからクールなテイストまで、表現の幅は無限大です。実際の例をご紹介しましょう!
まずはこちら、kusakanmuriを代表するグリーンが主役のブーケ。
まるで花嫁自らが野原に出かけ、気の赴くままに摘み取って束ねたかのよう!
霞のように美しいスモークグラスから、シャープな葉先が飛び出して、瑞々しくハンサムな印象に仕上がっています。
甘いテイストがお好みの方には、バラとグリーンのミックスがおすすめ。
白と緑のバランスは、花嫁さんの希望にあわせて細かく調整します。
例えば、こちらのブーケで使用した「グリーンアイス(ミニバラ)」は、蕾はベビーピンク、花は時間の経過とともに真っ白から淡い緑へと変化するのだそう。反対に、ボール状のグリーンの花「ビバーナム・スノーボール」は、咲き始めはライムグリーン、咲き進むと白に変化します。
刻一刻と移り変わる草花の表情を読み取り、気候に応じて咲き具合を調整するのも、フローリストである伊藤さんの大切な役割です。
先に挙げたブーケが初夏のイメージだとすれば、こちらは雪がちらつく冬のイメージ。
デザインの要は、「ダスティーミラー」という名のシルバーリーフです。
まるで雪が積もっているかのように見える白銀色の葉と茎。同じバラを使っても、あわせる葉材が違えば、全く異なるテイストに生まれ変わるのですね。
中には、個性あふれるこんな変わったお花も!
星のような形が特徴的な「フランネルフラワー」。名前の通り、まるでフランネルの生地のように軽くやわらかな花は、先端がほんのりグリーンに染まっています。スモーキーで淡く儚い白と緑。ふたつの色はブーケの中で溶け合ってひとつになり、柔らかい表情を生み出しています。
葉の中にも、個性派を発見!
例えば写真右上の「グレビレアゴールド」は、葉の表は濃いグリーン、裏はゴールドと異なる2つの顔を持っています。
中央の紫は「リュウカテンドロン」というネイティブフラワー。紫の部分は苞葉(ほうよう)が色づいたもので、小さな花がその中にあります。
「ひとくちに白と言っても色々な白があります。グリーンも同様で、淡い緑に濃い緑、質感もシルエットもそれぞれに個性があります。緑と白以外にも、ダークカラーなどの邪魔しない色を、バランスを見て取り入れています」と、伊藤さん。
徹底した色彩へのこだわりと、だからこそ生まれる豊かな表現力。kusakanmuriは、奥深きグリーンの世界へと、みなさんをきっと案内してくれるはずです。
癒しのひとときを、大切なゲストへ
ブーケの中に心地よい緑と白のバランスを見つけたら、そのバランスを空間全体にも広げてみてください。kusakanmuriは、テーブル装花をはじめ様々なウェディングの相談に、親身になって乗ってくれます。個人的にステキだなと思ったのが、ゲストテーブルを飾るWASARAアレンジメント。WASARAという和紙の花器に入ったミニアレンジを、ゲストひとりひとりに用意して、引き出物として持ち帰ってもらうというアイディアです。花瓶を持っていない男性ゲストがいても、これなら安心ですね。
引き出物や贈り物としては、こちらの「LE BÉNÉFIQUE(ル・ベネフィック)」もおすすめ。野生の植物を1本ずつ丁寧に摘み取って、そのままの形で乾燥させたフランスのオーガニックハーブティーです。
写真のフレーバーは、ラベンダーフラワー。レモンをひと垂らしすると、柔らかなピンク色に変化するのだとか!
結婚式から帰った後、ゲストが植物に囲まれた楽しいひとときを過ごせるように。
言葉では表しきれない感謝の気持ちを、植物に託してみてはいかがですか?
■ショップ情報
・代表:堀田 理佳 (ほった りか/写真右)、フローリスト:伊藤 美穂子(いとう みほこ/写真左)
・店舗名:kusakanmuri(くさかんむり)
・URL:http://www.kusakanmuri.com/
・Instagram:https://www.instagram.com/kusakanmuri_com/
・住所:東京都渋谷区恵比寿西1-16-4
・営業日時:12時〜19時(土日祝は18:00まで)、火曜定休
・ブーケの価格:25,000~
・対応地域:都内近郊(応相談)
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この記事のライター
水鳥るみ
都内在住のフリーランスライター。 現在は、ウェディング関係のお仕事をメインに、年間30組以上の新婚カップルをインタビューし、挙式当日のレポを執筆。 ウェディングシーンに欠かせないフラワーアレンジメントについて、そのトレンドやショップ情報を詳しくご紹介します。