植物生活編集部 植物生活編集部 2019/05/27

ドイツフロリストマイスターに学ぶ「花の造形」レッスン 03 シンメトリーとアシンメトリー

フロリストマイスターが教える 花の造形理論 第3回

花のプロフェッショナル=フロリストの仕事は、商品や作品の「造形材料」である植物をいかに魅力的に見せ、植物が持つ生命力やその表情を感じてもらえるようにするかにあります。

造形する側であるフロリストは、自分が扱う造形材料について熟知しているべきです。
それでも私たちと同じ、いえ、それ以前から存在する植物を知ることは、短期間でできるものではありません。

毎日の生活の中で、また仕事の最中にふと目をやった自然の風景から……。
私たちが生きている時間のすべてを使い、少しずつ知識を増やしていくものです。

フロリストは植物をどのように見て、何を感じ取るべきなのか。
お客さまの要望や自分のテーマにあった造形をするために、どのような知識が必要なのか。

まだ歴史の浅い花の造形の理論を、ドイツフロリストマイスターとして紹介する連載です。


レッスン 03

自然の中で見られるシンメトリーとアシンメトリー


植物の花、葉、茎、生長の姿には、多くのバリエーションがあります。
健康に育った花や葉のほとんどはシンメトリー(左右対称)の形を持ち、茎や生長の姿、木なら樹形も一般的なイメージではシンメトリーです。
しかし、虫に食べられたり、強い雨風にさらされたり、日当たりが悪かったり、人や獣に踏まれたりといった外的な障害により、シンメトリーではなくアシンメトリー(左右非対称)に見えることも多くあります。

植物がさまざまに群生する自然の中では、季節、昼夜、天気によって、シンメトリー、アシンメトリーの構成が見られます。
例えば、植物は太陽を求めて伸びていく性質があるため、同じ木でも左右の枝は異なった生長の動きをします。
自然を観察すると、それが私たちの気持ちに触れるような景色を見せてくれることに気づくでしょう。
私たちはフロリストとして、植物の世界が見せるこれらの構成を、商品や作品に生かしたいものです。
そのためには、シンメトリーとアシンメトリーが持つイメージの要点を明確に理解し、どちらが自分の制作するものに適しているか判断できることが必要です。

シンメトリーが持つ一般的なイメージは、明確、シンプル、厳格、均衡、静寂、権威。
アシンメトリーは、自由、楽しい、生き生きとした、緊張感、面白み、などです。


シンメトリーの形の梅の花。


風や嵐、地形の変化などの影響にも耐え、通常に逆らってアシンメトリーに伸びていく樹木。

 

シンメトリーの構成

フォーカルポイントとなる重心が空間の中心部にあり、その左右にそのほかのモチーフが対照に配置されることが基本です。
最初に目に入るモチーフ、つまり作品全体を決める印象が中心部分にあるので、視覚的な展開がなく、単調で硬いイメージがあります。
しかし、モチーフの象徴性が強く印象づけられ、厳格で誠実な神々しいイメージを与えることもできます。
中心部分を強調することは外せませんが、ほかのモチーフを左右対称にせずに少しランダムに配置したり、使用する材料の色や形に変化をつければ、構成にリズムを出すこともできます。
 

作例1

春の生長の勢いを見せる1 アシンメトリーのアレンジメント

春の芽吹きの勢いを、チューリップで見せる。1点に向かって伸びる植物の表現と、重心のある中心部の1点を見せるアシンメトリーは構成のテーマとして一致している。できるだけ中心部分に気持ちが向かうように、材料を挿すことがポイント。ハランの新芽と、枯れた花が残った新芽つきのアジサイの茎で、冬から春へと移行する季節を印象づける。

{ Flower&Green }
チューリップ、アジサイ、ハラン、カレックス、コケ、枯れ葉


制作のポイント

器は、春を感じさせる明るい色みのものを選択。フローラルフォームをコケと枯れ葉で覆い、重心となるチューリップを中央に配置し、横にハランを挿す。高さはアジサイで決める。なるべく中心がフォーカスされるようにグルーピングはせず、間隔をとりながら全体にまんべんなく材料を配置していく。
 


アシンメトリーの構成

フォーカルポイントとなる重心が、空間の中心部から外れてバランスが崩れた状態を作り、別な場所に対抗する適度なモチーフを置くことで、調和をとることが基本です。
最初に目に入るモチーフ、つまり作品の全体を決める印象が中心部分にないために、見る側はまず驚き、さらにバランスとるためにさまざまな視線で作品の隅々まで見ることになります。
ここで大切なのは、シンメトリーと明確な違いを出すために、重心ははっきりと中心からずらし、対抗するモチーフをテーマに合わせて適度なボリュームで置くことです。
最終的に構成に釣り合いがとれていれば、対抗するモチーフの大きさや有無によって、印象を大きく変えたり、驚きを与えるようにしても構いません。
メインのモチーフに従属する副えのグループは、絶対的なものではなく、必要に応じて配置します。

シンメトリーでもアシンメトリーにおいても、自分の作品にあった構成の選択が最優先です。
シンメトリーでは、開店祝いのスタンド、葬儀、リース、コンパクトなラウンドの花束、祭壇の花。
アシンメトリーでは、生け花、個性的な花束やアレンジメント、会場やショーウインドーの空間デザインなどが、用途として考えられます。
 

作例2

春の生長の勢いを見せる2 アシンメトリーの花束

花、枝、蔓、それぞれの材料の主張を正しく使い、生長の様子を表現した植生的な花束。枝は変化に富んだ枝ぶりを見せるため、高く構成している。グループとなった材料同士の間隔を一定にしないことで緊張感が出て、自然的な印象になる。

{ Flower&Green }
チューリップ、ナノハナ、ミツマタ、アオモジ、アイビー


制作のポイント

高さを決めるミツマタ、フォーカルポイントのチューリップ、クッションとなるナノハナ、枝と花をつなげる役割のアイビーを最初に持ち、花束の中心部分を構成する。
 

今回のまとめ

シンメトリーとアシンメトリーとは?
・シンメトリーはフォーカルポイントとなる重心が空間の中心部にあり、他の要素が左右対照に配置される構成。
・アシンメトリーは重心を空間の中心部から外してバランスが崩れた状態を作り、別な場所に対抗する適度なモチーフを置き、調和をとる構成。
・シンメトリーの一般的なイメージは、明確、シンプル、厳格、均衡、静寂、権威。
・アシンメトリーは、自由、楽しい、生き生きとした、緊張感、面白みなど。

写真/中島清一 月刊フローリスト

講師
橋口 学 Manabu Hashiguchi
ドイツ国家認定フロリストマイスター。1997年渡独。国立花き芸術専門学校ヴァイエンシュテファン卒業後にミュンヘンの花店に勤務し、およそ9年間のドイツ滞在を経て帰国。現在は神奈川県秦野市にて「花屋ハシグチアレンジメンツ」を主宰。 植物造形理論・実技レッスンを行っている。

http://www.h-arrangements.com


橋口さんのドイツフロリストマイスター理論がわかるリースの制作法
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