植物生活編集部 植物生活編集部 2019/05/27

ドイツフロリストマイスターに学ぶ「花の造形」レッスン04 生長点 /メカニカルフォーカルポイント

フロリストマイスターが教える 花の造形理論 第4回

花のプロフェッショナル=フロリストの仕事は、商品や作品の「造形材料」である植物をいかに魅力的に見せ、植物が持つ生命力やその表情を感じてもらえるようにするかにあります。

造形する側であるフロリストは、自分が扱う造形材料について熟知しているべきです。
それでも私たちと同じ、いえ、それ以前から存在する植物を知ることは、短期間でできるものではありません。

毎日の生活の中で、また仕事の最中にふと目をやった自然の風景から……。
私たちが生きている時間のすべてを使い、少しずつ知識を増やしていくものです。

フロリストは植物をどのように見て、何を感じ取るべきなのか。
お客さまの要望や自分のテーマにあった造形をするために、どのような知識が必要なのか。

まだ歴史の浅い花の造形の理論を、ドイツフロリストマイスターとして紹介する連載です。
 


レッスン 04
自然観察から、構造上の焦点を考える


フラワーデザインには、作品の中で視覚的に目立つ部分であるフォーカルポイント(注目点・視覚上の焦点)と、構造(メカニック)を左右する構造上の焦点、メカニカルフォーカルポイントがあります。
今回は、後者について解説します。
 

メカニカルフォーカルポイントとは

植物材料の生長の基点のことです。
自然に則した造形の場合は生長点と呼び、一つである場合と、複数の場合があります。
器を基準に、材料のすべての茎が1点から出ているように作ると「一つの生長点で構成された作品」となり、個々の茎が独立した基点から出ているように材料を挿すと「複数の生長点で構成された作品」となります。
下の図を見るとわかりやすいでしょう。


制作の際にどちらの構成を選ぶのか、造形へのヒントは自然観察からも得ることができます。
植物が土の中からどのように伸びてきているかに注目してみましょう。
その表情は、植物の種類、季節、生息場所によって異なります。
1本だけひょっこりと出てきた新芽の様子、1本だけでも強く真っ直ぐ上に伸びるもの、一つの根から2、3本の葉や茎が伸びるもの、またはもっとたくさんの葉や茎が、豊かに放射状に広がっていくものなど……。

そのような単体の植物の生長を、今度は少し離れて集団として観察してみましょう。
身近な自然を観察し、自然が見せる多くのシーンのイメージをストックする習慣をつけましょう。
そうすれば、材料をどのような構成で挿し始めたらよいかを決断する、大きなヒントになるでしょう。
 

一つの生長点から伸びるさまざまな植物のイメージ




 

複数の生長点のバリエーション


左/パラレル(平行)に並ぶイメージ
中/動きに従って自由な区間を持つ構成
右/グループごとの生長をイメージした構成
 

一つの生長点をどの位置に設定するかによっても、材料の表情は変化する


 

一つの生長点で構成

器、または器にセットされたフローラルフォームの中に一つの点を仮定して、その点、またはその周辺に向かって材料を挿す構成です。
スパイラルの花束の場合は、必ず一つの生長点から束ねることになります。
構成として一つの生長点を選択する動機は、どんな商品や作品を制作するのか、求める表現によって決まる場合と、器の形による場合があります。

一つの生長点で構成された作品は、多くの植物が一つの根から茎や蔓を伸ばすことから、植物本来の生長の様子を強く印象づけることができます。
また重心部分に密度がつくため、安定感も出ます。
 

作例1

春爛漫のイメージで 生長点構成の花束 

主役は、パステル系のピンクの滑らかな質感の花。そこにまだ自然風景の中に残る冬の色、茶色を葉物で合わせ、日本の春を象徴する色みにまとめた。ピンクから茶、黄緑、黄へと色をつなげ、花咲く春の明るさを表現。バインディングポイントを生長点とし、一つの生長点から花が放射状に広がるように組み、装飾的に仕上げている。

{ Flower&Green }
ラナンキュラス‘シャルロット’、チューリップ、パンジー、カーネーション2種、ゼラニウム‘スノーフレイク’、カレックス、ツゲ、銀葉アカシア、アイビー、ガーベラ


制作のポイント
茎の真っ直ぐなラナンキュラスを持ち、銀葉アカシア、色の濃いカーネーション、カレックス、アイビー、ゼラニウムで中心部分を作る。束ねる際は、すべての花の向きが揃うと単調になるので、1本1本に変化をつけることが重要。

 

複数の生長点で構成

器、または器にセットされたフローラルフォームや花留めの中に複数の点を仮定し、個々の材料がそれぞれに生長点を持つようなイメージで材料を配置する構成です。
自然界を少し引いた距離感で捉えたような印象があり、一つの点に縛られることがないため、自由に、大きな空間を描くことが可能です。

複数の生長点を選択する動機は、制作するものの表現の方向性や器の形のほか、花留めの種類にもよります。
それによりどの位置に複数の点を仮定し、どのような角度で材料を挿していくかが決まります。複数の生長点で構成された作品は、全体的に軽い印象となり、空間性が強く表現され、材料が持つ線も強調されます。

ある表現を目指すための、植物の構成方法にはさまざまな選択肢があります。
植生的な見せ方にするのか非植生的か、グルーピングをするのかしないのか、シンメトリーの構成を選ぶかアシンメトリーの方がよいか、生長点は一つか複数か。
これらは、植物造形の基本としての大切な知識です。
ですが、基本形を学び、それに沿って忠実に制作することが、最終目的ではありません。
それぞれの事柄の本質や意味合いを理解したうえで、個々の商品や作品の中に取り込み、使える知識にしていくことが必要です。
 

作例2

ナチュラルで情緒的な春を表現 複数生長点構成のアレンジメント 

こちらは枝を組んで花留めを作り、神秘的な春の森を演出。寒色の紫の花をメインに挿し、きりっと締まった印象のアレンジメントに仕上げた。枝の間に花を配置するため、必然的に複数生長点の構成になる。足元が見えるデザインなので、空間の効果でリズム感が生まれ、ナチュラルで情緒的な印象に。

{ Flower&Green }
スイートピー‘ワイン’、ラナンキュラス‘ピュイド’、パンジー、スカビオサ、フリージア‘ブルーシー’、マメの花、ヤシャブシ、ワイヤープランツ、ゼンマイ、ヘデラベリー、ガンソク


制作のポイント

水盤の上にヤシャブシの枝をワイヤーで留め付けながら組み、ワイヤープランツをからめて花留めを作る。枝は均等ではなく、ランダムに交差させながら組んで変化をつける。

 

今回のまとめ

生長点とは?
・材料が生長する基点となる構造上の焦点、メカニカルフォーカルポイントのこと。
・材料のすべての茎が1点から出ているように構成する一生長点構成と、それぞれの茎が独立した基点から出ているように材料を挿す、複数生長点構成がある。
・一つの焦点で構成された作品は、植物本来の生長の様子を強く印象づける。重心部分に密度がつくため安定感も出る。
・複数の生長点で構成された作品は、全体的に軽い印象となる。空間性が強く表現され、材料が持つ線も強調される。

写真/中島清一 月刊フローリスト


講師
橋口 学 Manabu Hashiguchi
ドイツ国家認定フロリストマイスター。1997年渡独。国立花き芸術専門学校ヴァイエンシュテファン卒業後にミュンヘンの花店に勤務し、およそ9年間のドイツ滞在を経て帰国。現在は神奈川県秦野市にて「花屋ハシグチアレンジメンツ」を主宰。 植物造形理論・実技レッスンを行っている。
http://www.h-arrangements.com


橋口さんのドイツフロリストマイスター理論がわかるリースの制作法
  • すてき 0
  • クリップ
  • 埋め込み

この記事をシェアするには埋め込みコードをコピーしてSNSやブログに貼り付けてください。

この記事のライター

植物生活編集部
植物生活編集部

「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。

直近の記事

関連記事