片瀬那奈さんのフラワーノート File.03「植物が生き生きと育つ場所」
種から芽が出て、茎が伸び、葉をつけ花開く。
植物の生長がそうであるように、花が人の手に届くまでの間にも
たくさんの過程を経て、その時々の育てられかた、扱われかたをされながら
花は季節の美しさを表してくれています。
花が大好きな人は、その過程すべてを見てみたくなってしまいます。
日々「美しさ」を求める人、人々に「楽しさ」をお伝えするプロが、
その花の流れを見てみたら。
どう感じてくれるのでしょうか。
そこで、この連載では、
花、植物の生産から人に届くまでの現場を、女優の片瀬那奈さんとともに巡ります。
数々のドラマやTV番組などマルチに活躍をする片瀬那奈さん。
前回は、コチョウランの産地を見に、神奈川県座間市の座間洋らんセンターに伺いました。
File.01 >> 「ラナンキュラスの生産地」青木園芸
File.02 >> 「コチョウランの生産地」座間洋らんセンター
花の美しさもさることながら、木が持つパワーもまた格別。
寒い冬を経て、やわらかな葉が芽吹き、夏には青々と茂り、秋には葉色が変化します。
四季を通じて変化する日本の樹々。
ユニークな葉や樹形で魅了する南半球の植物。
どの植物もそれぞれ魅力があります。
これまでは、花の生産地を訪れていましたが、今回片瀬さんを迎えたのは、神奈川県横浜市にあるフルヤプランツ。
案内をしてくれたのは専務の小川聡さん(下の写真で左)とスタッフの山田洋平さん(右)。
フルヤプランツの創業は1939年。
小川さんはその三代目。
圃場(ほじょう)の面積は約12,000坪。
温室と露地の広い圃場があり、庭づくりや公園や建物の設計を手がける会社や、観葉植物を扱う店に植物を卸しています。
まさにプロのための植物屋さんです。
フルヤプランツの入り口には、樹齢50年を超える大きなフェニックスヤシがそびえています。
その圧倒的な存在感は、まるでこの場所の守り神のよう。
モダンな事務所や温室の周囲には、たくさんの植物の鉢が置かれています。
まずは、事務所と同じ敷地にある温室から、案内していただきます。
温室にある植物は、基本的に鉢に入ったもの。
植物の種類は草花のようなものから、シダ類やサボテンと多種多様です。
温室に足を踏み入れてすぐに、ある植物の前で足を止めた片瀬さん。
植物には花も咲いておらず、葉が茂っているだけです。
片瀬さん(以下、片瀬):「好きです、バンクシア。よく買ってます。いつもドライフラワーにしています」
編集部:「花がないのに、よくバンクシアだというのがわかりますね」
片瀬:「葉を見てわかりました。バンクシアは、よく買って飾っているから、見慣れています」
小川さん(以下、小川):「ドライでよくありますよね。きれいにドライになりやすい植物です」
片瀬:「ちなみにバンクシアのようなオーストラリアの植物も、タネから育てているんですか」
小川:「海外から直接仕入れるケースもありますが、タネや苗を海外から持ってきて、それを委託している生産者にお願いして、ある程度の大きさになるまで育ていただき、それを引き取っています」
古木のような幹の植物を発見!
片瀬:「枯れてそうに見えるのに、すごい!」
山田さん(以下、山田):「冬枯れして、冬には落葉するので」
小川:「結構大きいブーゲンビリアです」
片瀬:「素敵ですね」
枯れたような幹に鮮やかな花が咲いています。
温室内の植物は、午前中の水やりのあとで、葉の上にはまだ水滴がきらきらと残っています。
一つひとつをじっくりと片瀬さんは見つめています。
その後、大きな木生のシダがずらりと並んだコーナーに。
片瀬:「かわいいですね。これは全部葉を切っているんですか」
山田:「冬場は全部カットしているのですが、新しい芽が、ゼンマイが伸びて来ていますね。今はもう新芽が」
片瀬:「新人感のある葉が!」
山田:「これはニュージーランドのシダですね」
片瀬:「ニュージーランドにはシダが多いです。ラグビーのオールブラックスのマークもシダですよね。行ったとき、確かにシダがたくさんありました」
小川:「これは、ディクソニア・アンダルシカという巨大木生シダになります」
片瀬:「運ぶの大変じゃないですか?これ欲しいというお客様がいたら、どういった流れになるんでしょうか」
小川:「みんなでよいっしょって、運びます(笑)」
片瀬:「どの植物も生き生きしていますね。みんな、水をもらったあとだから、嬉しそう!水はどの位の頻度であげるんですか」
小川:「そうですね。春だと大体、1日1回は水をあげます。特にニュージーランド原産の植物などは、水をとても必要として。あと、生長が早い植物は基本的に水がとても好きですね。一方、サボテンは2週に1回とかで、今は1週間に1回くらいになります」
サボテンは温室にも見事なものが並びます。
棘のあるアガベなどと一緒に、背が低めのものが一緒に置かれています。
片瀬:「これ素敵!」
片瀬さんの目線の先に、白い棘が美しいサボテン。
片瀬:「これは鉢にいくつもの株を植え込んでいるのでしょうか?」
小川:「いいえ、これは下からひと株です」
片瀬:「大きいですね、かわいい!」
小川:「棘がするどいので、気をつけてくださいね。このハクリュウはものすごく時間がかかるので、ここまでの大きさになるのに、15年以上かかっています。ちょっと育っているうちにうねってしまうのです」
片瀬:「そんなにかかるのですね。みんなバランスよく綺麗なのも素晴らしいです。サボテンは、日本の気候に合うのでしょうか」
小川:「いや、合いませんね。梅雨とかすごく嫌がります」
片瀬:「梅雨の時は、どうするべきですか?除湿などでしょうか」
小川:「そうですね、除湿が一番いいですが、あとは水を保たない土にするとかですね」
片瀬:「そういえば、自宅でサボテンを育てているのですが、横が伸びてきて、その間が萎れてきています。そのまま、伸ばしたらいいのか、切った方がいいのか迷っています」
小川:「室内で育てているのですか」
片瀬:「室内です。風をあてたり、ベランダに置いて日光浴をさせたりしています」
小川:「いいですね。管理は問題ないと思いますが、萎れているところはカットしてしまった方がよく生長すると思います」
片瀬:「水やり以外に霧吹きなどもしていますが、ケアはそれで大丈夫でしょうか」
小川:「霧吹きはあまり必要ないですね」
熱心に自宅の植物の相談をする片瀬さん。植物との生活が日常的であること伝わって来ます。
温室を出ても、ユニークな植物がたくさん!
片瀬さんが早速気になったのは、幹がグリーンと茶色が混じりあった不思議な植物。
片瀬:「なんだろう、不思議。木とサボテンが混じっている感じ」
山田:「これ、ウチワサボテンです。新しいところはよく見かける感じなのですが、それが古くなると、木のように硬くなっていくのです」
片瀬:「だいぶ守られている感じがいいですね。どの位時間がたっているんですか」
小川:「100年まではいかないけれど、かなり長い期間でここまで立っていますね」
片瀬:「こんな木質化するなんて知らなかった」
個性派の植物はほかにも見つかりました。
片瀬:「これ面白い!」
山田:「これは、南アフリカのエレギア・カペンシスです」
小川:「冬で葉の色が変わっているのもあるのですが、こんな感じにもなるのです」
片瀬:「和っぽい雰囲気で、ふわふわで狸の尾のよう。このふわふわが時間が経って長くなるですね。これもタケのように増えますか」
山田「そこまで旺盛ではないです。徐々に大きくなります」
片瀬:「エレギア・カペンシス、覚えます」
山田:「南アフリカなどの植物は、意外にコンパクトで魅力的です」
片瀬:「南アフリカの植物は面白いですよね。前に行ったことがあり、このアカシアもキリンがよく食べていた記憶があります」
片瀬さんが見つけたのはシダレのアカシア。花はミモザと呼ばれている人気の植物。
温室のある場所から、屋外の圃場に場所を移します。
徒歩5分くらいの道のりですが、取材日が青空なこともあって気持ちのいい散歩タイム。
広い圃場には、たくさんの大きな植物がいくつも植えられています。
圃場の入り口には大きなサイン。
片瀬:「日本ではなく、カリフォルニアみたいですね。何種くらいあるんでしょうか」
山田:「500種類くらいです」
真っ先に案内されたのは、ヨーロッパから届いたばかりの植物を降ろしている現場。
トラックに大きな植物が載っています。
片瀬:「これからどうするのでしょうか」
山田:「ヨーロッパから届いて、これから植えるところです」
片瀬:「こうやって到着するんですね。船便ですか」
山田:「そうです。海外から植物を輸入するときは、根を綺麗に洗って持ってきます。到着までおおよそ1カ月半くらいかかります」
片瀬:「そんなに時間が経過しても平気なんですね。葉先だけ見るとパイナップルのよう」
山田:「ユッカ・ロストラータという植物です」
片瀬:「売るときは掘り上げるんですよね。植え替えは根が傷むのじゃないかと、どきどきします」
小川:「意外に大丈夫ですよ。あまりデリケートさはないので」
圃場の奥へと、入っていきます。
片瀬:「これはなんですか」
小川:「デフィラ・ペンジュラという西洋ネズです」
片瀬:「名前覚えるの大変じゃないですか」
小川:「大変です。それが一番大変なくらいです」
山田:「学名という名前と、日本で昔から使われている和名があるので、それがなかなか難しいです」
片瀬:「外国の植物を日本で植えてみて、気候に合わないとかはあるのでしょうか」
山田:「あります」
片瀬:「シダレモミジも綺麗ですね」
小川:「シダレでもこれは真下に垂れ下がっている珍しいタイプです」
片瀬:「何、この子!」
片瀬さんがたくさんの植物のある中で、目に留まったのは幹が大きくカーブした植物。
小川:「これは、マツです。一般的なクロマツです」
片瀬:「おもしろいですね」
小川:「お寺などに植えることが多いです」
山田:「あと、ヨーロッパで見つけてきた面白い植物があるのですが」
山田さんが案内してくれたのは、幹がぼこぼことした不思議な植物。
片瀬:「これ、コルク?木の中を使うんですか」
山田:「樹皮がコルクになるんです。正式にはコルクガシです」
片瀬:「すごい。こんな皮なんですね」
山田:「樹皮は再生します。15年くらい時間がかかるようですが」
片瀬:「長いですね。柔らかくて、質感もコルクそのまま。貴重ですね。コルクはヨーロッパでは一般的なんですか」
小川:「一般的ではないですね。これは山田くんが苦労して見つけたものです」
山田:「2週間ヨーロッパの山を歩いて、やっと最終日に見つけました」
片瀬:「すごい!貴重ですね」
小川:「コルクガシはあるにはあるのですが、見た目が面白いものは少なくて」
山田: 「やっと、しっくりくるものが最後に見つかりました」
圃場にはオリーブやスモークツリー、ソケイなどたくさんの植物がいっぱい。
それぞれ葉や幹の質感や樹形もそれぞれです。
1本、1本、表情が違い、歩くだけでたくさんの発見があります。
中でも葉が茂る植物が多い中、珍しい花を咲かせる樹木もありました。
赤い花が印象的なブラシの木。
大木に個性的な花をたくさん咲かせています。
片瀬:「今が旬ですね」
小川:「そうです。ちょうどいい時期です」
片瀬:「日本じゃないみたいですね。こんなにも魅力的な植物がたくさんで、圃場は一杯にならないですか」
小川:「買い付けて植えていても、販売も同時に行っているので、回転は早いです」
片瀬:「この業界に新しく参入する人はいないのでしょうか」
小川:「あんまりいないです。土地も必要ですし、難しいと思います」
片瀬:「たしかに新しく土地を用意するのは難しそうですね」
青空の下、たくさんの植物と出会った片瀬さん。
今日はどんな思いを感じたのでしょうか。
「自然な植物園に来たような感じです。横浜とは思えない、まるでカリフォルニアの田舎に来たみたいで、本当に気持ちがよかったです。歩いているだけで心が浄化されます。さまざまな国の植物があり、それぞれみんな質感が違うのに、1本、1本バランスが良い存在感。それぞれにあった育て方をしていると伺ったので、愛情をかけて育てられていると感じました。見たことがない大きさの植物も多く、園芸店などでは小さいものは見たことがあったけれど、大木で見たことがない植物などもあったので、それも貴重でした。今は新芽や若葉の時期ですし、そのグラデーションがすごく美しくて、毎週来たいと思うくらい、素敵な場所でした」
次回のフラワーノートもお楽しみに。
スタイリスト/kozue onuma(eleven.)
ヘア&メイク/Shinichi Omoshita
撮影/岡本譲治
生産地コーディネート・文/櫻井純子(Flow)
衣装協力/
ワンピース ¥69,000 / ミュベール(ギャラリー・ミュベール)、ピアス ¥37,000、チョーカー ¥25,000 ※ストーンチャーム別売り ¥6,500、リング ¥25,500、以上全て / THE KISS × nana katase(ザ・キッス カスタマーセンター)
[ 問い合わせ先 ]
ギャラリー・ミュベール
TEL:03-6427-2162 東京都港区南青山5-12-24 シャトー東洋 南青山B1F
ザ・キッス カスタマーセンター
TEL:0120-58-3333
うかがった生産者
フルヤプランツ
神奈川県横浜市神奈川区菅田町666−4
http://www.furuya-plants.com/
基本的にはプロ向けですが、毎月第3土曜日には一般向けにもオープンしています。
訪問した人
片瀬那奈 Nana Katase
1981年11月7日生まれ。東京都出身。
instagram@nana_katase
出演情報:
『シューイチ』( NTV系・日曜7:30 - 9:55 )、『音ボケPOPS』( TOKYO MX・土曜21:30 - 22:00 )ほか、7月26日からドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合・金曜22:00~22:49)に出演。
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- すてき 0
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この記事のライター
植物生活編集部
「植物生活」とは花や植物を中心とした情報をお届けするメディアです。 「NOTHING BUT FLOWERS」をコンセプトに専門的な花や植物の育てかた、飾り方、フラワーアート情報、園芸情報、アレンジメント、おすすめ花屋さん情報などを発信します。