花店インタビュー|仙台の中心地から約10分離れた、自然を感じる店舗|ミュゲ
宮城県仙台市若林区。
工藤美希さんの店舗は中心地から車で10分程度離れた場所にあります。
公園が隣接し、敷地の裏には小川が流れ、春になると鶯が鳴く、自然と季節を感じる場所です。
元々は、築約50年の特徴的なビルにアトリエを構えていました。
フランスアンティークを扱うショップや作家の工房が入るなど、美意識の高い人々が集うビルです。
自然を感じる雰囲気が気に入ったのと、コロナになって、レッスンなども広い場所で開催したいと思い、2020年10月に移転をしました。
今回は、仙台で自然を目だけでなく、口や音でも感じることが出来る、ミュゲを運営する工藤さんにお話を聞いてきました。
店名の由来
フランス語でmuguet(ミュゲ)はスズランを意味します。
5月1日のjour de muguet(すずらんの日)、フランスでは、家族や恋人、友達へ、すずらんを贈ります。
受け取った人は幸福が訪れるという素敵な一日で、気軽にお花で感謝伝えたり、幸せを願ったりしてもらいたいという願いを込めています。
ちなみに、好きな山野草です。
柔らかく、ひっそり咲いている花が好きです。
小さな頃から、母親に里山へ遊びに連れて行ってもらった頃から、山野草を身近に感じて、好きになっていました。
唯一続いた習い事が、仕事に
20代の頃はOLをしていましたし、30代前半もカフェや雑貨店で勤務していました。
そのころは、楽器を習ったり、英会話を習ったりしていましたが、どれも続かなかったのですが、20代の頃から続けているお花のレッスンだけは、楽しくてずっと続いていました。
庭づくりが好きで、私よりもお花に詳しい母の影響があったのかもしれません。
そんな母は、今では忙しい時にはアルバイトでお店を手伝って貰ています。
母の日も、母に手伝ってもらいました(笑)
オーダー注文から、無店舗で小さくスタート
最初はオーダーを受けて制作するところから小さく始めました。
他にアルバイトをしながらです。
徐々に注文が取れるようになったころ、友達の雑貨屋に間借をさせてもらい、お店運営が始まりました。
市場でお花を仕入れることが最初の苦労
市場でお花を仕入れたこともなかったので、友達のお花屋さんに市場に連れて行ってもらうところから、仕入れが始まりました。
仙台は仏花が多く、かわいい花を仕入れる事にも苦労しました。
また、当然市場の人たちと、顔見知りの関係ではなかったので、なかなか仲に入っていけなかったです。
今でも市場では、少し緊張しています。
集客はマルシェを活用。今後は主催も
コロナ前までは、マルシェに出店してお店の存在を告知していました。
移転の告知も、マルシェを活用しました。
今の店舗は、敷地にスペースがあるため、そこを有効活用してマルシェを主催したいと思っています。
コロナで開催が思うようにはできないですが、地域の人気のパティシエとコラボした喫茶の日を月末の週末に開催しています。
また、知人の移動本屋さんも巻き込んで、お菓子と本とお花のイベントを開催したりも。
お花屋さんもそうですし、それ以外のジャンルでも無店舗で営業する人が増えてきています。
そういう人の繋がりの場にもなっていきたいと思っています。
枝物の花が季節を告げる、この空間は里山につながる
「スタイルを洋風とも和風とも決めているわけではありません。だから自分が好きだと思った花を使用しています。曲がっているものであってもいい、自然な状態のものが好きです」
と言いながら見せてくれた花束には、山の畑から採取した花が顔を覗かせていました。
珍しいものや、曲がったものなど、普通の流通に乗らない花材を使用して、里山スタイルのナチュラルブーケを作ってくれるのがミュゲの魅力です。
アトリエ内には作家仲間の作ったおしゃれな雑貨にも出会えます。
工藤さんの使う道具も、アトリエに漂う雰囲気も、気取りはないが洗練されています。
そんな工藤さんに共鳴するところを感じた人がリピーターとなって店に訪れています。
里山ブーケ
工藤さん自らが山で育てた、スイセン、バイモユリ、ユキヤナギを、季節の花と合わせて束ねました。
里山の雑木林に存在する、季節そのものを束ねることーこれこそ「ナチュラルスタイル」という言葉の意味への答えなのかもしれません。
「庭から摘んできたように」はこの場合、最適な言葉ではありません。
庭に感じる作為的な人工性を排除したとき、日本の原風景である里山に行き着きます。
ゼンマイや、マンサクなど、山の恵みをぎゅっとブーケにしたことで、雑木林のような雰囲気を醸し出しています。
使っている花:スイセン、バイモユリ、ゼンマイ、マンサク、ユキヤナギ、フリチラリア、ユーフォルビア
ラッピングはシンプルに。
スイセンの花を見せるために、透明のラッピングフィルムを使用しました。
曲がった枝や茎であっても、その姿を生かした包装を選ぶのがコツ。
大胆な花材選びとユキヤナギの楚々とした美しさ
大胆さと繊細さの混在する花材選びが魅力的です。
ポイントは色の使い方。
この楚々として、慎ましい美は繊細な美意識がなせる業です。
色を入れすぎないスタイルが好きだという工藤さん。
グリーンだけのグラデーションで花束を作ることも多いそうですが、今回は花が咲ききる前のユキヤナギを使用しました。
これが全部咲ききっていれば使っていなかったとのこと。
余った革の端切れを使用して、ブーケの持ち手を束ねるなどの一工夫も。
リボンよりも革の方がナチュラルで、引き締まります。
使っている花:クリスマスローズ、ユキヤナギ、ゲッケイジュ、ニゲラ(実)、ケール
教えてくれたフローリスト
工藤美季
ササキチエ氏に師事。20歳の時から花を習い続け、2011年の冬にアトリエをオープン、2020年に現在の場所に移転。
自然の好きな家族のもとで育ち、工藤さん自身も雑木林やどんぐりが好きだという。里山の散策を通して植物を見つめるフィールドワークを行っており、その体験は現在にまで生きているという。
目標は、畑で自分の育てた花だけを使ってオーダーを受けること。
text & photo 月刊フローリスト 撮影/竹田博之
うかがったお花屋さん
ミュゲ
宮城県仙台市若林区
lemuguet05.exblog.jp
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